ゲイなのに異世界に召喚されちまったんだけど、ぶっちゃけナニすりゃいいんだよ♂

うなぎ

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2章

なぁ、ブル。お願いがあるんだけど。

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「剣術学校入学を祝って、乾杯!」
「「「「乾杯!!!!」」」」
音頭をとるブルの口上が終わるや否や、俺はぐびぐびとアルコールの入ったコップをあおった。
日本にいた頃はほとんど酒など飲まなかったのだが、ここに来てからというものなんだか連日酒を飲んでいる気がする。
一応、二日前は俺の来訪記念、今日はゴートの入学祝いということで何でもない日に飲んでいるわけではない。
わけではないのだが……レベル上げをして汗をかいた後のこの一杯は、格別過ぎてのん兵衛になりそうだった。
とは言え、ゆっくり飲んでばかりもいられない。
今日のパーティーの主役はゴートなのだ。
ゴートが楽しめるように配慮するのが大人というものだろう。
「リキヤさん、飲んでるかい?」
ゴートの元へ向かおうとした丁度その時、ブッチャさんとその連れが酒のお代わりを持って来てくれた。
「これだ、こういうことをしなければならないのだ……」などと思いつつも、「後もう1杯ぐらいなら……いいかなぁ」と俺は誘惑に負け、差し出されたお酒のお代わりを受け取ってしまった。
「飲んでます、飲んでます。やっぱり、仕事が終わった後の一杯は格別ですね。」
おっさん丸出しの発言ではあったが、ブッチャさんは嬉しそうに目を輝かせた。
「わかる。わかるよ、その気持ち。ここ最近は残業続きで全然飲めてなかったから、今日はお互いアルコールで日々のストレスを発散しよう!」
再度陽気に乾杯をしようとするブッチャさんの肩を、パーティーの招待客の一人がポンポンと叩いた。
見たことのない顔ぶれだったが、急に現れた二人の男はどうやら会話の機会を伺っていたらしい。
「おい、ブッチャ。盛り上がってるところわりぃけど。俺達のことを紹介してくれ。」
「はぁ……すみません、ブッチャさん。乾杯の邪魔をしてしまって。アックス、マナーがなってないぞ。」
「別にいいじゃねえか。俺達のことを紹介した後にまた乾杯すりゃ。」
「そういう問題では……。」
「あの、ブッチャさん。この方々は?」
「えっと、こちらは商人のケティングさん。うちで買い取った素材をよその町で販売してくれる行商人さんです。」
「ケティングと申します。お会いできて光栄です。」
「力也です。初めまして。」
ケティングという商人はふくよかで穏やかそうだった。
身なりも立派で、とても庭先で飲み会をするような身分には見えない。
一方のアックスは良くいえばワイルドな、悪くいえばほとんど裸のような格好をしていた。
いわゆるハーネスではあるのだが、胸もとや股間以外の防御が心許ない。
正直目のやり場に困るなと俺は思った。
「このガサツなのはアックス。私が雇っている傭兵です。」
「……聞いたぜ。オマエ、ブルとやったんだってな?」
「ブフー!?」
何の話があって俺に接触してきたのか疑問だったが、予想の斜め上をいく話題に俺は思わず酒を吹き出してしまった。
「ゴホッゴホッ。一体誰に聞いたんですか。」
「貴方が勇者であることを門兵の方々から伺いまして、それで……その……勇者様なら必ず従者とお勤めをされているはずだと推測した次第です。」
こういった話に慣れていないのか、ケティングは顔を真っ赤にしながら俺に経緯を説明してくれた。
そんな雇い主を見て、アックスは呆れた表情を浮かべる。
何となくだが、雇用主と傭兵という関係にしては、この二人の距離感は少し近すぎるような気もした。
「たくっ、何恥ずかしがってんだよ。俺達だって昔はいじり合ったりしてたじゃねえか。」
「あれはおまえが……いや、その話は辞めましょう。それより本題を。」
