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III章 どでかい花火で人生終幕?
18話 史上最悪のクソゲー「ダイナマイト刑事」(2)
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「た、対戦車ライフルって書いてるぞ?」
にんじんに見えるグレネードを投げてくる危険なコックさんと対峙する中、僕たちは強力な武器を見つけました。
「それをコックさんに撃って?」
「え?これ対戦車ライフルやで?
人に撃てば骨も残らないレベルで粉々に吹っ飛ぶし、そもそもこれらを人に向ける事自体が犯罪やろ。」
「んなこと言うてる場合じゃないやろ。
やらなきゃ俺たちがやられるんや!
覚悟を決めろ!」
「か、覚悟?
覚悟...」
僕は息をゴクリと飲み込み、銃口をコックさんに向けます。
震える手で引き金を触り、引き金を引く決意を固めたその時...
自動感知センサーは、'ピッ'と交通ICカードに反応したような間抜けな音を上げ、銃口からダァーンという音を立て、コックさんに発泡しました。
球は直撃し、ドォッーンという炸裂音をあげて爆発!
さよならテンさん...
とてつもない爆発にも関わらず、モクモウと捲き上る煙の中からコックさんのシルエットが浮かび上がります。
パッパッ...
チャオズを払いおとすような仕草で不敵な笑みを浮かべるコックさんな本当に人間なのでしょうか?
ワンピースのサンジが空を歩いた時のような衝撃に包まれ、亜然とする僕ら。
「き、効いてない。」
「予想のナナメ上を行くまさに'ダイナマイトバカゲー'やな。」
こうなれば地道に攻撃し続けて敵の体力を削っていくしかありません。
その間に僕らの体力ゲージは何度も0を迎えますがそんなことは気にしません。
「倒されたら50円入れたらええだけやろ。」
「50円で蘇れるねんから嬉しいな。」
終盤のドラゴンボールのように命を軽視してしまっています。
完全ライフ制で残機が無く、一度死ぬとコンティニューへ直行するのですが、50円玉さえ投入すれば僕らは何度でも蘇るのです。
「こうなりゃヤケや!」
落ちている銃には限りがあるので、普通に考えたら武器としては使えないであろう代物まで武器として扱い、総力戦でコックに挑みます。
鉄パイプを振り回し不良のような気分になり、
クラスの委員長に怒られへんか心配になりながらも掃除用デッキブラシを振り乱します。
椅子、ドラム缶などを投げ飛ばしているうちに、コックさんは倒れ込んでいました。
「や、やっと倒した...」
次に僕らを襲ったのはバミューダ族という全身黒塗りで骸骨のような白いペイントを彩ったやつらです。
彼らにダメージを与えて、ダウンさせると二人に分裂するというアメーバのような珍しい人たちです。
迫り来るバミューダ族や他の謎キャラをたちコマンドを適当におして攻撃して倒すという、
ダイナマイト刑事になりきって戦い続けてから約30分がたちました。
50円玉でのコンティニューは二桁を越え、ステージ攻略後の急なコマンド入力(「左」と画面にドカっと表示される)
*QTE(素早くレバーかボタンを入力する)が入ることがあり、これに成功すると有利にゲームを進められる
にも慣れた僕らは、このゲームの完全クリアへの手ごたえを感じていました。
ある扉を開いた時に、目の前に全長20mはあろう
タコが現れるまでは...
「おい!この巨大タコ強すぎる。」
「てかなんでタコがおるねん!」
巨大だこは、僕らを容赦なく痛めつけてきました。
足を使って巻きついてきたり、8本足を揺らして仲間の子ダコを集らせて僕らを襲わせたりします。
「うわっ!墨吐いてきた!服汚れるやんけ!」
「この服高かったのに...あとでクリーニングいこ。」
のんきやな。
体力ゲージが2列、洒落にならない攻撃力、ゲームバランスもへったくれもありません。
「あっかん!やられた!」
「うわっっ!俺もやられた!」
ボブときゃぷてんは同時に倒された後、画面両側にコンティニューの文字が刻まれています。
「とっしーはよ、金入れて。」
「もう小銭ねぇよ。」
「両替してや。」
「いや、もう残り1000円しかない。
てか、もうえーやん!諦めよう。
全クリはむずいって!」
「バカヤロー!
諦めるなよ!頼む両替してくれ!」
ボブは必死の形相で吐き出した言葉を聞いた僕は、メトロ神戸の地下中の空気全てを吸い込む勢いで息を吸い込み叫びました。
「絶対、両替せん!!!」
「あぁ~。終わった。両替してくれんのかよ。」
「ここまでの苦労はなんやったんや。」
ボブときゃぷてんはそういってコンティニュー画面の前でうなだれていました。
両替機の近くで、ウィーンジャラジャラジャラという音がしていることに、気づかず…
5.4.3.
