診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第12章 夏デビューへ

237話 大人になるということ

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 昼食に帰宅した。桃香も夏休みで、そろそろ塾から帰ってくる頃だ。

莉子が冷茶を淹れてくれた。

「桃香がまだ帰って来ないのよ」

「うん? 遅いね」もう12時を過ぎていた。

いつもならとっくに帰ってくる頃なんだけど……。

そこへ、なんだかしょんぼりとした様子の桃香が帰って来た。

そしてうつむいたまま、パーッと自分の部屋に行った。

驚いて莉子と思わず顔を合わせた。

莉子がすぐ桃香の部屋に行った。

しばらくすると、莉子は微妙な表情で戻って来た。

「桃香はどうしたの?」

うふふふ……と頬笑んでいた。

「なあに?」

「あのね、桃香が女の子になっちゃった」

……マジか。信じられん。

「それで今どうしてるの?」

「寝てる。びっくりしたんじゃないの?」

ああ~なんだかなあ。頭を抱えた。すぐには受け入れられない。

夏が聞いたら、多分熱を出すな。ははっ。

「じゃあ、ご飯はどうするの?」

「あとで何か持って行くよ」

「今俺が行ったら駄目だよね?」

「絶対ダメ」ふっ、そうか。男親は寂しいもんだな。

そこへ、夏がボーカルレッスンを終えて帰って来た。

「あれ? 桃は?」

俺が”言ってよ”とばかりに、莉子にちょっと顎をしゃくった。

そしたら、”いや~よ~”と首を横にふったので、じゃあ、どうするよ……?

夏「すみませんけど、全然分かんないですけど、桃はどうしたんですか?」

しょうがないから、<menses>とメモ紙に書いた。

「これがショックで寝てるみたいよ」

すると夏は両手で顔を覆った。ぷぷ。

「あー、そっちもショックみたいだな。ご飯食べれるか?」

「一応食べる」

ぷーっと莉子と一緒に吹き出した。

その後は、3人で食事を取った。

「デザートは食べるか?」

「食べる」と二人とも返事をしたから、大人は大丈夫そうだな。

冷凍いちごにミルクとお砂糖をかけたものを出した。

これは、だんだんイチゴが解けてくるので、それをつぶしながら混ぜて食べる。
ミキサーにかけてもいいんだけど、あとでミキサーを洗うのが面倒。
結構、つぶしながら食べるのも楽しいし、それも美味しいんだよね。

ガラスの器にいちごをいっぱい入れて食べると、冷たくて身体中がすっきりする。
真夏の楽しいデザートだ。

「夏、今日のボーカルレッスンはどうだったの?」

「うん、なんとかね。よく分かんないよ。コンサートではなんで歌えたのか?全然分かんないよ」

「へえ~そうなんだ。まあ、長く続ければ、そのうちに華が開くよ」


それでも表情が冴えない。慰めがあまり耳に入っていない。

「夏、歌も芸術なんだから、簡単には制覇できないんじゃないの?」

「うん、そうだよね。ゲームとは違うもんね……」

「疲れたなら、あとで少し休めば?」

「うん。お兄さんはどうするの?」

「お兄様はお仕事ですよ」

莉子がぷーっと吹き出した。


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