診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第4章 菜の花、未来を味わう

71話 ゆとりの日

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 最近、水曜日は一番忙しい日で、仕事が終わるのはいつも深夜24時。

クタクタに疲れてしまう。

 けれど本来、水曜日は莉子の日だ。

一緒に過ごす大切な時間なのに、サテが始まってからはまったく時間が取れなくなってしまった。

 このままではすれ違いになってしまう。週のどこかで、必ず時間を作らなければ。

「半日でいいから仕事を休んで、一緒に出かけようか……。いや、ずっとベッドにいてもいいな」

そんなことを考えていた。

 夜、思い切って莉子に話してみた。

「莉子、サテライトが出来てから水曜日が莉子の日なのに、全然一緒にいられなくてごめんね。

代わりに火曜日はどうかな? 俺も午前だけ仕事して、午後からは一緒に過ごそうと思うんだ」

「春ちゃん、そんなことを考えてたの? 私ももっと春ちゃんと一緒にいたいよ。

でも火曜日を半日で済ませられるかどうか、桐生さんや夏に聞いてみないと分からないなあ」

「そうだね、俺が聞いてみるよ。もし大丈夫だって言われたら、一緒に過ごせる?」

「うん、いいよ」

にっこりとかわいい笑顔を見せてくれた。――よし、決まりだ。


 その後、寝る前に夏がベッドに入ってきた。

「夏、今度から火曜日の午後は莉子を休みにしてもらえないかな?」

「なんで?」

「今までは水曜日が莉子の日だったんだけど、今は水曜が24時まで仕事で……全然時間が取れないから、かわいそうなんだ」

「ふうん、わかった。桐生さんに聞いてみるよ……。でも俺は? 俺は土曜日なんだけど」

「そうなんだよな。土曜は16時に終わるから、ちょっと短いんだよね。

じゃあ仕事が終わったら、そのまま二人で出かけることにしようか?」

 夏はぱっと笑顔になり、胸にしがみついてきた。

「うん、そうする! 絶対だよ」

胸に鼻を押し当て、ぐりぐりとする。

これは夏が好きでよくやる。胸の匂いを吸い込むのがいいんだって。

「いいよ、出かけよう。土曜日は夏の日だもんね」

 夏の髪を指で梳きながら撫でる。さらさらとした、美しい髪だ。

その髪に口づけると、若い匂いがした。

夏は自分から唇を寄せ、むさぼるようにキスを重ねてきた。





 翌日、院長室で桐生さんに相談した。夏も同席している。

「水曜日は24時まで仕事なので、私も木曜にお休みをいただいています」

桐生さんは穏やかに、そして柔らかい微笑みを浮かべながら言った。

「院長も理事も、ぜひ木曜日は完全にお休みください。

山科看護部長も西村看護主任も休まれますし、木曜の本館は花井部長と加納主任が、サテは宮本看護師長にお任せいただければ大丈夫です」

「えっ、本当に? 休んじゃっていいの?」

夏がもうはしゃいでいる。

「もちろんです。働き過ぎてはお二人とも身体を壊してしまいますから。

それに莉子さんは、いつだってお休みいただいていいんですよ。

決まった日でなくても、好きな時に休める契約ですから」

「じゃあ、火曜日の午後は俺と一緒に休んでもいいかな?」

「はい、どうぞ。もちろんですよ」

そう言ってもらえて、思わず笑みがこぼれた。ふふふ。

最近はずっと忙しくて、三人とも余裕をなくしていたから。
 
おかげで木曜日は夏の日にできる。

夏の顔を見ると、ニヤニヤが止まらないようだ。――現金な奴だなあ。

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