何かいま聞き捨てならない発言を聞いたようなきもするが、出会ったばかりの人間に「その話詳しく!」とは聞き返せなかった。
「ん?ああ、そうだった。そうだった。で、だ。野郎同士でやってもよ、限界突破はできんのかよ?」
「一応は……。」
ケティングやアックスと話をしながら、俺はブルの姿を目で追った。
解体屋の自宅の庭には20人近い客が集まっていたが、俺はその姿をすぐに見つけ出すことができた。
ブルは今、ゴートやその友達のご両親と楽しそうに話をしていた。
その光景は、思わず見惚れてしまうほど完璧で、まるで1枚の絵画のようだった。
俺はいま、壁に飾ってあるそれに気づき、足を止めて、その絵画を眺めている。
いつか歩き出さなければならないその時まで、俺はじっとそれを眺めている。
ああ、この感覚は久しぶりだ。
俺は今、疎外感を感じていた。
子供がいる家庭の集まりに自分がいることに、とてつもない違和感を覚えたのだ。
「それなら、俺たちともやろうぜ。俺もコイツも強くなりたいんだ!」
「えっ?」
ぼんやりしていた俺は、アックスの言葉で一気に現実世界へと引き戻された。
(今こいつは何て言ったんだ?やろうぜって、何をやるんだ?)
困惑した俺が答えを返せずにいると、アックスは再び同じ言葉を繰り返した。
「……何だ?もう酔っちまったのか?ちょっくらパーティーを抜け出して、俺らだけで楽しもうぜ。」
「も、申し訳ありません。リキヤさん。こいつは昔から頭が悪いもので……気を悪くしないでいただけますと幸いです。」
「頭が悪いってなんだよ。ただナンパしてるだけだろ。」
「いきなり3pを誘う奴があるか!物事には順序ってもんがあるだろ。」
ケティングにポカっと頭を殴られたアックスは、頭を押さえながらも不平をこぼす。
それでもやり返さないのは、本当に仲がいいからなのだろう。
「先ほどブッチャさんから紹介があったように、私はこの国で行商人をしております。ぬし討伐に行かれる勇者様のお役に立ちたいのですが、今日のところはひとまず顔を覚えてもらえればと思います。今宵の宴はそういう趣旨の催しでは無いので、後日あらためてお話ができればと。」
領土を増やすためには、未開のぬしを倒さなければならない。
それがこの国の王から告げられた、この世界の仕組みだった。
ケティングのように商いをするものの視点でこの世界を俯瞰《ふかん》すると、勇者との交流は様々なメリットがあるのだろう。
例えば高レベルの魔物を討伐した時に得られた素材の売買を委託されたり。
ぬしを討伐した後の土地の開拓に関する利権を得られたり。
戦闘に必要な消耗品の取引で金を稼いだり。
ぱっと思いつくだけでもこれだけの利点があった。
しかし、この話と限界突破したいという話が俺の中でいまいち結びつかなかった。
商人専用のスキルがあるのか、あるいは何か別の意図があるのか。
一方のアックスは発言通り、本当に強くなりたいのだろう。
強くなれば護衛できる場所も増え、稼ぎも増えるからだ。
「ご挨拶ありがとうございます。ケティングさんにアックスさん。……協力の申し出は大変ありがたいのですが、限界突破ができるかどうかは互いの親密度に影響されるようなので、心が通わぬうちに寝床を共にしても意味が無いかと。」
「なるほど、限界突破のスキルとはそのようなものでしたか。ということはやはり、貴方に惚れてもらえるように努力しなければならないということですね。」
ケティングの言葉に対して俺は曖昧に返事を返すことしかできなかった。
いくら努力をしても縁を結べないことがあることを、俺は身を持って知っていたからだ。
気まずい感じになる前に、ゴートに挨拶をしたいからと俺は席を外させてもらった。
去り際に振られたなと、アックスが陽気に笑う声が聞こえた。
その発言に重くなった心が軽くなる。
ゲイである俺には関係無い話だと思っていたが、まさか限界突破したさに口説いてくる人間が出てくるとは思わなかった。
俺でさえこんな状況に陥っているのだ。
