診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第17章 夏輝・人気と自由と……

334話 ヴォクシブ・移籍と充電

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  それから10日もしないうちに、向こうの全面敗北――当たり前だ。

契約は解除された。表向きには「円満解決」。(笑)
向こうが慰謝料を請求するなら、こちらは3倍の慰謝料を請求する用意があると伝えた。

こちらは1年近く休養せざるを得なくなったし、本来なら生活保障や治療費はオリオンが全額負担すべきなのだ。
それで向こうが不利だから、すぐ諦めたのだろう。

大体、それまでヴォクシヴが稼ぎまくっていたのだから、十分に利益はあったはずだ。

俺も夏も、今回の件は腹が立ってストレスが溜まりまくる。
メンバーが今までどれほどつらかったかと思うと胸が痛む。

翌日、KAI君と夏、そして事務所スタッフとで移籍の説明のために病室を訪れた。

病室に入ると、皆が「お早うございます」と声を掛けてくれた。

その声には、まだ不安と緊張が混じっていた。

KAI「みんなお早う。具合はどう?昨日俺達が全面的に勝訴して契約を解除できて、かつ慰謝料も請求されないということになって助かったんだけど、今日は夏や桐生社長から大事な話があるそうです。聞いてください」

夏「今日は皆さんに大事なお話があって来ました。
昨日オリオンの契約を解除できたので、今日付でうちの Natsu Entertainment Group に入っていただき、専属契約を結んでほしいと思っています。どうでしょうか?」

突然のことで、みんなはぼーっとしているようだった。

リュウ「俺達、こんな調子なのに契約してもらっていいんですか?まだ治るまで当分時間がかかるし、お荷物じゃないですか?」

桐生「いえいえ、そんなことはありません。最初は驚きすぎてちゃんとご挨拶もできなかったので、改めまして自己紹介をさせてください。
私は桐生悠と申します。

理事の個人的秘書でもあり、アニメプラスの社長、そしてNatsu Entertainment Group及びライブ制作会社Grand Stage Worksの社長を兼任しています。
さらに、今計画を進めているライブ劇場も私が社長を務める予定です。

なぜ昨日の今日で急いで契約をしたいのかというと、浅田工業グループは福利厚生が手厚いからです。

特にNatsu Entertainment Groupにおいては、皆さんの待遇を出来る限り特別なものにしたいと思っています。
今日契約していただければ、今日からの医療費は全面的に事務所が負担します。

これからの衣食住についても、すべて事務所が保証いたします。もちろん休養期間にもお給料をお支払いします。
皆さんに入っていただける寮については、今探しているところですので、どうぞご安心ください。

今後1年間は“充電期間”として、ゆっくり静養していただきたい。その後に活動ができるようになれば、改めて皆さんと話し合って給料を見直したいと思っています。

どうでしょうか?お考えいただけますか?」

なんだか、みんな呆然としていて、まだ実感が湧かないようだった。

けれど、その瞳には少しずつ光が戻り始めていた――。

「守られている」という安心が、ようやく心に届いたんじゃないかな。


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