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【番外編】新入社員ガモタンの珍道中
【越南1】ベトナム珍道中~旅の始まり
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<prologue>
織田証券株式会社清州支店、我毛氏郷は社会人1年目。
彼は、社会を舐めていました。
有給は権利ですよ、と言わんばかりに、上司にドヤ顔でこう告げます。
「9月に夏休みと有給で5連休とりますね!」
「ああ、とれよ。どこに行くんや?」
「ベトナムっす!人生初の海外旅行なんで!」
「お前、お金ないっていうてなかったか?」
「ないっすよ!だから`ツケ`です。一緒に行く大学生の後輩から借りていきます!」
ガモたんがお金を借りたのは、関一政。
あだ名はせっきー。彼はガモたんの大学時代の後輩でしたが、非常に財力があったのです。
たとえ財力があるとはいえ、後輩からお金を借りて、海外に行く。
まさに、ゲスの極み。
上司はガモたんに言いました。
「お前、社会人としてどうやねん?」
「いやー、だって、若いうちに遊んどかないと。ぼくらゆとりは定年なんてないんで、今遊ぶんすよ!」
「そんなこっちゃ、将来苦労するぞ?」
上司の声は、ガモたんの耳には届いていませんでした。
ニヤニヤと笑いながら、ベトナムの方角を凝視する青年に待つ冒険とは。
そして彼はこの旅で、通貨の意味を知るのです。
*
ふるさと納税でざわついている泉佐野市には、関西空港があります。
国際線のターミナルで、手荷物検査を待っているとき、ガモたんは後輩のせっきーと所持金の確認をしていました。
「なあ、せっきー、今財布に何円あるん?」
「けっこう持ってきましたよ」
せっきーはにっこりと笑って、樋口一葉を掲示します。
「ん?5000円やん」
「そっす!5000円です!」
「いや、俺ら今から、海外に行くんやで?
6泊もあるんやで?いくらツアーとはいえ、飯や土産を5000円で賄えるか?」
ガモたんの分のツアー代金の16万5000円を、建て替えてくれている後輩のせっきーは、手持ち現金を殆ど持ってこなかったのです。
「カードもあるしなんとかなるかなあと思いまして!」
しかっめつらのガモたんに対して、せっきーは言葉を続けます。
「でもね。安心してください!トランプはありますよ」
「トランプは俺もあるよ!」
「ガモたんら、準備がええっすね!」
せっきーはにっこりと笑いました。
「いや、トランプ2個いらんやん。
てか、ティッシュは持ってきた?」
「ティッシュは3個ですね。」
「少ないな、俺は20個あるぞ。充電器は持ってきた?」
「ガモたんは1つ持ってきました。」
「俺2つあるぞ!5000mAと6000mA!すげえやろ?」
「ガモたんの充電器は、1つで11000mAですよ。」
「少数精鋭、やな...」
*
手荷物検査を舐めていたガモたんは、保安検査スタッフのお姉さんにこう告げます。
「飲み物なんですけど、100ml以下ならいけますよね?」
「飲み物はダメです」
痴漢、ダメ!のテンションで話すお姉さん。
「ああ、ちょい待ってくださいね」と言ったガモたんは、グビッグビッ飲み干します。
まるで、牛乳瓶を飲み干す小学生を見つめるような目で、お姉さんはガモたんを見守ってくれました。
*
飛行機に乗ったガモたんらは、ベトナムに向けて大空を飛んでいました。
上空、38000フィート。約11キロメートル。外気温は、マイナス59.3度。
飛行機の中で読んだ旅行会社のパンフレットにはこのような記載がありました。
「最近、偽ガイドがよくいます。日本語で'こっちですよー'と観光客を騙し、怪しいところへ連れて行くので気をつけてください」
そんなパンフレットを読んだガモたんたちに、不安が募ります。
それでなくとも初の海外、怪しい人に騙されないかどうか、心配になったのです。
ほどなく、ベトナムの南部の都市・ホーチミンに到着しました。
入国検査と便意を済ませたあと、ロビーから出た瞬間、大きな叫び声が聞こえてきました。
「ヘイ!カンキン、カンキン!コッチデカンキンシテルヨ!」
その呼び声はまさに、カツオの叩き売り。
ベトナムに来てまで、魚屋さんにやってくるとは思いませんでした。
「監禁されるのは危険やな…」
「いや、先輩。換金ですよ、たぶん?
