診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第1章 サテライトオープン

2話 水曜日パニック・1・事務がいない

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 セレモニーが終わった途端、

1階では患者ラッシュだったらしい。

確かに今日は水曜日。

うちの本館は休みで、市内の病院もほとんど休み。

でもセレモニーがあるから混むと思って、あえて今日にしたんだよね。

各病院から先生方に見てもらわないといけないから、わざわざ水曜日にした。

ところが、それが裏目に出た。

宮本看護師長からインカムでヘルプが入った。

「理事と急ぎ1階サテライトの応援に来てください。

患者が多くて無理です」

夏にもすぐ来るようにインカムで呼んだ。

階段を降りていくと、途中でちょうど岩城と川瀬が上ってきているところだった。

「ああ、頼む。急患がいっぱいいるらしい。

二人とも一緒に来てくれないか?」

そしたら、二人とも一緒に駆け下りて来てくれた。

さすが医者だよ。

1階に行くと――何だこのざまは??

大勢の人が長椅子に寝ていたり、立ったままの人も多いし、床に座り込んでいる人も何人もいた。

どこから手を付けるんだ?

師長の泣きが入っていた。

岩城が叫んだ。

「皆さん、私は大学病院の外科医・岩城です。

いまから一番具合の悪い方を教えてください!」

川瀬が「よし、俺がトリアージをするよ」

すると高齢の女性が岩城の服を掴んだ。

「孫の具合が悪くてしゃべれません」

岩城がすぐ診てくれたようだ。

「聴診器を貸して!」ナースが手渡した。

「血圧計を頂戴。今、処置室は空いてるの?」

「ダメです。全部使ってます」

「北原、本館に連れて行こう!外科の処置室があるだろう?」

「よし、分かった。車いすがあるよ」

子供を車いすに乗せて本館への廊下を渡り、ドアの鍵をカードキーで開けた。

すぐ電気とエアコンをつけた。

「奥が外科だから頼む。今ナースを呼ぶよ」

3階に電話して、ナースは全員本館の1階に来るように指示した。

寮母の西村さんも呼び出そう。

すぐ電話がつながった。

「本館の1階の外科に来て。患者がいっぱいなんだ」

サテライトに戻り、

「患者の皆さん、今、本館の1階を開けましたので、そちらへ移動してください。

医師が3人いますから大丈夫ですよ」

そして、ぞろぞろと廊下を渡って1階奥の待合室へ案内した。

その時、救急車が到着。玄関を開けた。

救急車はエレベーターで地下から乗せるようになっている。

エレベーターを動かした。

でも先に玄関から救急隊員が飛び込んできた。

多分、さっきの子供だな。

外科の奥の処置室に行くと、岩城が人工呼吸をしていた。

ああ~申し訳ない‥‥‥交代してやればよかった。

「どうだ?救急車が到着したけど、乗せることができるか?」

「待って、今やばい。AEDを使う。みんな下がって! 1、2、3――バシッ」通電した。

「……__戻ったね!よし、乗せよう。

このまま人工呼吸を続けるから、救急車に乗って行くわ」

「ああ、悪いね。助かったよ。ありがとうね」

「川瀬は置いていくから、こき使って!」 

ふっ、余裕あるな。

そして西村さんや3階のナースたちが駆け付けた。

「すみませ~ん、遅くなりました!」

「じゃあ、患者さんのトリアージして!」

もうこの時点で、患者さんがどう見ても20人以上はいた。

「はい!」西村さんが率先してチェックしてくれた。

川瀬が「俺はどこから見ればいい?」と聞いてきたから、

「外科の診療室を使って! 今、患者さんを送り込むから」

「OK!」

ナースの1人に、川瀬にエプロンか白衣を渡してほしいと頼んだ。

「ああ~事務員が欲しい。誰かいないか?」

3階に誰もいなくなるから、事務を一人置いてきたんだって。

そうだ!うちに一番近い事務の川田麻子さんがいた。電話した。

「休みのところ申し訳ない。

急いで本館の1階の事務に入ってくれないか?

今パニックなんだ。

タクシーを呼んでいいからさ、頼むね」

もう返事も聞かずにガチャっと切ってしまった。

そこで看護部長が慌てたように飛んできた。

「一体何事ですか?」

西村さんがヘルプをしてくれたんだろう。

「見ての通りで、みんなでパニックだよ。

事務頼むよ。今川田さんを呼んだけど、来れるかどうかの返事は聞いてないんだよ」

「わかりました」すぐどっかに電話していた。

とにかく、待ってる患者さんを何とかしないとね。

見た目で具合の悪そうな人から診察をした。

ああ~カルテがない。メモ書きだな。

とりあえずメモ書きを患者本人に

「見えるように持ってて」と渡した。

そうやって1名ずつ診ていると、

先に電話した事務の川田さんが走ってきた!

「すみませ~ん、遅くなりました!」

化粧もせずに髪を振り乱したまま走ってきたようだ。

「ごめんねえ、急に電話して。

すぐ事務に入ってくれない?

どの人も初診の人ばっかりだと思うんだよね」

「はい、分かりました」

その時、電子機器が動き始めたようだ。

タブレットを持ってきてくれた。

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