少年ボディガードと妖精姫 ~小学生が妖精と出会い成長しながら少女を守る話~

てぃえむ

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小学生編

リュウとアヤカ

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 風が少年の黒髪をかきあげていく。

 太陽の光が差し込む中庭に足を踏み入れると、緑に囲まれた綺麗に整えられた中庭は美しい庭園となっており、木々や草花が風に揺られて優しい旋律を奏でていた。
 それを見た少年は深く青い瞳を一瞬だけ大きく開いた後、不思議そうな顔をして歩いていく。



 ここは都会の少し外れにある、レンガ造りの屋敷。
 ボディガードとして派遣された彼は年に合わせた黒いスーツを身に纏い、依頼人の指定した場所へ足を運んでいるところだった。



 突然、風が心臓の鼓動のように揺れ動き始めた。未だかつて感じたことのない、不思議だが心地良い風…。


 その瞬間、目の前に一人の少女が現れた。


 彼女の金髪は風に乗って輝き、白いワンピースが風に揺れ、鮮やかな光の粒が彼女を取り囲んでいた。
 少女の髪の輪郭がぼやけ、彼は一瞬、見間違いかと首をかしげた。


 しかし目を閉じて頭を振り、再び彼女を見ると、今度は周りを小さな光が更に鮮やかに囲んでいた。そして風が再び鼓動のような音を奏でると、彼女の周りの草花が一斉に揺れ出し、色とりどりに美しく咲きだした。


 信じられないほどの光景に、彼は一瞬、息を飲んだ。


 その瞬間、風が急に止み、少女は振り返った。光を浴びて輝く淡いライトブルーの瞳が彼に向けられ、純真な笑顔が広がった。






「はじめまして、アヤカさん…羽瀬田リュウと言います。アヤカさんを守る依頼を受けて来ました」


 少年・リュウの真剣な眼差しが少女・アヤカに向けられた。
 風に揺れる黒髪…深い青い瞳に穏やかな表情を浮かべたリュウの声は、若干緊張が混ざっているようだった。


「私を、守る…?」


 アヤカは少し考え込むように空を見上げた。

 彼女の金髪と青く澄んだ瞳、整った顔立ちは人とは異なるオーラを放ち、肌はまるで光を透かしているかのように白く美しかった。人とは違う雰囲気を放つ彼女に、リュウはまるで美しい絵画を見ているような不思議な感覚に陥っていた。

 しばらく考え込んだ後、アヤカがまるで何かを思いついたかのようにぱっと顔を上げて口を開いた。


「そっか、精霊さんみたいに私を守ってくれるんだね」


 無邪気な笑顔を向けながら語る彼女の言葉に完全に意表をつかれたリュウは、一瞬呆気にとられた。


「…精霊?」

「…違うの?」


 首をかしげ、再び考え込んだアヤカはリュウに近づくと、じっとその目を見つめた。
 彼女の澄んだ瞳に至近距離で見つめられ、心の奥底が覗き込まれているような感覚に陥り、リュウはしばらくそのまま固まっていた。


「アヤカ」


 後ろから男性の声が聞こえる。


「お父さん!」


 中庭に現れた壮年の男性は、高級そうなスーツを身に包み、品格に溢れていた。背筋をまっすぐと伸ばし軽やかな足取りで近づくと、リュウとアヤカを交互に見て穏やかな表情を向けた。


「以前話しただろう。彼が新しいボディガードのリュウだよ…アヤカ、挨拶はしたのかい?」


 彼女は何かを思い出し驚きの表情をした後、リュウの姿をもう一度見た。
 深い青い瞳に短めの黒髪。アヤカと同じくらいの身長のリュウはどこから見ても普通の11歳の少年に見える。

 しばらく彼を見つめていたアヤカは、やがて笑顔を浮かべてリュウに挨拶をした。


「ごめんなさい、てっきり大人の人が来ると思っていたの」


 アヤカはふわりとした優しい笑顔を浮かべ、リュウに軽く頭を下げると手を差し出す。


「澤谷アヤカです。よろしくね、リュウ君」


 リュウは差し出された手に一瞬戸惑った後、その手を取り穏やかに微笑んだ。


「よろしくお願いします」


 再び鼓動のような音が響いた。
 周囲の風が穏やかに吹き、アヤカの髪の輪郭が淡い光を放ちぼやけていく。


「リュウ君の事、みんな気に入ったみたい」

「みんな?」


 淡いライトブルーの瞳は澄んだ光を放ち、日の光を浴びてキラキラと輝いていた。
 不思議と穏やかな気持ちになる少女・アヤカと出会い、リュウは心の奥底で何かが動き始めたような気がした。

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