ほら、手にベトナムの貨幣`ドン`を持ってますし」
「なるほど。
あの人らは、カツオならぬ、ドンを叩き売っているわけか」
ガモたんらはその怪しい換金屋さんに、5000円を差し出しました。
返ってきたのは、ベトナム通貨で100万7000ドンが帰ってきました。
桁があまりにも大きすぎて正しいレートなのか判断がつきません。
これがお得なのか、それとも高い手数料をとられているのか、とりあえず換金はオッケーです。
*
ガモたんらは今回、現地ツアーに参加していました。
始めに課せられたミッションは、空港の外で待っている観光ガイドに会うことです。
旅行会社から届いた旅程表には、『オレンジの服を着た女性がガイドです。空港でこの人を探してください』と書いてありました。
そこに集合場所は記されておらず『探せ』とだけ書いてあります。
ガモタンはそれをみて、「サトシナカモトを探せっていう感じか?」と呟きますが、「ウォーリーのほうが一般的ですね」と、せっきーは答えます。
2人はガイドさんを探しながらキョロキョロと空港の入り口から外へ出ると、鬼の形相でガモたんらの元へ駆け寄る女性がいました。
彼女はガモたんらを見かけるなり、腹の底から叫びます。
「アンタタチ!マッテタヨ!」
どうやらこの怒り狂っている女性が観光ガイドのようです。その口調は、日系ベトナム人。
「え?いや、ぼくら、今着いたばかりで…」
「サンジュップン!
ホカノヒト、ミンナ、モウキテル!アンタラ、ヒコウキ、ノッテナイカト、オモッタ!!」
しかしおかしいのです。ガモたんらはそんなに遅くなった気がしていません。
せっきーが便意を済ませたのと、換金に時間を費やしたくらいです。本当に彼女は、30分も待ったのでしょうか。
怒り狂うバスガイドさんを前に、せっきーは申し訳なさそうな顔をしていました。
そして小声で、「ガモたん先輩、ここは申し訳なさそうな顔をしてください。
ガイドのおばさん、怒りが止まりそうにありません。このままなら、両成敗されますよ」
「これは一本とられたわ。まさに、両成敗が止まらないな」
「ハヤクバスニノレ!!」
バスガイドさんの急かされるまま、ガモたんらはバスに乗り込みました。
織田証券株式会社清州支店、我毛氏郷は社会人1年目。
彼は、社会を舐めていました。
有給は権利ですよ、と言わんばかりに、上司にドヤ顔でこう告げます。
「9月に夏休みと有給で5連休とりますね!」
「ああ、とれよ。どこに行くんや?」
「ベトナムっす!人生初の海外旅行なんで!」
「お前、お金ないっていうてなかったか?」
「ないっすよ!だから`ツケ`です。一緒に行く大学生の後輩から借りていきます!」
ガモたんがお金を借りたのは、関一政。
あだ名はせっきー。彼はガモたんの大学時代の後輩でしたが、非常に財力があったのです。
たとえ財力があるとはいえ、後輩からお金を借りて、海外に行く。
まさに、ゲスの極み。
上司はガモたんに言いました。
「お前、社会人としてどうやねん?」
「いやー、だって、若いうちに遊んどかないと。ぼくらゆとりは定年なんてないんで、今遊ぶんすよ!」
「そんなこっちゃ、将来苦労するぞ?」
上司の声は、ガモたんの耳には届いていませんでした。
ニヤニヤと笑いながら、ベトナムの方角を凝視する青年に待つ冒険とは。
そして彼はこの旅で、通貨の意味を知るのです。
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ふるさと納税でざわついている泉佐野市には、関西空港があります。
国際線のターミナルで、手荷物検査を待っているとき、ガモたんは後輩のせっきーと所持金の確認をしていました。
「なあ、せっきー、今財布に何円あるん?」
「けっこう持ってきましたよ」
せっきーはにっこりと笑って、樋口一葉を掲示します。
「ん?5000円やん」
「そっす!5000円です!」
「いや、俺ら今から、海外に行くんやで?