女性である野原陽菜がどう立ち回るかはわからないが、男性である勇弥胎芽は今頃ハーレムになっていそうだなぁと俺は思った。
一夫多妻が認められていない日本においてはひんしゅくを買いそうな話だが、魔物ひしめくこの世界においてを作ることはそう悪いことでは無いように思えた。
理由はわからないがデスに狙われているという事情も考慮すると、生存戦略として仲間を増やすのは悪くない判断だろう。
しかし、ブルとの関係性を確立できていない状況で闇雲に相手を増やすのは嫌だった。
そんなことを考えながらゴートに近づいて行くと、ふと、視界の右上にあるマップに赤いアイコンが近づくのが見えた。
それはどんどんどんどん数を増やしていき、南門に向かって殺到しようとしていた。
「ブル!」
俺の叫び声は門の入り口から聞こえた爆発音にかき消された。
「敵襲、敵襲!」
――宴の終わりは突然だった。
カンカンカンカンと響く鐘の音と共に、兵士たちが避難誘導のための指示を出しているのが聞こえた。
青ざめた顔をしたブッチャさんが家の中に入って行き、中から年老いた老人を背負って出て来た。
どうやら彼がジビエさんのお父さんのようだ。
平和ボケを全く感じさせない機敏な動きを見せたのは、何もブッチャさんだけではなかった。
家族総出でパーティにやって来た者達はひとまとまりにまとまり、そうでないものは急ぎ自分の家へと帰っていく。
それはブルも例外ではなく、自分の家族である息子のもとに駆け寄っていた。
「ゴート、剣は持ってるか?」
ブルがゴートと同じ目線になるようにしゃがみ、息子の頭に手を置いた。
ゴートは腰から下げた入学証明を父親に見せる。
「うん、ちゃんとあるよ。」
「よし。お前はブッチャ達と一緒に北に逃げろ。そして、そのまま剣術学校へ向かうんだ。」
「とーちゃんは?」
「ひとまず力也と様子を見てくる。その後は……状況次第だな。」
「……わかった。落ち着いたら手紙書くから、とーちゃんもおっちゃんも気をつけてね。」
「ああ。はげめよ、ゴート。」
ゴートがブッチャ達と一緒に避難するのを確認した俺たちは、ひとまず作業場の屋根に登って様子を見ることにした。
ステータスが高いせいか、はたまた足の筋力が凄まじいのか、ブルは<跳躍>するだけで一息に屋根の上に登ってしまった。
異世界に来たばかりの俺は流石にそんな芸当はできないので、<天狗の御業>を取得した時に覚えた<登攀とうはん>という名の体術スキルを使ってみることにした。
(ブルと同じ場所に行きたい。)
そう願うと、未来の自分が壁に向かって走る映像のようなものが視界に映った。
それはまるで、どこでどう体を動かせばいいのか俺に教えようとしているかのようだった。
俺はその動きを実際に辿ることで、猿のように柱や壁をよじ登り、無事ブルのもとへと合流することができた。
「お前ら、身軽だな。」
一部始終を見ていたアックスが、感嘆の声を上げる。
彼はケティングを警護する為か屋根の上に登っては来なかった。
「お二人は逃げないのですか?」
ブルに周囲の警戒を任せた俺は、眼下にいるケティングに聞こえるよう声を張り上げた。
「逃げたいのは山々なのですが……、勇者様のお役に立ちたいと言った手前、逃げられませんよ。」
普通ならありがたい話なんだろうが、ゲイルの一件があったので俺は信頼して良いか迷ってしまった。
乱戦中に背後からブスり、なんてことがあっても困るので、俺はチラッチラッとブルに視線で合図を送った。
俺の持つデブロフンティスの目は熟練度がまだ10なので、レベル10以下の相手のことしかわからなかったのだ。
「まっ、いいんじゃねえか。お前の盾が一枚増えたってことでよ。ひとまず臨時のパーティーを組む。やり方を教えてやりたいとこだが、今はそんな悠長なことをしてる暇はねえからな。通知がきたら同意してくれ。」
ブルが空中で何度か指を動かし、こちらに向かって何かをスライドさせる。
すると、俺の視界にダイアログウィンドウのようなものが表示された。

ブルが貴方をパーティーに招待しました。
参加しますか?

