診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
36 / 431
第2章 外科の未来、その先へ

34話 莉子のアニメセミナー

しおりを挟む
 莉子は今、サテライトの3階で、患者のためのアニメセミナーを週に2回、

みんなで練ったプログラム通りに、順調に進めているようだ。

パソコンは8台だったのを10台に増やした。

木曜日の14時~15時30分と、土曜日の9時~10時39分の2回開催。

これは患者さん用なので、いくつか制約がある。

1. 医療行為(保険適用)
•対象:精神科で処方を受けた患者
•費用:保険診療(自己負担3割など)
•目的:トラウマ治療・心のケア

2. 有料体験希望者向け
 体験型セミナー(有料)

•対象:一般の希望者
•料金:1回8,000円前後(「講演+体験ワークショップ」形式)
•枠:今月は月2回、定員20名程度
•来月からは月1回で限定20名
•月初め土曜日の14時~15時30分のみ開催

•内容:アニメの簡単な描画体験+莉子のデモ+作品鑑賞会
•目的:療法ではなく「莉子の魂に触れる芸術体験」

まあ、決めたはいいけど、莉子の体力が持つかなあ?

40人待ちだから、最初の月だけで消化しようとしている。

桐生さん曰く、「このセミナーで才能ある人が見つけられたらいいですね」と言っていた。

まったく……夏と一緒で抜かりないんだよ。

参加者には最初に、自分の似顔絵をササッと描かせるつもりらしい。

それで才能が分かるんだって。ふ~ん。

俺は入口からこっそりと莉子の様子を見ていた。

そこへ夏が桐生さんと一緒に見に来た。

莉子が気づき、こちらをちらっと見てウィンクをした。えっ?

夏も桐生さんもニヤッとしている。

「任せて」って意味かな? じゃあ、手出し無用だな。


それから俺たちはサテの1階に様子を見に行った。

「理事、昨日カフェで岩城から“ビル云々”って聞かれなかったか?」

理事「もちろん『知らな~い』って言いましたよ。言わなくたって全部わかっちゃってるんだもん。みんな同じこと想像してるよね?」

「うん、そうだね。ミエミエだったね。この業界の人は全員ピンと来てるよ。

それより岩城もだけど、川瀬も“うちに雇ってくれ”って、しょっちゅう言うんだよね。

でも大学病院の院長が手放すわけないんだよ。

特に岩城は手放さない。天才的頭脳だからさ。

でも、どっちか一人が残っても寂しいだろうし、難しいんだよね。

どういう方法なら、二人一緒にうちに呼べるかなあ?」

理事「院長、それはほとんど不可能じゃない? 今、大学病院に行きたい人っている?

だって給料は安いし、シフトはきついしさ。報われないって、みんな思ってるんじゃないかな?

本気出して二人が飛び出してくれるなら、いつでも歓迎だけどね。

そしたら川瀬先生のために産婦人科を作るよ」

「そうだな。一応さ、産婦人科を作れるスペースは確保しておいてほしいんだよね。

外科をメインにするなら、産科を入れて宿直体制にしたって、どうせ同じでしょう?

病室だって作るんだからさ。紛れ込めるようにしたいんだよね」

理事「うん、わかったよ。父に言っとく。でも大学病院は、もっと新手の方法を考えた方がいいんじゃないかな?」

「どんなこと?」

理事「普通は、大学病院から医師を派遣してもらうのに、寄附講座にお金を出すとか、研究費に協力するとかの名目
で、毎年1千万~5千万近く払うんだよ。

でも、うちは全部自前だから、人材を派遣してもらう必要はないよね?」

「え? じゃあどうするの?」

理事「だから、岩城先生と川瀬先生には“駆け落ち”みたいに、自分からすべてを捨ててうちに来てもらわないと、イ
ヤなしがらみができちゃうんだよ。

だからその時は、嫌がらせにも耐えられる“菜の花”になってないとダメだもんね。

多分、父が考えてるのは、そういうことだと思う」

「そうか……じゃあ、“駆け落ちみたいに逃げて来い”って言うしかないのか……」

理事「うん、だからこっちは“恋人”だよね?」

ふふふ……二人で笑った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

月弥総合病院

僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...