二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート

猫丸

文字の大きさ
3 / 22

第3話 友達

しおりを挟む



 価値観と勇者云々は置いて遠い場所から転移したのだと伝えた。

「商人をしてましてね、転移アイテムだと気付かずに誤動作させてしまいまして……」

 勿論商人と言うのは嘘だ。
 さすがに身分が分からない相手だと警戒されるだろうと思ったから。
 その他にもいくつか質問する。
 この世界に転移アイテムがあるのかは分からなかったけど、彼女はあっさりと信じた。
 疑われるかもと思ったのは杞憂だったらしい。
 どうやらこの世界は価値観以外に魔王を倒した世界アトランタと比べて大きな違いはないようだ。

「は、話は分かりました……ムールの街まで……えっと、一緒にどうですか……?」

 期待半分怖さ半分みたいな感じで聞いてきたニーナさん。
 体格よりもかなり大きいローブを着て顔に白い仮面を装着しているのは体のラインと顔を隠すため……だと思う。
 徹底していた。

 そんなニーナさんはムールの街という場所で冒険者をしているのだそうだ。
 やっぱりこの世界にも冒険者組合ってあるんだね。
 Aランクと言ってたけどこの世界のAランクはどのくらい強いんだろうか?
 ちなみに前の世界のAランクは才能のある冒険者の限界とされていた。
 人外のSランクというのもあるけど今は割愛しよう。

 ちなみにムールの街はここから一番近い人族の都市らしい。
 別名冒険者の街とも言われていて人の出入りが盛んな街。
 一番近い都市ってだけで今の僕には行く価値があった。
 この世界の情報を知るべきだと思ったからだ。

 そして、補足。
 ここはイムの森と呼ばれている場所でスライム以外の魔物はほぼでないようだ。
 出ないことはないけど本当に稀。
 この森は主に薬草採取なんかの採取クエストをする冒険者が来るらしい。
 それも少数らしいけど。
 
「す、すみません! やっぱり嫌ですよね……? ごめんなさい……」

 僕の思考している間をどう捉えたのか必死に頭を下げてくる。
 この世界の美醜が逆転してるなら彼女は不細工なのだろう。
 それを確かめる術はないけど……
 まさか「あなたは不細工ですか?」なんて聞くわけにもいかない。
 検証は出来てもその後気まずくなるだろうし。

「いえ、少し考え事をしてたんですよ。良ければ街まで御一緒させてください」

「え……え!? い、いいんですか!?」

 跳ね上がるような勢いで彼女は視線を向けてきた。
 僕は鑑定ができない。
 先ほどの空間鑑定は置いておくとして、ステータス的な強さを正確に閲覧する様な力を僕は持っていなかった。
 ある程度身のこなしを見れば強さは分かるけどね。
 そして、彼女は相当強い。
 体の軸にブレがほとんどない。
 動きにも所々だが洗練されたものが見える……やたらと強張ってるけど。
 そういう意味では頼りになる存在だ。
 この世界に関して無知な僕からしたら、地形やこの世界の知識を持ったニーナさんという存在はありがたかった。

 チラチラと恥ずかしそうにこちらを見てくるニーナさんを見ると彼女は耳まで赤くして俯いた。
 異性に対する免疫がまるでないな。
 美少女になって男子中学生と話してるような気分だ……いや、そんな経験ないけどさ。

「それじゃあさっそくお願いできますか?」

「は、はいっ」

 









 木々の間を抜けていくと獣道のようなものが見えてくる。
 そこを進むと街道らしきものが見えてきた。
 道があるならここを辿れば人には出会えるはず……だけど、せっかくここまで来たんだし、街まで一緒してもらおう。

「ところでニーナさん」

「ッ!」

 僕が話しかけるたびにニーナさんはいちいち大げさに反応を返す。
 怯えるように肩を竦めて僕の顔色を窺う。
 照れてるのか怖がってるのかその両方か……

「なぜそんなところに?」

 僕の後方4mほど後ろをニーナさんが歩いていた。
 声は聞こえる距離だけどさすがに気になる。
 するとニーナさんは、がーん! と、ショックを受けたようで目に見えて落ち込んでしまった。
 涙声で言ってくる。