「はい」「 いいえ」

「はい」と書かれたボタンを押すと、俺の視界の左側に4人分のレベルや体力、それから魔力が表示された。
ゲイルを倒した時にレベルが上がったのか、ブルのレベルは31になっていた。
勇者の限界突破は同性同士でも機能しているようだが、探索者になった今どうなるかは未知数だった。
次にレベルが高いのはアックスで24、商人のケティングですら21はあった。
(あれ?)
アックスは限界突破狙いで勇者に接触してきたように見えたのに、レベルは30に到達していないようだった。
大抵の人間はレベル30に達していると思っていた俺は、そのことに少し驚いた。
「……ん?この勇者、レベル上がるの早くね?一昨日召喚されたばかりなんだよな?」
「そのはずですが……、もしかすると特別なスキルの力で上がりやすくなっているのかもしれません。」
(そんなスキルないけどなぁ。)
俺が首を傾げていると、ブルはこの場所から百メートルほど先にある門の様子を伺いながら解説をしてくれた。
「パーティを組んだ時にレベル差があると、敵を倒した時に得られる経験値が貢献度によって割り振られちまうんだ。だから俺はパーティを組まずに、お前ひとりで獲物を討伐させていただろ?」
ゲイルを倒した時に取得した経験値が少なかったことを思い出した俺は、ブルの言わんとしていることがすんなり頭に入った。
同時に彼らのレベルが低い理由も色々と察しがつく。
恐らく魔物を討伐する時に彼らはパーティを組んで討伐していたのだろう。
俺のように金貨1枚で魔法書を購入していれば格上を一人で倒せるのだろうが、そんなことは誰でもできるわけではない。
もしくはそもそも魔物を討伐する機会が少ないか。
城の兵士がレベル20なのは警備があるため魔物を狩りにいけないからだろうと俺は考えていた。
「随分とスパルタな教育をされているんですね……勇者様が死んだらどうするおつもりですか。」
ケティングはブルの行動に対して随分とご立腹のようだったが、格上と戦うことの大切さを知っている身としてはブルのやり方にケチをつけるつもりは無かった。
何も反論してこないブルに業を煮やしたのか、ケティングが更にブルに詰め寄ろうとする。
二人の口論は、「どごおおおぉぉん」と何かがぶつかり合う爆音によってかき消された。
その音とともにギムレーの町の南門が煌めき、幾何学模様のかかれた障壁が露わになる。

『蟻塚の軍王ダイクアイトが、パクトーロス王国南方第一障壁に宣戦を布告しました。』

感情のこもっていない淡々とした男の声が街中に響いた。
神か精霊か、はたまた人の声を魔法で録音しただけなのか。
結局、その声の主は姿を見せずじまいだったが、俺以外の人間にもその声は聞こえているようだった。
「へっ、心配すんなよ勇者様。軍王だか何だか知らねえが、奴は直接中に入ってこれないんだからな。」
「それは……どういう理屈で?」
「門の前が光ってるのがわかるか?」
「はい、見えてます。」
「あれが第一障壁だ。あれがある限り、レベル30以下の魔物しか街の中に入ってこれねえのよ。」
なるほど、だからこの国は領土を広げてこれたのか。
アックスの言葉で、色々と腑に落ちなかった点にようやく合点がいった。
単純にレベルの強さだけがものを言うのなら、第三関所が突破された時点でこの王は詰むはずである。
それでも持ちこたえられるのであれば、何かカラクリがなければおかしいと睨んでいたのだ。
レベル制限下での戦いあれば、限界突破をしていない門兵でも対処できるのかもしれないが……。
俺ならレベル30の魔物を大量に揃えて物量戦で押し切るだろう。
そうなった時にこの街の兵力で戦線を維持できるのかが気になってしまった。
