7 / 8
第7話 タブレット
しおりを挟む
その夜、颯太はまだ眠ったままだ。
どれだけ弱っているんだよ……。
これじゃ点滴も外せない。
一度は導尿した。
でも留置カテーテルを入れるとトイレに行けなくなるから、また颯太が困った状態になる。
今の彼は起き上がることすら難しいし、点滴をしている分、尿意も近くなる。
かといって、このままでは排便の兆候もない。
お腹が弱って眠り続けているんだ。
……もう限界だ。
病院なら三日出なかったら、もう“決着”をつけるところだ。
肩を軽く叩いた。
うっすらと目を開けたが、まだぼんやりしている。
「颯太ね。今の状態で排便できる?
無理なら、楽にしてあげるよ」
ぼーっと天井を見つめていたが、だんだん目尻に涙が溜まってきた。
泣かせたいわけじゃない。ティシュで目元を拭いてあげた。
「本当は身体が弱ってるから、留置カテーテルを入れてトイレに行かなくて済むようにしてあげたいんだけど……
それだと出しにくいでしょう?
でも今日で五日くらい出てないよね?
身体に悪いから、今から決着をつけよう」
掛け布団で顔を隠し、しばらくしてから小さく頷いた。
なるべく出しやすいように手伝って、トイレへ連れて行く。
「苦しかったらドアを叩いてね」
ドアのすぐそばで待機した。
……10分経っても出てこない。
倒れてないか?
「颯太、大丈夫? 開けるよ」
そっと開けると、後ろにもたれかかったまま泣いていた。
「どうした? 苦しい? 出ない?」
頷く。
そこから二人で格闘すること30分。
なんとか無事に終わった。ふう……。
普通の入院患者みたいに、三日目で決着つけるべきだった。
甘い同情心はやめよう。
今度から冷酷な医者になるぞ……。
颯太は布団を頭からかぶって泣いているようだった。
疲れ切ってしまったんだろう。
甘いものでも飲ませるか。
「颯太、ココアでも飲む?」
微かに頷いた。
「じゃあ、作ってくるね」
温かいココアに、チョコレートも溶かして入れた。
絶対おいしい。水も一緒に持って来た。
「颯太、できたよ。甘くしたから飲んで」
泣いていたことには気づかないふりをして、上半身を起こし、背中に枕を入れてあげた。
少しずつココアを飲んでいる。よかった。
……そうだ、忘れてた。タブレットだ!
玄関に置きっぱなしだった箱を急いで取ってきた。
「颯太、これプレゼントだよ」
タブレットを見せると、ぱっと嬉しそうな表情で俺を見つめた。
「うれしい?」
まるで押し売りみたいだな。
でも、笑顔で何度も頷いてくれた。
タブレットを充電器につなぐ。
「Wi-Fiにつなぐから待っててね」
ルーターの番号とパスワードを写真に撮ってきて、携帯を渡す。
「これが番号とパスワード。
ついでに俺のLINEも登録してね」
颯太の携帯はうちの充電器とサイズが合う。
タブレットと一緒に充電につないだ。
見ていると――早い。
思わず見とれてしまった。
え?
何このタイピング速度。
「颯太、打つのめちゃくちゃ早いね。すごいよ!」
ニヤッと笑った。
ふふ、俺なんか全然かなわない。
そうか……颯太はパソコンも得意なんだろうな。
きっとそうだ。
よし、これでコミュニケーションはばっちりだ。
どれだけ弱っているんだよ……。
これじゃ点滴も外せない。
一度は導尿した。
でも留置カテーテルを入れるとトイレに行けなくなるから、また颯太が困った状態になる。
今の彼は起き上がることすら難しいし、点滴をしている分、尿意も近くなる。
かといって、このままでは排便の兆候もない。
お腹が弱って眠り続けているんだ。
……もう限界だ。
病院なら三日出なかったら、もう“決着”をつけるところだ。
肩を軽く叩いた。
うっすらと目を開けたが、まだぼんやりしている。
「颯太ね。今の状態で排便できる?
無理なら、楽にしてあげるよ」
ぼーっと天井を見つめていたが、だんだん目尻に涙が溜まってきた。
泣かせたいわけじゃない。ティシュで目元を拭いてあげた。
「本当は身体が弱ってるから、留置カテーテルを入れてトイレに行かなくて済むようにしてあげたいんだけど……
それだと出しにくいでしょう?
でも今日で五日くらい出てないよね?
身体に悪いから、今から決着をつけよう」
掛け布団で顔を隠し、しばらくしてから小さく頷いた。
なるべく出しやすいように手伝って、トイレへ連れて行く。
「苦しかったらドアを叩いてね」
ドアのすぐそばで待機した。
……10分経っても出てこない。
倒れてないか?
「颯太、大丈夫? 開けるよ」
そっと開けると、後ろにもたれかかったまま泣いていた。
「どうした? 苦しい? 出ない?」
頷く。
そこから二人で格闘すること30分。
なんとか無事に終わった。ふう……。
普通の入院患者みたいに、三日目で決着つけるべきだった。
甘い同情心はやめよう。
今度から冷酷な医者になるぞ……。
颯太は布団を頭からかぶって泣いているようだった。
疲れ切ってしまったんだろう。
甘いものでも飲ませるか。
「颯太、ココアでも飲む?」
微かに頷いた。
「じゃあ、作ってくるね」
温かいココアに、チョコレートも溶かして入れた。
絶対おいしい。水も一緒に持って来た。
「颯太、できたよ。甘くしたから飲んで」
泣いていたことには気づかないふりをして、上半身を起こし、背中に枕を入れてあげた。
少しずつココアを飲んでいる。よかった。
……そうだ、忘れてた。タブレットだ!
玄関に置きっぱなしだった箱を急いで取ってきた。
「颯太、これプレゼントだよ」
タブレットを見せると、ぱっと嬉しそうな表情で俺を見つめた。
「うれしい?」
まるで押し売りみたいだな。
でも、笑顔で何度も頷いてくれた。
タブレットを充電器につなぐ。
「Wi-Fiにつなぐから待っててね」
ルーターの番号とパスワードを写真に撮ってきて、携帯を渡す。
「これが番号とパスワード。
ついでに俺のLINEも登録してね」
颯太の携帯はうちの充電器とサイズが合う。
タブレットと一緒に充電につないだ。
見ていると――早い。
思わず見とれてしまった。
え?
何このタイピング速度。
「颯太、打つのめちゃくちゃ早いね。すごいよ!」
ニヤッと笑った。
ふふ、俺なんか全然かなわない。
そうか……颯太はパソコンも得意なんだろうな。
きっとそうだ。
よし、これでコミュニケーションはばっちりだ。
4
あなたにおすすめの小説
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた静。
生きる意味を失いかけた彼の前に現れたのは、眩しい太陽のような青年天輝玲。
玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
玲に対する信頼は一気に憎悪へと変化する。
それから十年。
かつて自分を救った玲に同じ絶望を味わわせるために静は玲と再会をする。
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる