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III章 どでかい花火で人生終幕?
37話 世界で一番長い日(4) 「みなと神戸花火大会」
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バイナイについて話しているうちに時刻は16時半を回っていました。
「そういや、今日の花火大会行く?」
本日は1万発の花火が打ち上がるみなと神戸花火大会がある日です。
「男3人で?」
「.....」
以前から気づいていたことですが、ぼくらバグジー親衛隊には女っ気が全くありません。
一度、レベッカという謎の美女と遭遇したものの、音沙汰はなし。
「まあ、行こう。
なんで行くかは知らんけどな」
しかし、きゃぷてんの頼り甲斐のあるきゃぷてんシーのおかけで花火大会参加が決まったのです。
ぼくらは一度帰宅して、テニス用品を置き私服に着替えてから再集合し、ハーバーランドへ向かいました。
高速神戸駅を降りて、南へ進みます。
大半がいちゃつくカップルで、ムスカ大佐に言わせれば、まるで人がゴミのような道を進み、やっと沿岸部へたどり着きました。
海沿いのフェンスに体を預けて真っ黒の海を眺め、黄昏れているとき、ある集団が話しかけて来ました。
「お前ら、男3人で花火見に来たん?」
ガムをくっちゃらくっちゃらしながら嘲笑したように言い放つ相手は見るからに年下、茶髪の中学生でした。
おぼこい顔立ち、キレキレの眉毛がなければ、小学生にも見えます。
「お、おう」
ぼくは力なく答えます。
「女と来いよ~。だっせぇ」
茶髪の少年の隣にいた金髪の女子はトドメをさすかのようにぼくらをバカにします。
彼女は整った顔立ちながら、細い眉毛と金色の頭髪によって気の強そうな雰囲気を醸し出しています。
相手がヤンキーだからといって、侮辱されて黙っているわけには行きません。
「ンだとコラァ」
と叫んで殴りかかる...
そんなはずもなく、男3人組はチッと軽く舌打ちをして顔を背けます。
茶髪の少年はそこで大きく溜息を、はっきりと声に出すようにして吐き出しました。
不満げな顔つきと不愉快さたっぷりの息はそれだけで他者に威圧感と恐怖を与えます。
彼の好戦的な顔つきからはぼくらが殴りかかってくると予想していた節が見えます。
そして、ぼくらを返り討ちにして隣の女にいいところを見せたかったのでしょうが、
少年の思い通りにはさせません。
いや、ただただ言い返せなかったのです。それどころか中学生相手に威圧されていました。
「おい、行くぞ」
ボブはなかば投げやりに吐き捨てるように言いました。
彼の言葉に促されるようにぼくらは足早にその場を去りました。
ヤンキーたちは追ってくることはありませんでした。チキンなぼくらにはもう興味がないのかもしれません。
きゃぷてんこのとき、調子が悪かったのかきゃぷてんシーを発揮できず、終始無言で下を向いていました。
苦虫をすりつぶした顔で...
「お前ら、男3人で花火見に来たん?」
圧倒的侮辱という事実を突きつけられたのち 「女と来いよ~。だっせぇ」
と言われる。
うっすら自分たちでも思っていたことを改めて突かれる、そう、残念無念とはこのことです。
ヤンキーたちから逃げた後は、僕らは珍しく誰も話しませんでした。
各々滾るものがあったのでしょう。
しかし、しんみりするのはぼくららしくありません。
何か別の話題で明るくしようと各々考えていました。
「この花火大会にさ?
浅倉さん来てるんちゃう?きいてみろよ」
当てずっぽうよろしく軽い口調で言うボブをぼくはじっと見つめ、諭すように語りました。
「3時間ほど前にフラれてるんやぞ?
また連絡とるんか?!」
「でもまだ好きなんやろ?
