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アイウス編
六本目『影から移る者』②
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影の中は死体処理場の中に居る様な臭いが充満し、粘性のある泥の中の様に身動きが取れない。そんな中、クラヴィスだけは縦横無尽に動き、セオドシアをダーツの様に飛び交い、痛め付けていく。
このままでは、飽きるまで遊ばれて殺される。だと言うのに、彼女の表情からは焦りは感じられない。
「馬鹿だなぁ……私が君を影の中に行くよう誘導したのさ……この子を使う為にね……」
そう言ってセオドシアはアタッシュケースを開き、血液を注ぐ。
「来いッ!! 『潜みし牙を持つ者』!!」
そう叫ぶと、ケースから青白い炎を灯された骸骨のファリスが飛び出し、クラヴィスの胸を引き裂く。
「グォアァァァァァッ!?」
堪らず退いて体勢を立て直そうとするが、この泥沼の様な影の中を、ファリスは問題なく泳ぎ、その腿に喰らい付き、血が影の中で毛糸を浮かべた様になって走る。
「朔日から今日に至るまで、君達の事をどうやったら痛みを与えられるか調べ尽くしてきた……影の中がどんなものかも知っている……まぁ、道すがらファリスを手に入れたのは、よかったよかったと言うところかな」
ファリスの牙を伝って、怨念の炎はクラヴィスの中へと侵入していく。
その痛みは、体液を全て濃硫酸に変えられた様なものであり、クラヴィスは泡を吹き出し、宙に向かって踠き始める。
「グガガガガッ!!」
「イヒッ!! 自分のテリトリーで溺れる気分はどうだ~い? ……っと、いけね……このままでは影に取り残されてしまうな……」
セオドシアは溺れるクラヴィスに先程刺した時にも使った骨を突き刺し、再び螺旋状になって影の中から抜け出した。
「グギ……ギ……」
影の外へ出ると、クラヴィスは痛みに耐えかね、肉体を手放し、中から青白い光が浮かび上がる。
「……私の勝ちだ、夜明けの世界でまた会おう」
そう言って光を吸収し、改めて周りを見渡す。
建物を茨で修復した形跡はあるが、二人の姿が見えない……どうやら、潜ってる間に何処かへ移動したらしい。
「やれやれ、面倒だな……」
文句を垂れつつ、セオドシアは二人の元へと向かおうと歩を進める。
が、二、三歩進んだ所で、彼女はピタリとその場に止まる。
「あの野郎……そういう事か……」
セオドシアは、面白くないという様な顔をし、クラヴィスの魂の抜けた肉体へと戻っていった……。
◆◆◆
一方、セオドシアが影から抜け出したのと同時刻。クラヴィスは破壊活動をピタリと止める。
「何だ……?」
「油断するなデクスター、何か様子が変だ……」
すると次の瞬間、クラヴィスは羽を羽ばたかせ、衝撃波を生み出すと、砂埃を伴ってデクスターを吹き飛ばす。
「うわぁっ!?」
「デクスター!!」
パジェットが何とか受け止め事なきを得るが、その間にクラヴィスは巻き上がった砂埃で出来た影の中に潜り、逃走を許してしまう。
「しまった!? 僕のせいで……!?」
「よせ、深追いする必要は無い……それにしても、あの様子……セオドシアの方で何かあったか?兎に角、一旦戻って……」
彼女がそう呟くと、路地裏から何者かが近付いてくるのを察知する。
敵襲かと思い身構えるが、白いローブがチラリと見えて、セオドシアである事がわかった。
「セオドシア!!よかった、無事───」
路地裏から完全にその姿を露にすると、デクスターの表情は安堵から驚愕のものへと変わる。よく見ると、セオドシアは葡萄酒を頭から被った様に出血しており、白いローブを上から下へ滾々と流れる血で染めていた。
「ッ!? セオドシア、それッ……!!」
「ごめん、ドジ踏んじゃっ……た……」