コンティニュー画面は、刻一刻と数字を刻みます。
これが0になったとき、ここまでのステージクリアは全て無となります。
「ついに終わりかよ...」
「あとちょっとやのにな...」
ため息交じりの彼らの真後ろからひょろ長い腕を伸ばし、50円玉を投入した少年は、肺が張り裂けそうなほど空気を吸い込んで、叫びました。
「こんなとこで諦めてたまっか!
つづけっぞ!」
「おぉぉおおお!!」
ボブときゃぷてんは雄叫びをあげます。
「このタコを倒すには金を入れまくるしかない。」
「50円玉をこの台の上に置いて、すぐにコンティニューする。ノンストップで攻め続けるぞ!」
グリー、モバゲーなどスマホソシャゲーが流行る約1.2年前、僕たちは一足早く課金兵になっていました。
それから5分後...
ゲームバランスを破壊するほどのボスタコ・クラーケンも金に糸目をつけないことによって、何度倒されても立ち上がる僕たちにたじろいでいました。
タコ目線からすれば
「こいつら何回倒しても10秒以内には復活してきやがる。ゾンビかよ...」と思っているでしょう。
「いっけぇ!ドォーン!」
きゃぷてんは、溜め込んだ力を右足に込め、クラーケンの足にぶち当たりました。
クラーケンは8本の足をばたつかせ、苦しんでいます。
グゴゴゴゴ...
クラーケンは得体の知れない音を発しながら倒れこみました。
「うおっうぉっ!」
「しぇっあっ!!」
「ついにやったぞ!」
僕らは甲子園出場を決めたかのように抱き合い、喜びました。
このボスを倒した達成感が大きすぎて、僕はこの後のゲーム展開をよく覚えていません。
最後のシーンでは、全然可愛くないメインヒロインを巡ってここまで共闘してきたプレイヤーキャラが2人で争うことになり、
「え?」
「おれらが戦うん?」
と、戸惑うも結局、本気で勝ちたくなったような気がします。
そして僕ら3人は最後に声を揃えて呟きました。
「ダイナマイト刑事はクソゲー!」
にんじんに見えるグレネードを投げてくる危険なコックさんと対峙する中、僕たちは強力な武器を見つけました。
「それをコックさんに撃って?」
「え?これ対戦車ライフルやで?
人に撃てば骨も残らないレベルで粉々に吹っ飛ぶし、そもそもこれらを人に向ける事自体が犯罪やろ。」
「んなこと言うてる場合じゃないやろ。
やらなきゃ俺たちがやられるんや!
覚悟を決めろ!」
「か、覚悟?
覚悟...」
僕は息をゴクリと飲み込み、銃口をコックさんに向けます。
震える手で引き金を触り、引き金を引く決意を固めたその時...
自動感知センサーは、'ピッ'と交通ICカードに反応したような間抜けな音を上げ、銃口からダァーンという音を立て、コックさんに発泡しました。
球は直撃し、ドォッーンという炸裂音をあげて爆発!
さよならテンさん...
とてつもない爆発にも関わらず、モクモウと捲き上る煙の中からコックさんのシルエットが浮かび上がります。
パッパッ...
チャオズを払いおとすような仕草で不敵な笑みを浮かべるコックさんな本当に人間なのでしょうか?
ワンピースのサンジが空を歩いた時のような衝撃に包まれ、亜然とする僕ら。
「き、効いてない。」
「予想のナナメ上を行くまさに'ダイナマイトバカゲー'やな。」
こうなれば地道に攻撃し続けて敵の体力を削っていくしかありません。
その間に僕らの体力ゲージは何度も0を迎えますがそんなことは気にしません。
「倒されたら50円入れたらええだけやろ。」
「50円で蘇れるねんから嬉しいな。」
終盤のドラゴンボールのように命を軽視してしまっています。
完全ライフ制で残機が無く、一度死ぬとコンティニューへ直行するのですが、50円玉さえ投入すれば僕らは何度でも蘇るのです。
「こうなりゃヤケや!」
落ちている銃には限りがあるので、普通に考えたら武器としては使えないであろう代物まで武器として扱い、総力戦でコックに挑みます。
鉄パイプを振り回し不良のような気分になり、
クラスの委員長に怒られへんか心配になりながらも掃除用デッキブラシを振り乱します。
椅子、ドラム缶などを投げ飛ばしているうちに、コックさんは倒れ込んでいました。
「や、やっと倒した...」
次に僕らを襲ったのはバミューダ族という全身黒塗りで骸骨のような白いペイントを彩ったやつらです。
彼らにダメージを与えて、ダウンさせると二人に分裂するというアメーバのような珍しい人たちです。
迫り来るバミューダ族や他の謎キャラをたちコマンドを適当におして攻撃して倒すという、
ダイナマイト刑事になりきって戦い続けてから約30分がたちました。
50円玉でのコンティニューは二桁を越え、ステージ攻略後の急なコマンド入力(「左」と画面にドカっと表示される)
*QTE(素早くレバーかボタンを入力する)が入ることがあり、これに成功すると有利にゲームを進められる
にも慣れた僕らは、このゲームの完全クリアへの手ごたえを感じていました。
ある扉を開いた時に、目の前に全長20mはあろう
タコが現れるまでは...
