出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ

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012:くさいよ

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 徴税官のヒックスさんが村を出て、入れ替わるように行商人が来た。俺は岩塩を2つ手に入れて、何とか6等級ポーションである栄養ドリンクの作成に手が付けられるようになった、かに思われた。

 しかし宿の部屋でメジュ草を乾燥させて、しばらくした頃。女将さんに苦情を言われてしまった。

「ジンや。薬草の匂いが宿中に充満していて他の客から苦情が来てるんだよ。なんとかしてくれないかね」

 う~ん。困った。資金繰りが厳しいから栄養ドリンクを沢山作って売ろうと思っていたのに。乾燥までにもう少し掛かるのだ。

 もう少し待ってくれれば、磨り潰せるから。そう言って5日が経った。

 そこで2度目の苦情がきた。

「臭いよ。なんとかしてくれ」

 もう我慢の限界なのだろう。言い方が怖かった。だがもうちょっとなのだ。もうちょっとで乾燥しきる。

「う~ん。あと2日。2日だけ待ってください!」

 泣きの2日。出来上がったら宿の人達に無料で1本づつ配った方が良いだろうなぁ。

「はぁ……」

 タダ働きか。しゃーない。迷惑かけたんだ。それから2日後に何とか良い感じに乾燥してくれたので、さっさと磨り潰していった。

 迷惑料として栄養ドリンクを宿の人達に謝罪しながら配って歩いたあと、それの残りを行商人に売って、わずかばかりの賃金を得る事に成功。それなりに商売になる手応えは掴めた。

「早く工房がほしいよ」

 ちなみに配った栄養ドリンクは好評だった。良い宣伝にったかもしれないと前向きに考える。

 さて、そんな思いをしている間に季節は本格的に冬へと変わっていく。雪こそたまにちらほら降る程度だが、まだまだ積もるほどではない。天気の良い日が続いてくれれば今年中には家が完成するはずだ。待ち遠しい。

 メジュ草の季節は終わり、代わりの薬草の季節になる。メジュ草と岩塩で栄養ドリンクを作れないなら他の薬草で作ればいいじゃないの精神で、宿の人に再び苦情を言われながらも栄養ドリンクを作る。

 作った側から売れるのだから笑いが止まらない。

 他にもホットドリンクと呼ばれる、寒さを緩和する飲み物を作ったりもした。

 当然のように宿の人には白い目で見られたが、冒険者たちには大変に好評だった。

 1種類作るも2種類作るも同じだと言わんばかりに次々に薬草を乾燥させ、磨り潰し、煮詰めたりする。

 宿の女将などには「いい加減にしないと叩き出すよ」なんて言わたりもした。

 そこで少しばかり宿代を多めに払って謝罪をして許してもらった。

 もうね。命懸けだ。冬の空の下。野外に放り出されたら死ぬ未来しか見えない。

 他にも冒険者向けに簡易結界石も配って歩いた。もうね採算度外視。宿の件ではご迷惑をおかけしますの精神だ。森の近くで家を立ててもらっているので、建設現場にも結界石を設置した。建設している人に何かあったら大変だからね。

 村にも結界石を提供した。

 やはりこちらも採算度外視だ。

 あっちでもこっちでも頭を下げて歩く。

 はぁ、しんど。
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