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2、沸き上がるエナジー

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ぼくは、尾行しているのがバレつつあったこともあり、彼に見切りをつけ、自力での到着を目指します。

グーグルマップを利用したこともあり、すんなり目的地まで到着したのでしたが、尾行することによってアントニオ猪木(小)と目が合うことができたのでとても良かったです。(ホモかな?)



目的地のビルの前では、カップルいちゃついていました。

「なんやなんや」と横目で一瞥したぼくですが、なんと彼氏はSASUKEオーディションに参加するようなのです。

可愛い彼女からの見送りを受けたイケメン彼氏。

ぼくは、そんな彼と、エレベーターで顔を合わせてしまったのです。


同じSASUKEオーディション参加者とはいえ、可愛い彼女の見送りを受けた目の前の男に対して、
ぼくは、彼女もいないひ弱な塩顔。


無力さにうちひしがれつつも、リア充に負けてたまるか、という闘志は煮えたぎっていきました。



エレベーターから降りると、関係者のワッペンをつけた地味な青年に、待合室の中へと案内されました。

待合室の中には、オーディション参加者たちが所狭しとひしめき合っています。


ゾゾタウンの社長っぽい人。

スパイダーマンの服を着た塩顔。

床に横たわるドリュードレッシェル。

バスケットマン。

陸上選手。

いかにも体力だけが取り柄ですという顔をした人。

野性味溢れる風来坊。

原色だらけの強烈な服を着た中性顔で金髪のカラフル野郎。


ぼくもそのメンバーの中に混じり、来たるべき決戦の刻を待ったのです。


5分後。

ぼくは目をつむって精神集中をしていましたが、前方のざわつきが気になってしまいます。

目をカッと見開くと、視線の先は、金髪のカラフル野郎が、可愛い女の子といちゃついていたのです。

2人は初対面のようでしたが、カラフル野郎の柔和な雰囲気を女の子は気に入っているようです。


「ここをどこやと思ってるねん!いちゃつかんとSASUKEに集中しろよ!」

そう叫びたい気持ちがありましたが、その気持ちは胸の奥にしまいます。


25歳にして、嫉妬心を抑える術を会得したのです。

モテない男の僻みでしかありませんが、怒りのエネルギーは溜まるばかりでした。
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