すぐ諦めてるようじゃ浅倉さんみたいなモテモテを彼女にはできんぞ」
ハッとした顔でぼくは考え込みます。
事実、浅倉さんは、クラスの中ではかなり人気がありました。
男子生徒たちの大半は、彼女と交際したいと思っていたはずですが、チキンのぼくらは、みな密やかに、その想いを膨らませていた。
ぼくも他の友人たちの例に漏れず、外見はもちろんのこと、いつもにこやかで人を大切にすることもない彼女に好意を抱いていたのですが、好きになったタイミングが入学式なので、他の小僧たちよりは、'好き'の先輩です。
しかし、二度告白して、あっさり振られたことを考えれば、もう一度浅倉さんの恋人候補として立候補する勇気はありませんでした。
もはやぼくにとって浅倉さんは、清楚すぎる女神のように非現実的な存在になっていたのです。
遠くから彼女を眺めて見惚れるだけの、変態予備軍、もとい、ファンの1人でした。
自己討論を終えたぼくは2人に訴えかけます。
「勘違いしてないか?
浅倉さんはめっちゃ可愛くて大人気なんや。俺みたいなモテないやつがそうそう告白して成功する人ではない」
「これやから'あきち'は嫌なんや。
(アキラメキチガイ)話参照
告白失敗したからってまだ終わりじゃないやろ?
なんならまだ仲良くないのに告白して成功するはずがないやんけ!
いきなり告って成功するのはイケメンだけ。
とっしーは顔以外で戦ってんねんから、これからやろ!」
「そうや。そのためにも今から仲良くなれよ!
だから今、花火大会に来てるかどうか聞いて、コミュニケーション取っていくんや!」
ボブときゃぷてんは、相変わらず、無責任に煽るようなことを言います。
しかしぼくは、彼らの無責任を待ち望んでいたのです。
その言葉に背中を押され、「わかった。聞くよ」と、にんまりした顔で、浅倉さんにメールします。
「浅倉さん、今日の花火大会来てる?!」
ものの1分ですぐに返信が来ました。
来てるよー。
「浅倉さん、花火大会に来てるらしい!」
興奮で叫ぶぼくにボブはすかさずアドバイスします。
「ッ誘えよ」
「え?フラれたばっかやのに?」
「大丈夫、誘えばいけるから!」
きゃぷてんも根拠のない言葉を投げかけます。
普通なら断るところですが、夜のテンションがそうさせたのでしょうか。
「わかった誘うわ」
ぼくは煩わしそうに呟きながらも、心はワクワクしていたのです。
結末さえ知らずに...
「そういや、今日の花火大会行く?」
本日は1万発の花火が打ち上がるみなと神戸花火大会がある日です。
「男3人で?」
「.....」
以前から気づいていたことですが、ぼくらバグジー親衛隊には女っ気が全くありません。
一度、レベッカという謎の美女と遭遇したものの、音沙汰はなし。
「まあ、行こう。
なんで行くかは知らんけどな」
しかし、きゃぷてんの頼り甲斐のあるきゃぷてんシーのおかけで花火大会参加が決まったのです。
ぼくらは一度帰宅して、テニス用品を置き私服に着替えてから再集合し、ハーバーランドへ向かいました。
高速神戸駅を降りて、南へ進みます。
大半がいちゃつくカップルで、ムスカ大佐に言わせれば、まるで人がゴミのような道を進み、やっと沿岸部へたどり着きました。
海沿いのフェンスに体を預けて真っ黒の海を眺め、黄昏れているとき、ある集団が話しかけて来ました。
「お前ら、男3人で花火見に来たん?」
ガムをくっちゃらくっちゃらしながら嘲笑したように言い放つ相手は見るからに年下、茶髪の中学生でした。
おぼこい顔立ち、キレキレの眉毛がなければ、小学生にも見えます。
「お、おう」
ぼくは力なく答えます。
「女と来いよ~。だっせぇ」
茶髪の少年の隣にいた金髪の女子はトドメをさすかのようにぼくらをバカにします。
彼女は整った顔立ちながら、細い眉毛と金色の頭髪によって気の強そうな雰囲気を醸し出しています。
相手がヤンキーだからといって、侮辱されて黙っているわけには行きません。
「ンだとコラァ」
と叫んで殴りかかる...
