診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第15章 進むべき道へ

282話 作詞家・北原莉子

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 今朝の朝食に、莉子がニコニコしてやって来た。

……なんだろう? 不気味だ。

莉子「な~つ~、できたんだけど……」

手に持った紙をひらひらさせている。

夏「はっ? 何が?」

莉子「作詞ができたんでございますのよ」

「えーー??」二人で声を揃えた。

夏「だってさ、昨日の今日だよ? 怪しい……。どうやって作ったんだよ?」

莉子「私の好きな歌の歌詞をメモして、大体同じ文字数になるように書いたんだよ。どう?」

「フフフ、すごいね!」俺は感心しまくりだった。

「気負うことなくできちゃったんだね。さすが莉子だよ。
夏、とにかく莉子の書いたやつをみんなに見せて、意見を聞いたらいいんじゃない?」

夏「そうだね。そうするよ。
俺はまだ曲も作ってないのにさあ……莉子に先を越されたよ‥‥‥」

ムッとしてる。
うわ~、良いライバル関係だねえ。

この二人は、永遠に競い合うのがお互いにいいのかもね。

その日の夜——

「作詞はスタッフに見てもらったの?」

夏「見てもらったよ」

「そしたら、なんて言われたの?」

夏「桐生さんが、作詞家として契約書を交わすって言ってた」

「すごいじゃん。処女作でもう認められたんだ。
さすが莉子だよ。才能あるねえ~」

夏が思いっきり嫌な顔をしたが、
一方、莉子は満面の笑みを浮かべていた。

その夜は、寝室のキーボードでイヤホンをして、
夏が必死で作曲に取り組んでいた。

俺はその後ろ姿を見ていたがすぐ寝落ちした(笑)

翌朝——
夏が余裕の顔で起きてきた。

夏「莉子、俺だって曲ができたもんねえ~」

莉子「へえ~、早く聞かせてよ」
夏「キーボードがないと無理」

「携帯に入れてないの? 今度から携帯に入れてきてよ。
事務所だって、聞かせるのにキーボードがないでしょう?」

夏「うん、そうなんだけどね。
今度、駅前のアニメプラスの後に音楽スタジオと、
その下にダンスレッスン場を作ってるところで、もうすぐ引き渡しなんだよ。
あと2階にも練習できる個室が10室あるよ。
どれも防音設備があるんだ。そこにアレンジャーの人に来てもらうよ」

「ふ~ん。相変わらず規模がでかいねえ。
じゃあ、できたら聞かせてね」

夏「うん、分かった。莉子、もっといっぱい作詞してくんない? 曲がいっぱいいるんだよ」

莉子「OK~任せて~」

「でもさ、夏。作るったって、どういう雰囲気の曲か言っといた方がいいんじゃないの?
例えば、これはバラードとか、ちょっと元気なポップスとかさ。
それに合わせた作詞になってた方が良いんじゃない?」

夏「お兄さん、いつから詳しくなったの?」

「常識」

莉子が吹き出していた。

莉子「どっちが先かは分からないよね?
でも、作詞に合わせたメロディーを作ってくれると嬉しいなあ~」

夏「わかったよ。何なら、お兄さんも作詞する?」

「俺が疲れることするわけないだろ?
夏だって、作詞もしたらいいんじゃないの?」

はあ~……と、夏が大きくため息をついた。

夏「言われて簡単にできるくらいなら、とっくにやってるよ」

「そうか、残念だねえ~。才能もそこまでだね。
莉子、もっといっぱい作った方がいいよ」

莉子「はいはい、作詞家の私にお任せください」


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