彼女はそう言って左右に二足三足蹌踉めくと、
滴る血の重みに倒れるかのようにばったりと地に倒れ、意識を手放してしまうのだった……。
このままでは、飽きるまで遊ばれて殺される。だと言うのに、彼女の表情からは焦りは感じられない。
「馬鹿だなぁ……私が君を影の中に行くよう誘導したのさ……この子を使う為にね……」
そう言ってセオドシアはアタッシュケースを開き、血液を注ぐ。
「来いッ!! 『潜みし牙を持つ者』!!」
そう叫ぶと、ケースから青白い炎を灯された骸骨のファリスが飛び出し、クラヴィスの胸を引き裂く。
「グォアァァァァァッ!?」
堪らず退いて体勢を立て直そうとするが、この泥沼の様な影の中を、ファリスは問題なく泳ぎ、その腿に喰らい付き、血が影の中で毛糸を浮かべた様になって走る。
「朔日から今日に至るまで、君達の事をどうやったら痛みを与えられるか調べ尽くしてきた……影の中がどんなものかも知っている……まぁ、道すがらファリスを手に入れたのは、よかったよかったと言うところかな」
ファリスの牙を伝って、怨念の炎はクラヴィスの中へと侵入していく。
その痛みは、体液を全て濃硫酸に変えられた様なものであり、クラヴィスは泡を吹き出し、宙に向かって踠き始める。
「グガガガガッ!!」
「イヒッ!! 自分のテリトリーで溺れる気分はどうだ~い? ……っと、いけね……このままでは影に取り残されてしまうな……」
セオドシアは溺れるクラヴィスに先程刺した時にも使った骨を突き刺し、再び螺旋状になって影の中から抜け出した。
「グギ……ギ……」
影の外へ出ると、クラヴィスは痛みに耐えかね、肉体を手放し、中から青白い光が浮かび上がる。
「……私の勝ちだ、夜明けの世界でまた会おう」
そう言って光を吸収し、改めて周りを見渡す。
建物を茨で修復した形跡はあるが、二人の姿が見えない……どうやら、潜ってる間に何処かへ移動したらしい。
「やれやれ、面倒だな……」
文句を垂れつつ、セオドシアは二人の元へと向かおうと歩を進める。
が、二、三歩進んだ所で、彼女はピタリとその場に止まる。
「あの野郎……そういう事か……」
セオドシアは、面白くないという様な顔をし、クラヴィスの魂の抜けた肉体へと戻っていった……。
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一方、セオドシアが影から抜け出したのと同時刻。クラヴィスは破壊活動をピタリと止める。
「何だ……?」
「油断するなデクスター、何か様子が変だ……」
すると次の瞬間、クラヴィスは羽を羽ばたかせ、衝撃波を生み出すと、砂埃を伴ってデクスターを吹き飛ばす。
「うわぁっ!?」
「デクスター!!」
パジェットが何とか受け止め事なきを得るが、その間にクラヴィスは巻き上がった砂埃で出来た影の中に潜り、逃走を許してしまう。
「しまった!? 僕のせいで……!?」
「よせ、深追いする必要は無い……それにしても、あの様子……セオドシアの方で何かあったか?兎に角、一旦戻って……」
彼女がそう呟くと、路地裏から何者かが近付いてくるのを察知する。
敵襲かと思い身構えるが、白いローブがチラリと見えて、セオドシアである事がわかった。
「セオドシア!!よかった、無事───」
路地裏から完全にその姿を露にすると、デクスターの表情は安堵から驚愕のものへと変わる。よく見ると、セオドシアは葡萄酒を頭から被った様に出血しており、白いローブを上から下へ滾々と流れる血で染めていた。
「ッ!? セオドシア、それッ……!!」
「ごめん、ドジ踏んじゃっ……た……」
彼女はそう言って左右に二足三足蹌踉めくと、
滴る血の重みに倒れるかのようにばったりと地に倒れ、意識を手放してしまうのだった……。
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