こちら織田証券(株)清州営業所

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

文字の大きさ
19 / 48
【外伝】ねねと秀吉~暗号資産講座

【ねね秀】既存金融へのアンチテーゼ

しおりを挟む
「なにそれ?意味がわからないわ!」

「これは、ビットコインのソフトウェアに埋め込まれた当日のロンドンタイムズ紙の見出しだ。それを書き込んだ意図は、既存の金融システム崩壊への皮肉、だとされている」

「皮肉?」

「ビットコインが誕生した2009年は、リーマンブラザーズの破綻を皮切りに世界金融危機が起こっていた頃だ。開発者は、世界の惨状を肌で感じながら、銀行を筆頭とした既存の金融システムが人々に十分なサービス提供をできていないと感じたんだろうな」

「世界の格差拡大とも関連するわけね?」

「そう。21世紀の資本でピケティ氏が語っていたように、世界では格差が広がっている。
開発者は、その一因は銀行だ、と思っていたみたいなんだ。銀行は武器商人や資金洗浄を行う者や世界的な麻薬カルテルや多国籍企業にサービスは提供する一方で、移民、適切な証明書類を保有しない人といった貧しい人々、不利な人々にはサービスを提供しない、そう認識していたみたいだな」

「でも銀行って、今の資本主義経済の根幹となるビジネスよね?人々は自らの富を銀行に預けているじゃない?」

「いや、銀行に預けることさえできない人も多い。世界銀行よれば、銀行口座を持てない成人の数はいまだ、世界全体で見ればおよそ17億人に上っているそうだ」

「本当に?!じゃあ、`口座を持たない`人たちはどこにお金を残しているの?」

「それはわからない。ただ、銀行が提供するサービスに、最貧困の人々は含まれない、っていうことだ。銀行口座は保有する人を金融システムと結びつけ、日常生活における煩雑さを減らし、資産を築くことを可能にする。だが、その段階にさえ到達していない人には、門徒を開かない」

「銀行口座があることって、あたりまえのことだと思っていた…」

「あたりまえのことは、あたりまえじゃない。そう考えるところから世界を見直すことにつながるんじゃないかな。ビットコインの開発者は、世界の現状をみて、銀行を主体とした現在の資本主義が採用している金融システムでは、世界は良くならないと考えたんだろう」

「だからビットコインを開発し、それを世に解き放った…」
ねねは前のめりに返答する。彼女も何かに気付いてきたようだ。

「そう。ビットコインの誕生はこれまでの世界にブロックチェーンという新たな技術をもたらした。始まりはひとつの論文」

「その論文が、世界を変えた?」

「そうさ!そして、自らの意志を`財政担当大臣 二度目の銀行救済策目前`という文章に込めて、ビットコインの初めのブロックに埋め込んだ。それは、`ジェネシスブロック`と呼ばれているんだ!」

「ジェネシス…話が壮大すぎてついていけない」
ねねはごくりと唾を飲み込んだ。



「ビットコインのシステムについては、さっきの説明でなんとなくわかったわ。それで、そのシステムの開発者、論文の発表者は誰なの?」
ねねの質問に対して、秀吉は少し言葉を失った。誰か、と聞かれても、明確な答えがなかったのだ。

「一応、サトシ・ナカモト…だ」

「え、一応ってどういうこと?」

「サトシ・ナカモトは、匿名の人物なんだ…本名はわからない」

「なるほど、仮の名前、ってことね。
けど、論文って、大学教授とかが書くものよね?どうして、サトシ・ナカモトが書いたの?」

「それは…わからない…」

「その論文は、なぜインターネットの世界に発表したの?」

「それも、わからない…」

「なにもわからないじゃない!」ねねは声を荒げる。ここまで得意げに仮想通貨について解説してきた秀吉も、サトシ・ナカモトについてはほとんど何も知らないようなのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【完結】『80年を超越した恋~令和の世で再会した元特攻隊員の自衛官と元女子挺身隊の祖母を持つ女の子のシンクロニシティラブストーリー』

M‐赤井翼
現代文学
赤井です。今回は「恋愛小説」です(笑)。 舞台は令和7年と昭和20年の陸軍航空隊の特攻部隊の宿舎「赤糸旅館」です。 80年の時を経て2つの恋愛を描いていきます。 「特攻隊」という「難しい題材」を扱いますので、かなり真面目に資料集めをして制作しました。 「第20振武隊」という実在する部隊が出てきますが、基本的に事実に基づいた背景を活かした「フィクション」作品と思ってお読みください。 日本を護ってくれた「先人」に尊敬の念をもって書きましたので、ほとんどおふざけは有りません。 過去、一番真面目に書いた作品となりました。 ラストは結構ややこしいので前半からの「フラグ」を拾いながら読んでいただくと楽しんでもらえると思います。 全39チャプターですので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。 それでは「よろひこー」! (⋈◍>◡<◍)。✧💖 追伸 まあ、堅苦しく読んで下さいとは言いませんがいつもと違って、ちょっと気持ちを引き締めて読んでもらいたいです。合掌。 (。-人-。)

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...