「おい!この巨大タコ強すぎる。」
「てかなんでタコがおるねん!」
巨大だこは、僕らを容赦なく痛めつけてきました。
足を使って巻きついてきたり、8本足を揺らして仲間の子ダコを集らせて僕らを襲わせたりします。
「うわっ!墨吐いてきた!服汚れるやんけ!」
「この服高かったのに...あとでクリーニングいこ。」
のんきやな。
体力ゲージが2列、洒落にならない攻撃力、ゲームバランスもへったくれもありません。
「あっかん!やられた!」
「うわっっ!俺もやられた!」
ボブときゃぷてんは同時に倒された後、画面両側にコンティニューの文字が刻まれています。
「とっしーはよ、金入れて。」
「もう小銭ねぇよ。」
「両替してや。」
「いや、もう残り1000円しかない。
てか、もうえーやん!諦めよう。
全クリはむずいって!」
「バカヤロー!
諦めるなよ!頼む両替してくれ!」
ボブは必死の形相で吐き出した言葉を聞いた僕は、メトロ神戸の地下中の空気全てを吸い込む勢いで息を吸い込み叫びました。
「絶対、両替せん!!!」
「あぁ~。終わった。両替してくれんのかよ。」
「ここまでの苦労はなんやったんや。」
ボブときゃぷてんはそういってコンティニュー画面の前でうなだれていました。
両替機の近くで、ウィーンジャラジャラジャラという音がしていることに、気づかず…
5.4.3.
コンティニュー画面は、刻一刻と数字を刻みます。
これが0になったとき、ここまでのステージクリアは全て無となります。
「ついに終わりかよ...」
「あとちょっとやのにな...」
ため息交じりの彼らの真後ろからひょろ長い腕を伸ばし、50円玉を投入した少年は、肺が張り裂けそうなほど空気を吸い込んで、叫びました。
「こんなとこで諦めてたまっか!
つづけっぞ!」
「おぉぉおおお!!」
ボブときゃぷてんは雄叫びをあげます。
「このタコを倒すには金を入れまくるしかない。」
「50円玉をこの台の上に置いて、すぐにコンティニューする。ノンストップで攻め続けるぞ!」
グリー、モバゲーなどスマホソシャゲーが流行る約1.2年前、僕たちは一足早く課金兵になっていました。
それから5分後...
ゲームバランスを破壊するほどのボスタコ・クラーケンも金に糸目をつけないことによって、何度倒されても立ち上がる僕たちにたじろいでいました。
タコ目線からすれば
「こいつら何回倒しても10秒以内には復活してきやがる。ゾンビかよ...」と思っているでしょう。
「いっけぇ!ドォーン!」
きゃぷてんは、溜め込んだ力を右足に込め、クラーケンの足にぶち当たりました。
クラーケンは8本の足をばたつかせ、苦しんでいます。
グゴゴゴゴ...
クラーケンは得体の知れない音を発しながら倒れこみました。
「うおっうぉっ!」
「しぇっあっ!!」
「ついにやったぞ!」
僕らは甲子園出場を決めたかのように抱き合い、喜びました。
このボスを倒した達成感が大きすぎて、僕はこの後のゲーム展開をよく覚えていません。
最後のシーンでは、全然可愛くないメインヒロインを巡ってここまで共闘してきたプレイヤーキャラが2人で争うことになり、
「え?」
「おれらが戦うん?」
と、戸惑うも結局、本気で勝ちたくなったような気がします。
そして僕ら3人は最後に声を揃えて呟きました。
「ダイナマイト刑事はクソゲー!」
応援ありがとうございます!
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