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4章 選挙と特訓
6、市長は憔悴
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長元組の行動は早かった。
SNSのプロフェッショナル集団と探偵事務所に四万十市の政治家たちの動向を探らせて、彼らの弱みを握ったのだ。その情報を秘匿することと引き換えに、自分たちの傘下に入ることを促すと、政治家たちは面白いように長元組に従った。
金だけではなく`情報`を活用した長元組は、既存の政治家を買収していく。その中には、市内に幅広い人脈を持った市政経験者も含まれていた。
そしてほどなく、長元組の傀儡となった数名の政治家たちは、地方政党「土佐勤王党」を結成した。
長元組と彼らの支援者は続いて、土佐勤王党を宣伝するビラ作成に取り掛かっていた。
勇の父は話を切り出した。
「まだまだ土佐勤王党の認知度は低い。さらに勢力を拡大して、今回の選挙で圧勝するためにも、ビラを配り、ネット上に広告を貼り出し、認知度を上げなければならない。
選挙は政治哲学や判断プロセスを市民に問うものだが、市長のマニフェストなんて大体みんなが同じこと書いているんだ。だからこそ、シンプルな方策を打ち出すべきだ。
だから俺は、政治家と公務員の給与のカットによる住民税減税を大きく打ち出したい」
「そんなことすれば、当選したとしても市の職員や政治家から反感を食らって、政治が回りませんよ?」
「わかってる。だからこそこれはあくまで公約だ。国会議員だってそうだろ?定数削減なんて一向に実施されやしない。マニフェストの実行に法的制限はないんだ。
だからこそ、まずは勝てればいい。市民に耳障りのいい公約を掲げたほうが勝ちやすいからな」
そして長元組は、資金の大半を使ってビラを作成した。
大々的に打ち出した住民税減税の項目に隠れてはいたが、そこには小さな字で、「暴力団廃止条例の廃止・緩和」と書かれていた。
これこそが彼らの真の目的だった。長元組は政治を良くしようとは思っていない。ただ、自分たちの暴力団を存続させるために政治を利用しようとしているのだ。
だが、彼らだけが責められるべきなのだろうか。国の中枢にいる政治家でさえ、政治を私物化しているのだから。
長元組たちは本気だった。ポスティング業者には頼まず、自分たちで四万十市内の家を訪れ、一軒ずつビラを配っていった。
ビラだけではなく、大きなアドバルーンを空に打ち上げた。
「土佐勤皇党が、四万十市の政治を変える!」
これらの宣伝は、市長選挙にどのような影響を与えるのだろうか。
―――――――――――――――――
メディアの報道と市役所への抗議の電話によって、山内元市長は憔悴しきっていた。
また、資金不足のため、出直し選挙に出馬しても当選の見込みは少なかった。
そんな彼を救ったのは、市民だった。
市内の主婦と福祉関係者らの団体は、山内元市長の出馬を求めた署名約3000人分を集めて、彼が出席した集会で後援会幹部に手渡したのだ。
この団体は、真実を見抜いていた。山内元市長のここまで約7年の政治がいかに市民に寄り添ったものか。そして、今回の報道が悪意に満ち溢れたものだということに。
山内元市長はこの署名に涙した。
「きちんと要請への返事をしたい」と述べ、後日、正式に立候補を伝えた。
もちろんこのことは雪にとっても嬉しい出来事だった。メディア報道に踊らされず、自分の父の政治手腕を認めてくれる人は大勢いたのだ。
結局、元市長の山内氏、長元組が擁立した元県議の新浜氏、無所属の中岡の3人が立候補を表明した。
選挙まで残り10日。果たして、市長選挙の結果は如何に。
SNSのプロフェッショナル集団と探偵事務所に四万十市の政治家たちの動向を探らせて、彼らの弱みを握ったのだ。その情報を秘匿することと引き換えに、自分たちの傘下に入ることを促すと、政治家たちは面白いように長元組に従った。
金だけではなく`情報`を活用した長元組は、既存の政治家を買収していく。その中には、市内に幅広い人脈を持った市政経験者も含まれていた。
そしてほどなく、長元組の傀儡となった数名の政治家たちは、地方政党「土佐勤王党」を結成した。
長元組と彼らの支援者は続いて、土佐勤王党を宣伝するビラ作成に取り掛かっていた。
勇の父は話を切り出した。
「まだまだ土佐勤王党の認知度は低い。さらに勢力を拡大して、今回の選挙で圧勝するためにも、ビラを配り、ネット上に広告を貼り出し、認知度を上げなければならない。
選挙は政治哲学や判断プロセスを市民に問うものだが、市長のマニフェストなんて大体みんなが同じこと書いているんだ。だからこそ、シンプルな方策を打ち出すべきだ。
だから俺は、政治家と公務員の給与のカットによる住民税減税を大きく打ち出したい」
「そんなことすれば、当選したとしても市の職員や政治家から反感を食らって、政治が回りませんよ?」
「わかってる。だからこそこれはあくまで公約だ。国会議員だってそうだろ?定数削減なんて一向に実施されやしない。マニフェストの実行に法的制限はないんだ。
だからこそ、まずは勝てればいい。市民に耳障りのいい公約を掲げたほうが勝ちやすいからな」
そして長元組は、資金の大半を使ってビラを作成した。
大々的に打ち出した住民税減税の項目に隠れてはいたが、そこには小さな字で、「暴力団廃止条例の廃止・緩和」と書かれていた。
これこそが彼らの真の目的だった。長元組は政治を良くしようとは思っていない。ただ、自分たちの暴力団を存続させるために政治を利用しようとしているのだ。
だが、彼らだけが責められるべきなのだろうか。国の中枢にいる政治家でさえ、政治を私物化しているのだから。
長元組たちは本気だった。ポスティング業者には頼まず、自分たちで四万十市内の家を訪れ、一軒ずつビラを配っていった。
ビラだけではなく、大きなアドバルーンを空に打ち上げた。
「土佐勤皇党が、四万十市の政治を変える!」
これらの宣伝は、市長選挙にどのような影響を与えるのだろうか。
―――――――――――――――――
メディアの報道と市役所への抗議の電話によって、山内元市長は憔悴しきっていた。
また、資金不足のため、出直し選挙に出馬しても当選の見込みは少なかった。
そんな彼を救ったのは、市民だった。
市内の主婦と福祉関係者らの団体は、山内元市長の出馬を求めた署名約3000人分を集めて、彼が出席した集会で後援会幹部に手渡したのだ。
この団体は、真実を見抜いていた。山内元市長のここまで約7年の政治がいかに市民に寄り添ったものか。そして、今回の報道が悪意に満ち溢れたものだということに。
山内元市長はこの署名に涙した。
「きちんと要請への返事をしたい」と述べ、後日、正式に立候補を伝えた。
もちろんこのことは雪にとっても嬉しい出来事だった。メディア報道に踊らされず、自分の父の政治手腕を認めてくれる人は大勢いたのだ。
結局、元市長の山内氏、長元組が擁立した元県議の新浜氏、無所属の中岡の3人が立候補を表明した。
選挙まで残り10日。果たして、市長選挙の結果は如何に。
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