42 / 83
第42話 会長室内の個室
しおりを挟む
昨日、颯太を連れ帰って以来、ずっと寝込んだままだった。
よほどショックが大きかったのだろう。
人からあんなふうに罵られるなんて、颯太にとっては恐らく生まれて初めての経験だ。
それだけじゃない。
あの女性は、颯太の“存在そのもの”を憎んでいた。
この世に生まれてきて自分の存在を全否定されるなんて、十八歳の子どもにはあまりにも酷い。
今日はもちろん休ませるつもりだったが、山川弁護士からメールが届いた。
秘書の上川さんと相談し、颯太がもっとゆっくり休めるように、会長室内に個室を作ることにしたという。
将来のことを考え、オメガである颯太が急にヒートを迎えた場合の避難場所としても必要だと判断したらしい。
個室は防音仕様で、窓はあるが会長室内でも人目に触れない造りにするとのこと。
ドアには鍵も付けるという。
さらにリラックスできるよう、部屋着やパジャマを持ってきてほしいと頼まれた。
……めちゃくちゃ気を使ってくれている(笑)
まあ、普通あれだけの大企業で“会長がオメガ”なんてことは絶対にない。
重役だって全員アルファだ。
フェロモンが漏れないようにしないといけないし、会社の中であっても襲われる危険はある。
だからこそ、避難できる個室は必要なのだ。
さらに、冷蔵庫や電子レンジ、電気ポットも個室内に置くという。
ああ……俺がいつも颯太のお腹を温湿布していると言ったからだろう。
別にあそこに住むわけじゃないけどね。
まあ、将来どうなるかは分からないが、颯太に最大限居心地よく過ごしてほしいという気持ちがありがたい。
あれ? 颯太がぼーっとした顔で起きてきた。
「颯太、おはよう。どうしたの?」
すぐにタブレットを打つ。
<おはようございます。今日は仕事に行かなくていいのですか?>
「うん、しばらく休んでいいんだって。
今、会長室に防音の個室を作ってるところだって。
すごいものができるかもよ。
ドアに鍵も付くし、将来ヒートが来たときの避難場所にもなる。
ありがたいよね。颯太のために作ってくれてるんだよ」
<え?……俺のためにそんなことまでしてもらったら申し訳ないよ>
「いいんだよ。ある意味当然だよ。
会長の身体を守ることが一番大事なんだから。
ヒートが来てフェロモンが漏れたら、会社内でも危ない。
だから避難場所が必要なんだよ」
<そうなんですね>
「それにね、冷蔵庫も電子レンジ、電気ポットまで置いてくれるらしいよ。
もう下宿仕様だね」
颯太がくすっと笑った。
「あとね、パジャマや部屋着も持ってきてほしいって。
スーツのままじゃ横になれないし、疲れるだろうって気を使ってくれたんだよ」
「颯太はまだ十八歳なんだから、十八歳らしくしていいんだよ。
面倒なことは全部、山川弁護士にお願いしよう」
またふふっと笑って、うんうんと頷いた。
「ご飯食べる?」
頷く。<少し>と表示された。
「オムレツとドリンクは? スープいる?」
<卵は一個でいいです。あまり食欲がないんです>
「OK。座ってて。先にドリンク持ってくるね。
そうだ、バナナジュース飲む?」
頷いた。やっぱり子供だな。
でもバナナジュースは栄養があるし、力もつくから賛成だ。
パンはなくてもいい。卵とバナナで十分だ。
先にバナナジュースを作って出すと、颯太はニヤッとして飲み、
“美味しい”の手話をしてくれた。
よしよし。
「体調はどう?」
う~ん……と首をかしげる。
「無理しないで。しばらく休みなんだから、寝るか、気分転換にどこか行くかにしよう」
オムレツができたので、プチトマトを二個添えて出した。
食べられるかな。
そこへメールが届いた。楓からだ。
<お昼時間を抜け出して、みんなで行くからよろしく>
……は?
お昼ご飯作れってこと? 多分そうだな。
「颯太、お昼ご飯に家族みんなで来るらしいよ」
クスクス笑っている。
「何作ったらいいと思う?」
テーブルのメニュー表を見ていた颯太がタブレットを打つ。
<ピザは? ウーバーイーツで>
「あ、颯太、ナイスアイデア!」
頭をよしよしと撫でると、ふふふと笑った。
時間指定で注文し、ドリンクも一緒に頼んだ。
やっぱりピザには炭酸系だよね。
よほどショックが大きかったのだろう。
人からあんなふうに罵られるなんて、颯太にとっては恐らく生まれて初めての経験だ。
それだけじゃない。
あの女性は、颯太の“存在そのもの”を憎んでいた。
この世に生まれてきて自分の存在を全否定されるなんて、十八歳の子どもにはあまりにも酷い。
今日はもちろん休ませるつもりだったが、山川弁護士からメールが届いた。
秘書の上川さんと相談し、颯太がもっとゆっくり休めるように、会長室内に個室を作ることにしたという。
将来のことを考え、オメガである颯太が急にヒートを迎えた場合の避難場所としても必要だと判断したらしい。
個室は防音仕様で、窓はあるが会長室内でも人目に触れない造りにするとのこと。
ドアには鍵も付けるという。
さらにリラックスできるよう、部屋着やパジャマを持ってきてほしいと頼まれた。
……めちゃくちゃ気を使ってくれている(笑)
まあ、普通あれだけの大企業で“会長がオメガ”なんてことは絶対にない。
重役だって全員アルファだ。
フェロモンが漏れないようにしないといけないし、会社の中であっても襲われる危険はある。
だからこそ、避難できる個室は必要なのだ。
さらに、冷蔵庫や電子レンジ、電気ポットも個室内に置くという。
ああ……俺がいつも颯太のお腹を温湿布していると言ったからだろう。
別にあそこに住むわけじゃないけどね。
まあ、将来どうなるかは分からないが、颯太に最大限居心地よく過ごしてほしいという気持ちがありがたい。
あれ? 颯太がぼーっとした顔で起きてきた。
「颯太、おはよう。どうしたの?」
すぐにタブレットを打つ。
<おはようございます。今日は仕事に行かなくていいのですか?>
「うん、しばらく休んでいいんだって。
今、会長室に防音の個室を作ってるところだって。
すごいものができるかもよ。
ドアに鍵も付くし、将来ヒートが来たときの避難場所にもなる。
ありがたいよね。颯太のために作ってくれてるんだよ」
<え?……俺のためにそんなことまでしてもらったら申し訳ないよ>
「いいんだよ。ある意味当然だよ。
会長の身体を守ることが一番大事なんだから。
ヒートが来てフェロモンが漏れたら、会社内でも危ない。
だから避難場所が必要なんだよ」
<そうなんですね>
「それにね、冷蔵庫も電子レンジ、電気ポットまで置いてくれるらしいよ。
もう下宿仕様だね」
颯太がくすっと笑った。
「あとね、パジャマや部屋着も持ってきてほしいって。
スーツのままじゃ横になれないし、疲れるだろうって気を使ってくれたんだよ」
「颯太はまだ十八歳なんだから、十八歳らしくしていいんだよ。
面倒なことは全部、山川弁護士にお願いしよう」
またふふっと笑って、うんうんと頷いた。
「ご飯食べる?」
頷く。<少し>と表示された。
「オムレツとドリンクは? スープいる?」
<卵は一個でいいです。あまり食欲がないんです>
「OK。座ってて。先にドリンク持ってくるね。
そうだ、バナナジュース飲む?」
頷いた。やっぱり子供だな。
でもバナナジュースは栄養があるし、力もつくから賛成だ。
パンはなくてもいい。卵とバナナで十分だ。
先にバナナジュースを作って出すと、颯太はニヤッとして飲み、
“美味しい”の手話をしてくれた。
よしよし。
「体調はどう?」
う~ん……と首をかしげる。
「無理しないで。しばらく休みなんだから、寝るか、気分転換にどこか行くかにしよう」
オムレツができたので、プチトマトを二個添えて出した。
食べられるかな。
そこへメールが届いた。楓からだ。
<お昼時間を抜け出して、みんなで行くからよろしく>
……は?
お昼ご飯作れってこと? 多分そうだな。
「颯太、お昼ご飯に家族みんなで来るらしいよ」
クスクス笑っている。
「何作ったらいいと思う?」
テーブルのメニュー表を見ていた颯太がタブレットを打つ。
<ピザは? ウーバーイーツで>
「あ、颯太、ナイスアイデア!」
頭をよしよしと撫でると、ふふふと笑った。
時間指定で注文し、ドリンクも一緒に頼んだ。
やっぱりピザには炭酸系だよね。
14
あなたにおすすめの小説
冷酷なミューズ
キザキ ケイ
BL
画家を夢見て都会へやってきた青年シムは、「体液が絵の具に変わる」という特殊な体質を生かし、貧乏暮らしながらも毎日絵を描いて過ごしている。
誰かに知られれば気持ち悪いと言われ、絵を売ることもできなくなる。そう考えるシムは体質を誰にも明かさなかった。
しかしある日、シムの絵を見出した画商・ブレイズに体質のことがばれてしまい、二人の関係は大きく変化していく。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
そう思って、失恋の悲しみを猫カフェで埋めていたある日のこと。
僕は“彼“に出逢った。
その人は僕に愛を教えてくれる人でした。
失恋の先にある未来では、僕は幸せになっているのかな。
最愛の番になる話
屑籠
BL
坂牧というアルファの名家に生まれたベータの咲也。
色々あって、坂牧の家から逃げ出そうとしたら、運命の番に捕まった話。
誤字脱字とうとう、あるとは思いますが脳内補完でお願いします。
久しぶりに書いてます。長い。
完結させるぞって意気込んで、書いた所まで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる