いロ物ガタり

秋桜

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イロは夢を観るか。

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ギンは忘れ去って居た温かさを感じ目を覚ました。

「…此処は何処…?」

100人に聞けば、90人は”私は誰?”と続けて言ってしまうであろう台詞だが、勿論ボケではない。
本当に分からなかったのである。

暖かみを持った木の家具。
造った者の愛情が隅々まで感じられる家。
其れは何処からか小人が出てきそうで。
素敵だな、とギンは思う。
自分には与えられぬものが其処には満ちている…と。

「やーっぱり”イロモノ”だねぇ…。」

唐突な声にギンが振り向くと、其処にいたのはリンゴを持ちケープに身を包んだおばあさん…では無く、深紅の髪につり目の港町で漁でもして居るのが似合う様な女性だった。

「ふぅん。目には宿ってないか…チェッ。」
「い、いろもの…ですか?」
困惑しながらギンは問うた。
「え?あぁ、ごめん、ごめん。
   アタシは”アカモノ”さ。
   アカイ姐さんって呼んでくれ。」
ハッとした様に顔を上げ、女性ーアカイ姐さんはそう言った。
「で…僕は如何して此処に。」
「彼奴らが連れて来たんだ。   
    此奴はイロモノだって言ってさ。」
彼奴らとはあの悪魔かの様な二人のことだろうか。

「で、その…イロモノって。」
「此の世には異能力を持つ者が少なからず居る。
   其れがイロモノだ。
   アタシの場合は赤…ってワケさ。」
アカイ姐さんは髪を指し、そう言った。

「アタシらは代行者…だからね。」
自傷気味に笑うアカイ姐さんを見て、背筋が凍った。
『代行者』
人知れぬ力を持ち、お使いから殺人まで何でも代行すると云う。
悪魔…いや、其れさえも超越した”何か”。
此の界隈で知らぬ者はい無かった。

「き、君らが?真逆、こんな…」
名は知れ渡って居たが、見た者はいない。
見れたとしても生きて帰れた者はいないからだ。
だから、たとえ昨日の二人であっても、目の前に居る活発そうな女性であっても、可笑しくは無い…のだが。
ギンの頭の中がぐるぐると回る。
其れは、恐怖か、畏怖か…。
いや、それとも……。

ギンは自分の馬鹿げた考えに肩を震わせ笑う。
それから或る言葉を口にした。





此れが事の始まりーー。
怪奇ひしめく此の街では珍しくも無い物語。
変人集う代行者の巡り巡る『イロ』の話。








そして


さぁどのイロがお好みですか?
傍観者はぺろりと唇を舐めた。
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