「そんなことは第二、第三障壁を突破した時点であの野郎も気づいてんだろ。……見ろ。」
デブロフンティスの目を凝らすと、甲冑を着た人型の生き物がギムレーの南門上空に浮かんでいるのが朧げながらに見えた。
恐らくあれがダイクアイトなのだろう、障壁を破ろうと彼が拳を振るう度に、街を覆う結界がチカチカと俺の視界に映った。
しばらくすると、障壁を壊すことができないと悟ったダイクアイトは拳を降ろした。
そのまま諦めてくれないかなと思わなくもなかったが、ブルの言う通り障壁の突破の仕方を奴は理解しているようだった。
遠すぎてはっきりとは見えないが、ダイクアイトの体の中からワラワラと蟻が溢れ出し、地面に向かって落ちて行くのが見える。
召喚の仕方は想定外だったが、俺の読みは当たっているようだった。
「ブル、作戦はどうする?敵さんは物量で来るみたいだぞ。」
「そうだな……。」
「おい、何が見えるんだ。俺達にも教えろ。」
俺がブルに話しかけると、アックスが会話を被せてきた。
障壁を過信していた男は、状況がわからないことに不安を感じているようだ。
「軍王の体から蟻がいっぱい湧き出してます。恐らくあいつ自身が蟻塚、つまり蟻の巣なのでしょう。アックスさんの言う通り直接攻めてはこれないようですが、南門よりも南に蟻達が産み落とされていってます。」
「だったら俺達も南門に加勢に行った方がよくねーか?今は誰の手でも借りたい状況だろ?」
「……ブル、奴らの狙いは障壁の解除だよな?障壁を制御する装置はどこにある?」
「軍事機密だ。俺は知らん。」
「そりゃそうか。なら、アックスの言う通り南門に加勢に行くか?」
「行くっきゃねえだろうな。とりあえずゴート達が避難する時間を稼がねえと。逃げるのはそれからだ。」
「わかった。お二人もそれでかまいませんか。」
「よし、行くぞケティング。俺達の力をリキヤに見せてやろうぜ。」
「わ、わかりました。行きましょう。」
引きつった笑顔を浮かべているケティングを、アックスが背中を叩いて鼓舞した。
アックスはガサツな男だったが、ケティングに対しては気遣いができるようだ。
戦地に向かう俺は一体どんな顔をしているんだろうか。
先頭を走るブルの後を追いながら、そんなことを思った。

「ブル、来てくれたのか。」
ギムレーの街の名物である巨大な砦門とりでもんに向かうと、今朝方ブルに機密情報を教えていた兵士が俺たちを出迎えた。
どうやらゲイルがいなくなったことによって、臨時の兵士長になってしまったらしい。
碌に引き継ぎもできない状況でこの襲撃とは、この人も災難である。
「状況は?」
「軍王とやらから湧き出した蟻は今のところ門兵50名で対応できている。……が、弓矢の在庫が切れたら終わりだ。このペースで矢を放つと、朝まで持たないだろう。」
「イゴール殿。矢の材料でしたら私が商品として取り揃えています。ところで、ゴンドゥルさんが避難されたかご存じですか?」
「避難などするか。ここは儂の街じゃぞ!」
俺達の背後から聞き覚えのある声がした。
振り返ると金槌を持った老人がこちらに近づいてくる。
「なんだ、オヤジさんは逃げなかったのか。」
ブルが茶化すと、ゴンドゥルはフンと鼻を鳴らした。
「別にお前を助けに来たんじゃないわい。ワシはこやつの手伝いに来ただけじゃ……。」
「えっ、俺?」
「聞けばお主は勇者と言うではないか。勇者はこの国の宝じゃ。こんなところで死なせるわけにはいかん。」
「大層なこと言ってるが、本当はただ気に入っただけなんだろ?」
「やかましい!」
「あの、ゴンドゥルさん。ありがとうございます。」
「フン。礼は勝ってからにせい。」
「街一番の武器職人がいるなら、なんとか1日は持たせられそうですね。ゴンドゥルさん、矢の材料はこちらに。」
