診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第18章 回復と未来を目指して

358話 揺れて

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 夏は忙しそうで、寝室に入るとバタンと寝てしまう。

かなり寂しい。俺は今、気持ちが揺れている。
こういう状況は良くないと自分でも思う。どうしたものか……。

頭を冷やした方がいいのか。
それとも身体を動かして疲れればいいのか。

もう九時だけど夏は帰って来ない。

莉子はとっくに疲れたと言って寝てしまった。
桃香は部屋で勉強しているらしい。

しょうがない。頭を冷やそうと思って2号館の屋上に行くことにした。
あそこで外の空気を吸えばいい。

小銭だけ持ってふらっと出た。11階の休憩室を覗くと誰もいなかった。
そのまま12階の屋上へ出た。

夜風が気持ちいい。それに緑の匂いがする。
樹木を沢山植えているわけじゃないのに、それでも主張するんだな。

コーヒーを買って、デッキの椅子に座り夜空を見ていた。
小学校の時に夜空を見て、星の名前を当てる夏休みの林間学校を思い出した……。
しばらくそこにいた。

どうしたものかなんて......良いアイデアがあるわけでもなく、ただ受け入れるしかない。

そう悟った気持ちになった時に、ふっと人の気配がした。

うん?誰だろう? 
そっちを見ると見覚えのある人だった。ふっと笑った。
向こうも笑っている。

なんでここにいる?__困ったな。
こんなところで会いたくなかった人だ。

「早く帰ってくださいよ。俺が出て行けないじゃないですか」

人目を気にしてくれてるんだね。

「そうだよね、分かった!帰るよ」
さっと立って下に降りていった。


全く……なんでこんなふうに心が通じ合うんだろうか。

<早く帰って、俺が出て行けないから?>
それ__ただの告白になっている。

昼間俺が言ったことの返事なのか?

とすると――相思相愛ってことなのか……。

一番まずい。知りたくなかった。

いっそ「ど~も~」と言いながら走り去ってくれた方が100倍良かった。

俺がじっと星を眺めていた時間を見守っていたのか?
全くバカ野郎だよ。どんな気持ちでそこに隠れていたんだよ。

向こうは空気で感じるんだ。
こういうのが一番困る。

最初にオンラインで会った時からだよね。不思議だ。
とにかく顔を合わせないことだ。

お互いに自覚した以上は、それしかない。

それにしても夏も空気で分かっちゃうからな。
俺は怖い人に囲まれているのかもしれない。

帰宅すると夏が帰っていた。もう10時になっていた。

「お兄さん、どこに行ってたの?」

「うん?2号館の屋上だよ。夜空を見てたんだ」
「ふ~ん、一人?」

「そうだよ、こんな時間は誰もいなかったよ」
「そうなの?」

「心配か?それなら早く帰って来いよ」
「お兄さん、お風呂に入ったの?」

「まだだよ」
「じゃあ、一緒に入りたい」
「うん、いいよ、行こう……、あっ夕飯食べた?」

「食べてない」
「じゃあ先に食べてからにしよう」

夏の夕食を温めてお茶を淹れた。
夕飯を食べる夏をじっと見つめていた。

「夏、夜まで何をしていたの?」
「ヴォクシブのみんなとグッズの話をしてたんだよ」

「ふ~ん。そうなんだ。でも夜は帰っておいで」

夏が俺の目をじっと見つめた。

「お兄さん、寂しいの?」

不覚だけど――頷いてしまった。

「わかった、早く帰るようにするね」

夕飯が終わると一緒に風呂に入った。

そして夏をめちゃくちゃに抱いてしまった。

こういうのは良くない。

なんか違う気がする。

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