そんなはずもなく、男3人組はチッと軽く舌打ちをして顔を背けます。
茶髪の少年はそこで大きく溜息を、はっきりと声に出すようにして吐き出しました。
不満げな顔つきと不愉快さたっぷりの息はそれだけで他者に威圧感と恐怖を与えます。
彼の好戦的な顔つきからはぼくらが殴りかかってくると予想していた節が見えます。
そして、ぼくらを返り討ちにして隣の女にいいところを見せたかったのでしょうが、
少年の思い通りにはさせません。
いや、ただただ言い返せなかったのです。それどころか中学生相手に威圧されていました。
「おい、行くぞ」
ボブはなかば投げやりに吐き捨てるように言いました。
彼の言葉に促されるようにぼくらは足早にその場を去りました。
ヤンキーたちは追ってくることはありませんでした。チキンなぼくらにはもう興味がないのかもしれません。
きゃぷてんこのとき、調子が悪かったのかきゃぷてんシーを発揮できず、終始無言で下を向いていました。
苦虫をすりつぶした顔で...
「お前ら、男3人で花火見に来たん?」
圧倒的侮辱という事実を突きつけられたのち 「女と来いよ~。だっせぇ」
と言われる。
うっすら自分たちでも思っていたことを改めて突かれる、そう、残念無念とはこのことです。
ヤンキーたちから逃げた後は、僕らは珍しく誰も話しませんでした。
各々滾るものがあったのでしょう。
しかし、しんみりするのはぼくららしくありません。
何か別の話題で明るくしようと各々考えていました。
「この花火大会にさ?
浅倉さん来てるんちゃう?きいてみろよ」
当てずっぽうよろしく軽い口調で言うボブをぼくはじっと見つめ、諭すように語りました。
「3時間ほど前にフラれてるんやぞ?
また連絡とるんか?!」
「でもまだ好きなんやろ?
すぐ諦めてるようじゃ浅倉さんみたいなモテモテを彼女にはできんぞ」
ハッとした顔でぼくは考え込みます。
事実、浅倉さんは、クラスの中ではかなり人気がありました。
男子生徒たちの大半は、彼女と交際したいと思っていたはずですが、チキンのぼくらは、みな密やかに、その想いを膨らませていた。
ぼくも他の友人たちの例に漏れず、外見はもちろんのこと、いつもにこやかで人を大切にすることもない彼女に好意を抱いていたのですが、好きになったタイミングが入学式なので、他の小僧たちよりは、'好き'の先輩です。
しかし、二度告白して、あっさり振られたことを考えれば、もう一度浅倉さんの恋人候補として立候補する勇気はありませんでした。
もはやぼくにとって浅倉さんは、清楚すぎる女神のように非現実的な存在になっていたのです。
遠くから彼女を眺めて見惚れるだけの、変態予備軍、もとい、ファンの1人でした。
自己討論を終えたぼくは2人に訴えかけます。
「勘違いしてないか?
浅倉さんはめっちゃ可愛くて大人気なんや。俺みたいなモテないやつがそうそう告白して成功する人ではない」
「これやから'あきち'は嫌なんや。
(アキラメキチガイ)話参照
告白失敗したからってまだ終わりじゃないやろ?
なんならまだ仲良くないのに告白して成功するはずがないやんけ!
いきなり告って成功するのはイケメンだけ。
とっしーは顔以外で戦ってんねんから、これからやろ!」
「そうや。そのためにも今から仲良くなれよ!
だから今、花火大会に来てるかどうか聞いて、コミュニケーション取っていくんや!」
ボブときゃぷてんは、相変わらず、無責任に煽るようなことを言います。
しかしぼくは、彼らの無責任を待ち望んでいたのです。
その言葉に背中を押され、「わかった。聞くよ」と、にんまりした顔で、浅倉さんにメールします。
「浅倉さん、今日の花火大会来てる?!」
ものの1分ですぐに返信が来ました。
来てるよー。
「浅倉さん、花火大会に来てるらしい!」
興奮で叫ぶぼくにボブはすかさずアドバイスします。
「ッ誘えよ」
「え?フラれたばっかやのに?」
「大丈夫、誘えばいけるから!」
きゃぷてんも根拠のない言葉を投げかけます。
普通なら断るところですが、夜のテンションがそうさせたのでしょうか。
「わかった誘うわ」
ぼくは煩わしそうに呟きながらも、心はワクワクしていたのです。
結末さえ知らずに...
応援ありがとうございます!
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