同僚と恋愛なんて・・・

静羽(しずは)

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6. 君への本音

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 仕事終わりの飲み会が待ち遠しい気持ちで満ち溢れている昴と陽彩。
 最後の一仕事を終え、約束の飲み屋に足を運んだ。
 ここは二人が初めて一緒に酒を飲んだ居酒屋。
 先に着いたのは昴だった。
 外は既に夜。街灯が明かりを灯し、遠くから聞こえてくる人々の歓声が昴の胸を高揚させた。

 「陽彩。まだかな。先に何か頼んでおくか。」

 手持無沙汰でメニューをパラパラ見ていた。


『ガラっ』


 陽彩は狭い店内をキョロキョロと昴を探した。


「あっ!昴君!」


 手をブンブンと大きく振りながら近づいてくる。


『何でこんなに犬みたいなんだ・・・・可愛すぎる』


 可愛いものを見て癒されている。なんか分かった気がする。
 昴は小さく手を挙げて陽彩を呼び寄せた。


 「どうした?残業か?」


 「いやー。先方と食い違いがあってメール送ってて今終わった」


 陽彩はすかさずメニューを見始めた。


 「何か頼んだ?」


 「いや。まだ。」


 「とりあえずビールでいいよね!」


 店員が運んできた冷え冷えのビール。ジョッキには透明な泡が上に立ち、ビールの香りがふんわりと漂っていてとっても美味そうだ。
 陽彩はジョッキを手に取り、

 「乾杯する?」

 と嬉しそうだ。

 「おう」


 「はい!お疲れ様!からのカンパーイ!!!!」


 ビールジョッキがぶつかる音と、美味そうにゴクゴクと飲みっぷりのいい陽彩を見ていると仕事の疲れやストレスが一瞬で吹き飛ぶよで幸せな気分に包まれた。
 昴は胸の中に秘めた感情を抱え陽彩への告白を考えていた。心の中で葛藤が渦巻いていた。今一つ勇気を振り絞ることができずにいた。
 告白したことで友情に亀裂が入りもし陽彩が前と同ように接してくれなかった場合、二人の関係がこじれてしまうのではないかという不安が俺を押しとどめていた。
 ましてや会社の同僚・・・。同僚としても仲間としてもそのバランスを崩すことへの恐れが葛藤を生み出していた。


 「どうしたんの?難しい顔して?」


 陽彩が心配そうに覗きこんできた。


 「ん?いや。なんでもないよ。食べ物無くなってきたからなんか頼もう」


 メニューを選ばせることで話を逸らせようとした。
 運ばれてきたのはサクサクの唐揚げと香ばしい串焼き。
 香り高い唐揚げをつまみつつ串焼きにはタレが絡んで美味い。ビールによく合う。
 陽彩は唐揚げとつまみながら言葉を漏らした。

 「あのさ。この前のキャンプの時・・・変なこと話してごめんね?」


 「え。変なこと?」


 陽彩は話したことを後悔しているかのような表情を浮かべている。


 「ああ。あの話か・・・あれから・・・どんな感じ?」


 「どんな感じって!???」


 陽彩は顔を赤くした。


 「あ。え?そんな恥かしい事質問した?俺。」


 陽彩は両手で顔を覆っている。


 「だって・・・その質問って・・・俺のが・・・ちゃんと反応しているかどうかって事でしょう?滅茶苦茶恥ずかしい話じゃんか!」


 こんなピュアな反応する陽彩を見て居酒屋という客が多い場所で恥じらいもなく大笑いしてしまった。


「あははははは!!!!!ごめんごめん」


 陽彩の頭をくしゃくしゃに掻きまわした。

 昴は気持ちが勢いで溢れてしまい勢い余ってその手を頭の上にポンと置いたまま・・・つい言ってしまった。


「俺はお前で反応するよ?」


 げ。ヤバい。間違えた・・・・。
 何得意げな顔して言ってんだよ俺・・・・これは・・・引いてるよな・・・
 陽彩は何も言わない。


「おい。そこでだんまりはそうなんだ。何か言えよ。地味に傷つくだろうが・・・」


 ちょっと冗談ぽく尋ねた。
 陽彩は小さな声で呟いた。


「それ、本当?」


 俺の体に電気が走った。
 今すぐ抱きしめたいと言う感情だ。俺はこいつが好きだ。


 「実はね・・・俺・・・・お前のことが多分好きなんだ。毎日お前の事考えてるしどんどん友達以上の気持ちになってきて。だから、もし陽彩が・・・もしも・・・」


 言葉に詰まってしまう・・・


 『もしも・・・』


 その言葉の後、なんて言うつもりだ。『付き合てほしい』だなんて言えるわけがない。
 昴は後悔と焦りに襲われた。自分の言動が同僚・仲間と言う関係を壊すという事に気づき、なぜその言葉を口にし たのかを自問自答した。
 陽彩も言葉に詰まり驚きと戸惑いの表情を浮かべていた。
 微笑みを浮かべつつも昴に向かって照れくさそうに言葉を返す。

 「え、それは・・・意外だったな。本気でそんな風に思ってくれてたの?しかもたつ・・・って性的な・・意味で?」

 陽彩は言葉を選びながらもその瞬間の感情の入り混じった表情が昴に伝わった。
 急な告白を受けて戸惑いを隠せないでいた。

 「本当にごめん。こんな勢い余って言う事じゃなかったのに。俺としては最初の飲み会の時からちょっと気になってて。キャンプの時にこの気持ちが確信に変わった。って感じかな」


 そして微笑みながら話をつづけた。


 「まぁ、難かしく考えないでよ。ただ一緒にこうしてるだけで楽しいからさ。これに懲りずにたまには飲みに行ったりまたキャンプとかしようぜ?」

 陽彩はちょっとだけ考えてこう答えた。

 「嫌だよ。キャンプなんて。一緒に寝てたら襲われそうだし。俺の事性的な目で見てる奴と・・・」

 それはそうだよな。こんな気持ち悪いこと言う同僚となんてこれからも一緒にいれるはずないよな。
 分かってる。分かってたことなんだけど・・・・
 こうはっきり言われると結構心やられるものだな。
 昴は一口ビールを飲んだ。
 陽彩は茶化したような声でこう言った。


 「嘘だよ?今だってこうして頭触られてるのも嫌じゃない。むしろ心地いいくらいだ。」


 無邪気に笑う陽彩を見て少し泣きそうになった。


 「本当に?」


 「うん、本当に。でも、ちょっと驚いちゃったかも。」


 昴はホッとした笑顔を浮かたのを確認した後陽彩も微笑みながら話す。


 「でも、新しい一歩を踏み出すって楽しみだなって思ってるんだ。最初はさ。付き合うとか恋人とかそう言うのじゃなくて友達以上恋人未満・・・って事でいい・・かな?」


 照れくさそうに俺の顔を覗き込んできた。
 うん。俺の好きな人は今日も可愛い。


 「もちろんだよ。一緒に笑って、遊んで、たまには喧嘩とかするかもなぁ・・・ま、それもまた楽しいのかもしれないな」


 照れくさい笑みを浮かべながらその言葉を口にした。熱い気持ちとこれからまた一緒にいれるんだという喜びで満ち溢れていた。
 店内に流れる軽快な音楽と明かりに照らされた笑顔が飲み会の雰囲気を一層盛り上げていた。
 二人は一緒に一歩前に踏み出せたことを嬉しく思っていた。
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