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第6章 菜の花寮の大騒動
111話 弁護士の聞き取り調査
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社長から「全面的に応援する」と伝言をもらった。
そして午後には弁護士が来てくれるそうで、それまでに経緯をまとめてほしいと言われた。
桐生さんにまとめをお願いすることにした。
会議室で俺と理事が昨夜の経緯を時系列で思い出して話し、それを録音。
桐生さんがメモを取り、後でAIに要約させるという。おかげで30分後にはもう資料が仕上がっていた。
聞き取り調査には、昨夜の当事者全員が必要だ。
受付にいたのは寮の吉岡誠君と佐藤翔太君。
他のスタッフにも14時に来てもらうようお願いした。
俺が一番問題だと思っているのは次の点だ。
1.麻酔医も病室もない菜の花に、なぜ8か月の妊婦を送ったのか。
2.本来なら、手術入院設備のある病院へ搬送すべきだった。
3・大学の救急で一度は診療したのか? 帝王切開が必要と分かっていて菜の花に送ったのか? ならば麻酔医が同行すべきだった。
4.それが無理でも、あとから麻酔医を派遣すべきだった。
5.妊婦の容態が悪く、うちから他院に送る時間はなかった。
6.佐久間医師が全身麻酔を引き受けてくれたから助かったが、個人の裁量に頼るのは大きなリスクだ。
大学病院とは何の協定もないのだから。
7.急な依頼でスタッフのシフトは乱れ、予定外に医師が診療を休む事態となり、徹夜に至った。
これは病院としての損失だ。
――言いたいことは山ほどある。
*
約束の14時、弁護士の岡田雄二先生が来てくれた。
とても柔和で穏やかな印象だ。
岡田「今回は大変でしたね。社長から依頼を受けていますので、全面的に協力いたします」
全員が順に聞き取り調査に協力してくれた。
終了した人から戻っていき、最後に川瀬先生だけ残った。
「岡田先生、少し休まれませんか? 甘いものはお好きですか? ケーキがありますが」
岡田「ああ、ありがたい。私は甘いものに目がなくてね」
理事がうなずいて用意してくれた。
岡田「書類は大体揃いました。ただ、大学病院には早めに時間を取っていただきたい。今から電話しますか? 明日の朝にしますか?」
院長「実は私が心配しているのは、明日からの川瀬医師の立場です。病院側は当然彼に事情を聞くでしょう。しかし圧力をかけられたり、仕事がしにくくなる心配はないでしょうか?」
川瀬「あ、すみません。途中ですが一言。
私は病院からの派遣じゃないんです。水曜日を休みにしてもらっただけで、勝手に菜の花で働いています。病院長も承知しています。
もちろん佐久間先生がここに来たのは有名な話で、病院関係者なら誰でも知っています。
私は来年3月に大学を辞めて菜の花に移ることを病院長も了承済みです。
今さら圧力をかけられても構いません。むしろ、早く菜の花に来られてうれしいくらいです。いいチャンスですよ」
みんなでくすくす笑った。
岡田「それは頼もしい。私もやりやすくなりました。では今から病院長に電話しましょう。お聞きいただいて結構です。向こうも調査が必要でしょうから」
岡田弁護士はその場で病院長に電話した。
桐生さんが頷き、すぐ録音を開始する。
岡田「菜の花病院に搬送された帝王切開患者の件について、医療安全上の重大な懸念がございます。
特に麻酔科医不在の状況下での搬送判断について、貴院の責任の所在を確認したく、正式な協議の場を設けたいと考えております。
現場の状況を貴院でも調査いただき、今後の連携体制の見直しを含めて誠実にご対応くださいますようお願い申し上げます」
――胸がすっとした。思わずみんなで拍手してしまった。
岡田弁護士も笑っていた。
病院からの返事は翌々日。
