歌えなくなったオメガを匿った夜から、ふたりの秘密が始まった

スピカナ

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第23話 熱がある日は

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   颯太は鎮静剤のおかげで、安らかに眠れているようだ。
ほっと胸を撫で下ろした。
颯太に泣かれるのは、本当に堪える。

そっとベッドを離れ、台所で冷たくなった粥を温めて食べた。
これを颯太に食べさせてやれなかったな……。
明日こそ食べさせよう。

台所を片付け、シャワーを浴びたあと、蒸しタオルを用意して
颯太の顔と手を拭いてやった。
うなされて汗をかいていた。かわいそうに……。
明日の朝は全身を拭いてやろう。

涙が目尻に溜まっていたので、親指でそっと拭った。
柔らかい髪を指先で梳く。なんて柔らかいんだ。
頬にそっとお休みのキスをして――
「よく眠るんだよ」
小さな声でささやき、寄り添うように休んだ。



翌朝、颯太はまだ眠っていた。
熱を測ると37度8分。
昨日よりはましだが、まだ熱がある。

汗をかいただろう。
蒸しタオルをたくさん作り、冷えないようにバスタオルをかけながら全身を拭いた。

買ったばかりの白いガウンタイプの寝間着があって助かった。
2枚買った俺は偉い。もっと買っても良かったな。
それにしても、前開きのタンクトップみたいな肌着ってないかな?
探してみよう。肌触りが良いと思う。

そろそろ水を飲ませたいが、どうしたものか。
点滴は続けているし、解熱剤を入れても大して下がらない。
普通なら朝には熱が引いているはずだ。
オメガの身体はこんなに弱いのか。

一般的にもオメガの寿命は短い。
うちの母は女性のオメガだが、恵まれているからまだ元気だ。
アルファの子供を3人産んだので、父も祖父母も大喜びだった。

しかし、こんなにぐっすり眠っていると席を外せない。
目覚めた時に一人ではかわいそうだ。
看護部長にメールした。
「午前中は自宅で事務仕事をします。
うちで預かっている子の具合が悪いので、オンコールでお願いします」

とにかく点滴を続け、自然に目覚めるのを待とう。
身体を拭いてもびくともしなかったな。(笑)

何か口当たりのいいデザートを作ろう。
牛乳寒天にしよう。ミカンの缶詰を入れて。
あれは組み合わせが絶妙だ。ミカンの酸味がちょうどいい。

作って冷やし、また颯太の様子を見に行った。
一緒のベッドに入り、そっと腕枕をしてやる。
あ、点滴をしていると寝返りが打てない。

少し外してやろう。仰向けばかりは良くない。
点滴を外し、身体を横向けにさせた。
そして俺もベッドに入り、また腕枕をした。

ふっ……結局俺がしたいんだな。
かわいくてたまらない。
そのまま目を閉じた。



どれくらい経っただろう。
目を開けると、颯太が俺を見つめていた。
「起きてたの?」
頷く。
「お水飲む?」
また頷く。

そっとベッドを離れ、颯太の頭を少し持ち上げ、
あごにタオルを当てて吸い飲みで飲ませた。
「もっと飲む?」
ううん、と小さく首を振る。

「お粥があるけど食べる?中華風の海鮮粥にしたんだけど、食べられるかな?」
少し頷いた。

「じゃあ持ってくるね。でも無理しないで、食べられる分だけでいいからね」
上半身を起こし、背中に枕を当てる。

粥を温め、れんげを持たせた。
少しずつすくって食べている。

「颯太、食べさせてあげようか?」
ぷっと笑って、俺を睨む。

「また甘やかしすぎ?」
うんうん、と頷く。

「俺さ、最近颯太のことをものすごく甘やかしたいんだよね。もう趣味になっちゃった」
また力なく笑う。
“もう~しょうがないなあ~”と言いたげだ。

食べている颯太を見つめるのが好きだ。
途中でちらっと俺を見る。
俺がニタニタしているから、颯太もニコッとする。

「無理に全部食べなくていいよ。牛乳寒天も作ったんだけど、食べる?」
うんうん、と頷く。
「よし、持ってくるね」

冷蔵庫を開けると、ちゃんと固まっていた。
青い切子ガラスの器に盛る。
白い寒天とミカンの色が映えてきれいだ。
食欲が出るかな?

トレーに乗せて目の前に出すと、
はっ、と嬉しそうに俺を見た。
「いいよ。お粥はやめて、こっち食べて」

すると......すぐ寒天に乗り換えた。笑ってしまう。
お粥は下げることにした。
作って良かったな‥‥‥。

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