「確かに光明が見えてきたな。救援は既に呼んである。1日耐えられれば、なんとかなるかもしれん。」
「それじゃあ俺達は早速外壁に向かおうぜ。」
「ちょっと待て、行くならお前らだけで行け。俺らは先に寝かせてもらうわ。」
「はっ?せっかく加勢に来たってのに、もう寝ちまうのかよ。」
アックスは驚いていたが、ブルの発言は俺としてはとてもありがたかった。
そんでなくても今日はレベル上げをしたり、解体を手伝ったりと体力を消耗していた。
更にゴートの送迎会でアルコールを入れてしまったので、控え目に言っても眠気がやばかった。
「俺はともかく、こいつは朝からずっと狩りをしてて疲れてんだ。だから今のうちに休ませる。そもそも兵士達だって、総出で戦っているわけじゃないだろ。」
「ああ、ブルの言うとおりだ。物資の調達や避難誘導、王への連絡などでやむを得ず稼働してもらった者はいるが、基本的には夜番の兵だけで対応している。3チーム、8時間交代でことにあたるつもりだ。」
「つうわけで、イゴール。俺たちに部屋を貸してくれ。」
「わかった。部下に案内させよう。ケティング殿、ゴンドゥル殿はこちらに。矢の他にも作っていただきたいものがありまして、ご相談をさせてもらえればと。」
イゴールの説明を聞いて余裕があるとでも思ったのか、アックスも戦いに備えて部屋で休息をとろうとした。
しかしケティングにアナタはこっちですと言われ、ズルズルと鍜治場の方へと引きずられていってしまった。
「お部屋にご案内いたします!」
イゴールの部下だという兵士についていくと、砦門の近くにある建物の一室へと案内された。
その部屋は兵舎だとは思えないほど綺麗で、家具にいたってはブルの家にある物よりも高そうな作りをしていた。
「もっとこう、二段ベットが両サイドにあるような狭い部屋に案内されるかと思ってたんだけど……ツインルームか。ホテルみたいだな。」
「力也様は勇者様でいらっしゃいますので、上流階級の方が宿泊するのお部屋にご案内いたしました。あいにくダブルベットではありませんが、存分にお楽しみください!」
お楽しみくださいと言われましても、この非常時にエッチなことなんてできませんよ。
そう思っていた俺の口を、ブルが突然自分の口で塞いだ。
「んんっ・・・・・・!?」
唇と唇が触れ合う柔らかい感覚を楽しむ間もなく、ブルの舌先が俺の唇を押し分けて無遠慮に口内を犯してまわった。
兵士に見られているという内心の恥ずかしさとは裏腹に、体は素直にブルへと反応を返していく。
「なんだ?キスしかしてないのに、ギンだちだな。そんなに興奮したのか。」
ズボンの上から指先で股間を撫でられた俺は、ピクピクと体を震わせながら快感に身を委ねることしかできなかった。
「し、失礼しました!」
その場で立ちすくんでいた兵士が我を取り戻し、顔を真っ赤にしながら逃げるように部屋から去っていく。
部屋の鍵をかけたブルは、俺の服を脱がしてペロりと乳首を舐め始めた。
恐らくゴートを作る時にも同じように愛撫をしていたのだろう。
そのことに気づいた俺は鼻血がでそうなほど興奮してしまった。
「ああ、ああっ・・・・・・。」
小さな突起に男の舌先が触れるたび、俺は甘い吐息を漏らした。
舐められている方と逆側の突起がブルの大きな指で撫でられ始めると、俺は快感に耐えきれなくなって体をくの字に曲げた。
ためらいがちにブルの股間に手を伸ばすと、俺の喘ぎ声に萎えることなく、その芯に熱が入っていることがわかった。
俺が中のものに直接触れたがっていることに気づいたのだろう。
窮屈そうな服を脱ぎすて裸になったブルがノシノシと近づいてきた。
俺はその英雄のような肉体にかしずき、従者のように奉仕を始めた。
