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【番外編】新入社員ガモタンの珍道中
ドアギワに116
しおりを挟む腕を交差させた。
削られたフィルムから光線が示される。
侵略者は、塵になった。
あの時代のような目に見えるヒーローは、もういない。
消える年金、上がり続ける物価、そして、社内で火を噴くクッパ。
明日とは、どこにあるのか。
降りしきる雨、乗客たちは結露に気付くこともなく、四角い液晶画面を見つめ続けていた。
*
敬愛する尾崎豊はイヤホン越しに魂のお叫びをあげる。
「サラリーマンにはなりたかねぇ朝夕のラッシュアワー...」
乗りたくない思いを押し殺し、すし詰の電車に足を踏み入れた。
見たところ乗車率は約150%。
洗濯機からはみでる衣類のような肢体。
「ドアが-閉まります」
無機質な駅員の声をかき消すように、警報音が鳴り響いた。
そのとき、鈍い痛みが左腕に走った。
ムニュウ、ムグゥ、ギニュウ、トクセンタイ
閉まるドアに容赦はない。
まるでハンバーグを挟むかのようにぷにたんな上腕二頭筋をサンドイッチした。
軋むような痛みが、肉を噛みちぎる。
20年前に思いを馳せて、さつまいもを引っこ抜くように力を入れた。
ゼリー状のぷにたんは、解放されたが、まだ終わらない。
服が絡め取られたままだった。
カッターシャツを咥え込むドアが、食虫植物のように見えてくる。
「これが新手の緊縛プレイか。
もういい、このまま次の駅まで過ごそう、ドアとランデヴーも悪くない」
そう思ったそのとき、ドアがミシミシと音を立てた。
それは2つ隣の立っていた青年の指だった。
青年は全身全霊を指先に込めて、ドアを開けようとしてくれているのだ。
そこまでしなくていいのに…
もっと自分の指を大事にしてくれ…
青年のか細い指が紅潮すると同時に、ドアは数ミリ宙に浮いた。
首輪が解かれた犬のように飛び出してくる服。
しかし、青年に感謝の気持ちを伝えようにも、満員電車では言葉を伝えられない。
何かないものか。
そうだ。
自由を得た左手を伸ばして、結露した窓に魂を込めた。
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