「ご、ごめんなさい……」

 そう言ってニーナさんはさらに遠くへ。
 その距離実に10m。
 気になるとかそういうレベルじゃない。
 話しにくいし、なぜ離れたのか。

「いや、遠すぎるって意味です。もっと近付いてほしいんですけど……」

 僕が耐えられないほどの悪臭を放っているなら仕方ないだろうけどそんなわけない。
 ない、よね……? 自信はあるけど念のため腕に鼻を近づけてみる。
 余談ではあるが魔王の青いような黒いような血は浄化の魔法で消しておいた。
 匂いも消してるはずなので大丈夫だと思うけど……
 
「い、いいんですか? 私……臭いですし……不細工ですし……汚いですし……」

 言いながらニーナさんは言葉尻をすぼませていく。 
 さすが美醜逆転世界。
 この容姿でここまで卑屈になれるとは。
 むしろ匂いに関しては良い匂いでしたよ、と心の中で補足をしておく。
 大丈夫だと伝えるとニーナさんは数歩近づいた。
 距離およそ9m。

「いや……できれば隣を歩いてほしいんですけど。方向は教えてもらいましたけどこの辺り詳しくないですし」

「そ、そうですね……ありがとうございます……」
 
 なぜかお礼を言った後でニーナさんはたどたどしい足取りで僕の隣へとやってきた。
 まだ距離はあるけど嫌われてはいないと思う。
 悪感情は見られないので今はこれで良しとしよう。

「あ、もしかしてあれですか?」

 低いけど城壁のようなものが見える。
 門があってそこには人が列をつくっていた。

「………」

「ニーナさん?」

「あ、そ、そうです……あれがムールの街です……」

 とても悲しそうにニーナさんが顔を伏せた。
 少しだけ歩く速さが遅くなったのはこの時間を惜しいと思ってくれているのだろうか。
 そうだと嬉しいけど、別にあの街にいるならその間はいつでも会えると思うけどな。
 
「あのっ!」

 ニーナさんが立ち止まる。
 あまりの大声に一瞬彼女の声だとは思わなかった。
 決死の一言。

「また、私と話してもらえたら……その、う、嬉しいなって……」

 その気配は必死を通り越して痛々しくすらあった。
 祈るように頭を下げてくるニーナさんの頼み。
 僕は―――
 
「友達になりたいってことですか? いいですよ、むしろこちらからもお願いします」

「と、友達……?」

 戸惑う銀色美少女ニーナさん。
 あれ、違っただろうか。
 僕は世界を救ったことはあっても豊富なコミュ力があるわけじゃない。
 そこへやってきたニーナさんのさっきの発言は渡りに船だった。
 僕はそう言う意味だと感じたけど違ったのだろうか?

「うぁあああああんっ!」

 泣かれた。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

召しませ、私の旦那さまっ!〜美醜逆転の世界でイケメン男性を召喚します〜

紗幸
恋愛
「醜い怪物」こそ、私の理想の旦那さま! 聖女ミリアは、魔王を倒す力を持つ「勇者」を召喚する大役を担う。だけど、ミリアの願いはただ一つ。日本基準の超絶イケメンを召喚し、魔王討伐の旅を通して結婚することだった。召喚されたゼインは、この国の美醜の基準では「醜悪な怪物」扱い。しかしミリアの目には、彼は完璧な最強イケメンに映っていた。ミリアは魔王討伐の旅を「イケメン旦那さまゲットのためのアピールタイム」と称し、ゼインの心を掴もうと画策する。しかし、ゼインは冷酷な仮面を崩さないまま、旅が終わる。 イケメン勇者と美少女聖女が織りなす、勘違いと愛が暴走する異世界ラブコメディ。果たして、二人の「愛の旅」は、最高の結末を迎えるのか? ※短編用に書いたのですが、少し長くなったので連載にしています ※この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...