6泊もあるんやで?いくらツアーとはいえ、飯や土産を5000円で賄えるか?」
ガモたんの分のツアー代金の16万5000円を、建て替えてくれている後輩のせっきーは、手持ち現金を殆ど持ってこなかったのです。
「カードもあるしなんとかなるかなあと思いまして!」
しかっめつらのガモたんに対して、せっきーは言葉を続けます。
「でもね。安心してください!トランプはありますよ」
「トランプは俺もあるよ!」
「ガモたんら、準備がええっすね!」
せっきーはにっこりと笑いました。
「いや、トランプ2個いらんやん。
てか、ティッシュは持ってきた?」
「ティッシュは3個ですね。」
「少ないな、俺は20個あるぞ。充電器は持ってきた?」
「ガモたんは1つ持ってきました。」
「俺2つあるぞ!5000mAと6000mA!すげえやろ?」
「ガモたんの充電器は、1つで11000mAですよ。」
「少数精鋭、やな...」
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手荷物検査を舐めていたガモたんは、保安検査スタッフのお姉さんにこう告げます。
「飲み物なんですけど、100ml以下ならいけますよね?」
「飲み物はダメです」
痴漢、ダメ!のテンションで話すお姉さん。
「ああ、ちょい待ってくださいね」と言ったガモたんは、グビッグビッ飲み干します。
まるで、牛乳瓶を飲み干す小学生を見つめるような目で、お姉さんはガモたんを見守ってくれました。
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飛行機に乗ったガモたんらは、ベトナムに向けて大空を飛んでいました。
上空、38000フィート。約11キロメートル。外気温は、マイナス59.3度。
飛行機の中で読んだ旅行会社のパンフレットにはこのような記載がありました。
「最近、偽ガイドがよくいます。日本語で'こっちですよー'と観光客を騙し、怪しいところへ連れて行くので気をつけてください」
そんなパンフレットを読んだガモたんたちに、不安が募ります。
それでなくとも初の海外、怪しい人に騙されないかどうか、心配になったのです。
ほどなく、ベトナムの南部の都市・ホーチミンに到着しました。
入国検査と便意を済ませたあと、ロビーから出た瞬間、大きな叫び声が聞こえてきました。
「ヘイ!カンキン、カンキン!コッチデカンキンシテルヨ!」
その呼び声はまさに、カツオの叩き売り。
ベトナムに来てまで、魚屋さんにやってくるとは思いませんでした。
「監禁されるのは危険やな…」
「いや、先輩。換金ですよ、たぶん?
ほら、手にベトナムの貨幣`ドン`を持ってますし」
「なるほど。
あの人らは、カツオならぬ、ドンを叩き売っているわけか」
ガモたんらはその怪しい換金屋さんに、5000円を差し出しました。
返ってきたのは、ベトナム通貨で100万7000ドンが帰ってきました。
桁があまりにも大きすぎて正しいレートなのか判断がつきません。
これがお得なのか、それとも高い手数料をとられているのか、とりあえず換金はオッケーです。
*
ガモたんらは今回、現地ツアーに参加していました。
始めに課せられたミッションは、空港の外で待っている観光ガイドに会うことです。
旅行会社から届いた旅程表には、『オレンジの服を着た女性がガイドです。空港でこの人を探してください』と書いてありました。
そこに集合場所は記されておらず『探せ』とだけ書いてあります。
ガモタンはそれをみて、「サトシナカモトを探せっていう感じか?」と呟きますが、「ウォーリーのほうが一般的ですね」と、せっきーは答えます。
2人はガイドさんを探しながらキョロキョロと空港の入り口から外へ出ると、鬼の形相でガモたんらの元へ駆け寄る女性がいました。
彼女はガモたんらを見かけるなり、腹の底から叫びます。
「アンタタチ!マッテタヨ!」
どうやらこの怒り狂っている女性が観光ガイドのようです。その口調は、日系ベトナム人。
「え?いや、ぼくら、今着いたばかりで…」
「サンジュップン!
ホカノヒト、ミンナ、モウキテル!アンタラ、ヒコウキ、ノッテナイカト、オモッタ!!」
しかしおかしいのです。ガモたんらはそんなに遅くなった気がしていません。
せっきーが便意を済ませたのと、換金に時間を費やしたくらいです。本当に彼女は、30分も待ったのでしょうか。
怒り狂うバスガイドさんを前に、せっきーは申し訳なさそうな顔をしていました。
そして小声で、「ガモたん先輩、ここは申し訳なさそうな顔をしてください。
ガイドのおばさん、怒りが止まりそうにありません。このままなら、両成敗されますよ」
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