こちら織田証券(株)清州営業所

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

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【番外編】新入社員ガモタンの珍道中

【コメディ】「これ以上は…」値引きパラダイス・洋服の青山

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佐々木希。武井咲。

洋服の青山が起用している彼女たちは、ガモたんなどが呼び捨てにするのがおこがましいほどの絶世の美女だ。

ただ、彼女たちは人妻なのだ。
ガモたんは、人妻という言葉に弱く、どんなに美しくとも、人妻に対しては理性が働いてしまう癖があった。

人妻はダメだ、人妻はダメだ、人妻はダメだ、

心の中の碇シンジは今日も叫んだ。

どうせ今日も、美女人妻のタレ幕をみて自制心と闘うのだろうと思いながら、洋服の青山に向かった。

しかし、洋服の青山のタレ幕に、彼女たちの姿はなく、別の美女のタレ幕が掲げられていたのだ。



橋本環奈だ。

人妻じゃない × 美女

この情報がかけ合わさるだけでもうガモたんは人を好きになる。

それほどチョロい男なのだ。

そこに、「若さ」とか、「妖艶さ」が加わればもう、「結婚してください!」だ。

体中にエネルギーが満ち、抑えきれない衝動のせいか、鼻の穴が、2cmほど広がった。

気づくと、まるで自分の足ではないかのように、勝手に店に向かって歩き出していた。


店内に入ったガモたんを出迎えてくれたのは、橋本環奈のポスターだった。

あまりの美貌に意識がトんでしまったいるガモたんは、吸い付かれるようにポスターの目の前に立ち止まる。

そんな俺の意識を現実に戻したのは、洋服の青山の店員からのお出迎えの挨拶だった。

「いらっしゃいませ~~」

「いらっしゃいませ~」

「ラッシャイ!」

「いらっしゃいまっせ!」

ハッと、意識を戻すと、橋本環奈のポスターが貼られていたのは、レディーススーツコーナーだった。

ココジャナイ!

ガモたんは、さっとその場から離れ、恥ずかしさをごまかすように、店内をうろつく。なぜか足取りはスキップだった。

挙動不審なガモたんをみかねたのか、ベテランの女性店員が声をかけてくれた。

「何をお探しですか?」

「とんがってない靴ってありますか?」

「とんがってない??」

「あ、私服でも使えるカジュアルな靴です」

「ありますよ~こちらです」

靴売り場に案内してもらったときに、身に覚えのある黒の靴を見つけた。

それは、昔働いていたバイト先、ガストで履いていた安全靴だった。

「なんでガストの安全靴が青山にあるねん」と、思って値段を見ると、さらに驚いた。

ガストでは1000円だった安全靴が、青山では10000円なのだ。

青山のネームバリューは、安全靴の価値を10倍にするのか、と感心した。


結局、安全靴ではなく、ヘラクレスオオカブト色、こげ茶色ともいうべきか、の靴を買った。

そして、最も大事な、お会計の時間がやってきた。

ここが腕の見せ所である、カジュアルな靴を洋服の青山で買いに来た理由でもあった。


「これ、使えますか?」
ガモたんはドヤ顔で、3000円分の特別商品割引券を提示した。


―説明しよう―

この、「AOYAMAカード会員様専用」とは、青山のクレジットカードを持っている人に配られるお得な割引券だ!
年会費約1500円で、それ以上の割引を受けられるお得な制度となっている!!

「使えますよー」
ベテランの女性店員はそう答えた。

そして、矢継ぎ早に次のカードを繰り出す。



「これも~、使えます?」

―説明しよう―
特別商品優待券は、お誕生日月以外でもお誕生日月と同じ割引特典が受けられるのだ!
この優待券を使えば、誕生月以外でも10%の割引を受けることができる!!


「使えますよ~」
という返答に対して、食い気味に、ガモたんは尋ねる。

「これも、もしかして使えちゃったりしますか?」

ガモたんが提示したのは、家に届いた洋服の青山のチラシ「メンズビジネス洋品・500円オフ」だった。
このあたりからは、挑戦的な値引き交渉だ。併用禁止です、を覚悟しての提示だった。

店員は紙を確認するや否や、
「使えますよ~~」


マタ、ツカエタ!!!

どうなっているんだ、この店はどれほど値引きをしてくれるのだ…
儲ける気はないのか??それとも、原価がべらぼーに安いのか?
この10000円の靴の原価は100円ほどなのか??

混乱状態のガモたんに、店員はさらに、値引きという連続パンチを畳み掛けてきた。

「お客様、クレジットカードにポイントが貯まっておりますが、その分も値引きしますか?」

「は、はい。お願いします」

さらに店員は、「アプリもってますか?」と、ガモたんに尋ねた。

「どうでしたっけ~」

「アプリから登録していただければ、さらに値引きできますよ」

「え!?まだ値引いてくれるんですか!?」驚きの声をあげる。


マタ、ネビキ!?!

値引き、値引き、また値引き、どれほど値引くだろうか。
これ以上値引いてもらっていいんですか?と土下座したくなる。

洋服の青山は、1000年に一度、現れるかどうかの値引き対応店だ。

こんなに値引いてもらえたなら、10000円の靴が10円くらいで買えるのではないか?と思ってしまう。


値引いてもらいたいがために、洋服の青山アプリの存在を記憶の底から思い出したガモたんは、スマホの画面を探しまくり、アプリを見つけ出した。

ニヤっと笑いタップするも、久しく使っていなかったので、起動できなかった。
どうやら、再度アプリを取得しなければならないようだ。

「では、もう一度取得してもらえますか?」

店員の声に急かされて更新ボタンを押すも、時計の針はなかなか進まない。

不審に思った店員が、「どうですか?アプリとれましたか?」と尋ねてきたが、「まだです」と返答するしかない。

再び、「アプリとれましたか?」と聞かれたときに、ついに少し恥ずかしい事実を暴露した。「ぼく、格安SIM携帯なんで、めっちゃ遅いんですよ…」

カッコ悪い、あまりにカッコ悪かった。

誰かが、「携帯の通信速度は、財力の証だ」と言っていたのを思い出す。月の携帯料金が1900円ほどのガモたんは、通信速度が鬼のように遅かったのだ。

10分ほど待ってアプリを取得できたものの、今度はメールアドレスの問題が原因で、アプリに登録することはできなかった。
キャリアメールさえ使えず、ろくにアプリ登録も使えない自分が情けなかった。

意気消沈していたガモたんに対して、店員は再び声をかけた。

「Tカード持っていますか?」

「はい」

そして、渡されたTカードをスキャンした店員は、こう尋ねた。

「300ポイント分あるのですが、この分も値引きしときましょうか?」

もうええって!ここまでくるとガモたんはさすがに嫌気がさしてきた。
どこまで値引きするねん、という思いがふつふつとわき立ってくる。

ガモたんは店員をキッと睨めつけると、こう言い放った。

「値引き…お願いします!」

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