口いっぱいに広がる男の逸物に舌を這わせると、ブルは気持ちよさそうに唸り声をあげた。
以前と同じように男が射精できるように亀頭への刺激を続けていると、ブルは自分の逸物から俺の頭を引き離した。
「…………?」
困惑する俺を尻目に、ブルはベットの一つに仰向けになって寝転がった。
今しがた咥えていた逸物が唾液でなまめかしく光、天井に向かってそびえ立っている。
男の俺でも惚れ惚れするほど、ブルの逸物は逞しかった。
「乗ってくれ。」
ブルの発言に俺はごくりと唾を飲んだ。
先日水浴びの際に感じた快感を、思い出してしまったからだ。
ブルに近づきながら自分の中の具合を確かめると、スキルの影響かそれはトロトロにほぐれていた。
ブルの逸物を自分に当てがい、俺はゆっくりと腰を下ろしていく。
その様子をブルがじっと観察していた。
大男に見られて恥ずかしい。
そういった気持ちもあるにはあったが、それと同じくらい俺は興奮していた。
「まだ、動かないでくれ・・・・・・。」
逸物が半分ほど入った所で、俺はブルに警告を出した。
まだブルの大きさに馴染んでいないせいか内側をこじ開けられる感覚は健在で、多少の痛みがあったからだ。
それからゆっくりと時間をかけて腰をおろすと、今度は逃げ場の無い快感に悶えることになった。
「もう動いていいのか?」
ブルに尋ねられた途端。
俺は自分の下腹部から何かがこみ上げるのを感じた。
「…………い、いくっ、いくっ、いくっ。」
歯を食いしばってもガマンすることができず、俺は突かれてもいないのに一回目の射精をしてしまった。
騎乗位は川で後ろから突かれた時よりも逸物が深く突き刺さり、ブルが全く動かなくても絶頂へと導かれてしまったのだ。
「すげえな。そんなに気持ちよかったのか?」
恥ずかしさのあまり俺がこくこくと頷くと、ブルは下からズンと突き上げ始めた。
「ああっ……待って、待ってくれ……、まだ……動いちゃ……らめだ……」
腹の奥から沸き出す快感に流され、俺は頭の中が真っ白になってきた。
上反りのブルの逸物が腰の動きと共に正確に俺の前立腺を潰してくる。
快感から逃げようにも自重のせいで深く突き刺さってしまい、俺はなす術なくブルに身を委ねるしか無かった。
「……きもぢい……きもぢいよぉ……ブル……」
理性を飛ばした俺が素直に喘ぎ声をあげると、ブルがいやらしい笑みを浮かべた。
嬌声をあげる俺に追い打ちをかけるように、ブルが両の手で乳首を触り始める。
「ひぎっ……チグビ、チグビぎもぢいぃ……」
乳首をいじられると、何故だかわからないが前立腺が敏感になる。
俺の中の弱点が露骨に膨らんだので、ブルはいよいよどこを攻めれば男が気持ちよくなるのか把握してしまったようだった。
「ここをこうすると、気持ちいか?」
ブルが体勢を微妙にずらして、俺の真芯を捉えると、返事をする前に俺の逸物が嬉し涙を流した。
「いいみてえだな。力也、こっちに倒れてこい。」
仰向けに寝たブルの上に覆い被さるように、俺は上半身をブルに預けた。
そこまでしてよいかわからなかったが、しがみつくように手を首の後ろに回して自分の顔を男の耳元へ寄せた。
この体勢は男同士だと結合が解かれてしまうことが多いのだが、ブルは逸物が大きいせいでアナルから性器が飛び出ることはなかった。
「スキルのせいかわからんが、お前からめちゃくちゃいい匂いがすんな。思わず舐めたくなっちまう。」
そう言うやいなや、ブルが突然俺の耳の穴を舐めた。
ブルの息遣いや舌が這い回る音共に、ぞくぞくした感覚が湧き上がり俺の脳髄を震わせた。
「そんな趣味はないはずなんだがな。なんとなく甘いような。」
「ブ、ブル……返事が欲しいなら、ケツを掘るのを……辞めてくれ。頭が、回らない。」
体勢が変わってもブルの逸物は俺の気持ちい場所にブチュブチュとキスを続けていた。