ただし患者はその日の午後、救急車で大学病院に搬送されていった。
本当に、ほっとした。
スタッフにはただ「お疲れさま」としか言えなかった。
そして午後には弁護士が来てくれるそうで、それまでに経緯をまとめてほしいと言われた。
桐生さんにまとめをお願いすることにした。
会議室で俺と理事が昨夜の経緯を時系列で思い出して話し、それを録音。
桐生さんがメモを取り、後でAIに要約させるという。おかげで30分後にはもう資料が仕上がっていた。
聞き取り調査には、昨夜の当事者全員が必要だ。
受付にいたのは寮の吉岡誠君と佐藤翔太君。
他のスタッフにも14時に来てもらうようお願いした。
俺が一番問題だと思っているのは次の点だ。
1.麻酔医も病室もない菜の花に、なぜ8か月の妊婦を送ったのか。
2.本来なら、手術入院設備のある病院へ搬送すべきだった。
3・大学の救急で一度は診療したのか? 帝王切開が必要と分かっていて菜の花に送ったのか? ならば麻酔医が同行すべきだった。
4.それが無理でも、あとから麻酔医を派遣すべきだった。
5.妊婦の容態が悪く、うちから他院に送る時間はなかった。
6.佐久間医師が全身麻酔を引き受けてくれたから助かったが、個人の裁量に頼るのは大きなリスクだ。
大学病院とは何の協定もないのだから。
7.急な依頼でスタッフのシフトは乱れ、予定外に医師が診療を休む事態となり、徹夜に至った。
これは病院としての損失だ。
――言いたいことは山ほどある。
*
約束の14時、弁護士の岡田雄二先生が来てくれた。
とても柔和で穏やかな印象だ。
岡田「今回は大変でしたね。社長から依頼を受けていますので、全面的に協力いたします」
全員が順に聞き取り調査に協力してくれた。
終了した人から戻っていき、最後に川瀬先生だけ残った。
「岡田先生、少し休まれませんか? 甘いものはお好きですか? ケーキがありますが」
岡田「ああ、ありがたい。私は甘いものに目がなくてね」
理事がうなずいて用意してくれた。
岡田「書類は大体揃いました。ただ、大学病院には早めに時間を取っていただきたい。今から電話しますか? 明日の朝にしますか?」
院長「実は私が心配しているのは、明日からの川瀬医師の立場です。病院側は当然彼に事情を聞くでしょう。しかし圧力をかけられたり、仕事がしにくくなる心配はないでしょうか?」
川瀬「あ、すみません。途中ですが一言。
私は病院からの派遣じゃないんです。水曜日を休みにしてもらっただけで、勝手に菜の花で働いています。病院長も承知しています。
もちろん佐久間先生がここに来たのは有名な話で、病院関係者なら誰でも知っています。
私は来年3月に大学を辞めて菜の花に移ることを病院長も了承済みです。
今さら圧力をかけられても構いません。むしろ、早く菜の花に来られてうれしいくらいです。いいチャンスですよ」
みんなでくすくす笑った。
岡田「それは頼もしい。私もやりやすくなりました。では今から病院長に電話しましょう。お聞きいただいて結構です。向こうも調査が必要でしょうから」
岡田弁護士はその場で病院長に電話した。
桐生さんが頷き、すぐ録音を開始する。
岡田「菜の花病院に搬送された帝王切開患者の件について、医療安全上の重大な懸念がございます。
特に麻酔科医不在の状況下での搬送判断について、貴院の責任の所在を確認したく、正式な協議の場を設けたいと考えております。
現場の状況を貴院でも調査いただき、今後の連携体制の見直しを含めて誠実にご対応くださいますようお願い申し上げます」
――胸がすっとした。思わずみんなで拍手してしまった。
岡田弁護士も笑っていた。
病院からの返事は翌々日。
ただし患者はその日の午後、救急車で大学病院に搬送されていった。
本当に、ほっとした。
スタッフにはただ「お疲れさま」としか言えなかった。
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