更にはブルが動く度に、大男と俺の腹に挟まった自分の逸物がピストン運動のように上下する。
この状態が続けば俺は自分の逸物をしごくことなく本汁が出てしまいそうだった。
「すまんすまん。一応明日に備えて休息もとらんといけねえからな。今日はこの辺にしておくか。本腰入れて掘るから、気張っていけよ。」
ブルの宣言通り、相手をイカせるのではなく自分がイクための腰つきへ男の動きが変わっていった。
背中をがっちりと抱きしめられ、動けないように拘束された俺は、下から突き上げてくる快感にただひたすら耐えた。
前立腺に何度も何度もブルの亀頭が当たり、じわじわとした幸福感が体に染み渡る。
中をきつくしたほうがいきやすいことはわかっていたが、中を締めれば自分の弱点をさらすことになってしまう。
できれば一緒にイキたかったので、俺は先にいかないように必死で体の力を抜いた。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
まるでランニングをするような息が自分の口からこぼれ落ちる。
あと少しで山頂まで登りきってしまう、そんな予感がした。
「そろそろ俺もイケそうだ。力也、イッていいか?」
ようやくブルが、タイミングについて尋ねてきた。
「……俺も、イギそう。もう……ガマン……でぎない……イグッ、イグッ、イグッ。」
俺の限界を悟ったブルが、会話の途中でラストスパートをかけてくれた。
相手を孕ませようとする男の性だろうか。
奥底へと自分の種を送れるようにより深く突かれた俺は、ブルの熱い体液を感じながら自分も男の腹の上に2回目の射精をすることになった。
射精と共にパクパクと俺の内壁が痙攣するかのようにひきつった。
その度に頭の奥が痺れ、俺は少しの間、口を開けて放心してしまった。
「お、おう。おおう……。」
射精をした後に敏感になった逸物へ更に刺激が加わったせいだろう。
ブルが身震いするように腰を何度か震わせた。
その姿を可愛いと思った俺は、勇気を出してブルに頼みごとをしてみることにした。
「なぁ、ブル。お願いがあるんだけど。」
俺がブルの顔を覗き込むと、ブルは勝手にしろとばかりに目を閉じた。
俺はブルとの繋がりを自分の中に感じたまま、男の唇に自分の唇を重ねた。
「ん……。」
それ以上何もしない俺を見かねたのか、ブルの舌が俺の中に入ってきた。
何度も何度も舌をからめ、吸いあい、愛撫を続け……名残惜しそうにお互いのことを確かめ合った。
事後の余韻に浸かる甘い時間。
それは、ブルの逸物が力を失って俺からこぼれ落ちるまで続けられた。
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第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。 ================= 高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。 ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。 そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。 冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで…… 優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

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