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187話 莉子を託されて(夏輝サイド)6・見舞い
スケジュール時間を少し繰り上げて、大学病院へは16時15分までに着くようにしている。
集中治療室は10分間の面会時間だ。
16時半までに集中治療室を出ないといけないんだ。すごく短い。
面会人も制限されていて、莉子は妻だからいいんだけど、俺は他人だから、岩城先生の許可をもらって保護者として面会させてもらっているんだ。本当にありがたいよ。
お兄さんは相変わらず沢山の管に繋がれたままだ。
まだ意識も回復していない。ただ眠ったままなんだ。随分痩せた気がする。
莉子はずっとお兄さんの手を握っている。
髪を撫でたり頬を触ったりだ。
唇にリップクリームを付けてあげたりしているよ。
俺は触りたくても、もう一方の手は機械に繋がれているので、耳元でいっぱい話しかける。
身体は動かなくても、聴覚は生きているという話を聞いたことがある。
だから莉子の毎日を報告するんだよ、今日の莉子がどんな料理を作ったか?とかね。
きっと聞いて喜んでくれていると思っているよ。
莉子はお兄さんに頬ずりをしているよ。
酸素マスクをしているからキスは出来ないけどね。
本当に莉子もお兄さんもかわいそうだ。
帰りは二人とも落ち込んでいるよ。
でも帰りの買い物で現実に引き戻されて、なんとか気持ちを保てる気がしている。
カフェでパンでも買って行く?と莉子に聞くと、行きたいという。
うん、じゃあちょっとだけ寄ってみようね。
カフェには中村さんがいるから、ちょっとご挨拶をした方が良いよね。
カフェ付設のパン屋は相変わらずにぎわっていた。
莉子に好きなものを選んでといったら、喜んでいろんなものをトレーに乗せていた。
ああ~買い過ぎだと思うけどねえ・・・。
挨拶しようとカフェに行ったら、ちょうど岩城先生と洋子さんも来ていて、中村さんと話をしていた。
俺と莉子が行くと、みんな席を立っておいでおいでをしている。
ふっ、莉子はそれを見たら嬉しそうにしていたから、行くことにした。
「どうしたの?元気だった?」と洋子さんが聞いた。
「はい、パンを買いに来ました。ご無沙汰しています」と莉子が皆さんに挨拶をした。
俺も「お久しぶりです。お兄さんがいつもお世話になっています」とご挨拶をした。
「岩城先生には僕も面会できるようにしていただいてありがたかったです。ありがとうございました」とお礼も伝えた。
中村さんが、「今岩城から北原の病状をちょうど聞いていたところなんだよ。相変わらずだそうだけど、大変だねえ」とねぎらってくれた。
岩城先生が、莉子ちゃんに「その後、家にいてどうしているんだい?」と聞いた。
すると、「ご心配をおかけしてすみません。春ちゃんが残してくれた手紙のおかげで、夏君が助けに来てくれています。」
すると、へえ~っと一斉に声を揃えた。
「手紙ってなあに?どんな手紙だったか聞いてもいいのかな?」と岩城先生が言った。
俺は、お兄さんからの手紙をお父さん経由でもらったことを伝えて、手紙は持ち歩いていないんだけど、写真に撮って時々読んでいるんです。
その手紙の画像を皆さんに見てもらった。
ええーっ!と皆さんがびっくりして読んでいた。
「何で??こんなことがあるのか?」と岩城先生は驚いていた。
俺が「そうなんですよ。これをお父さんからもらった時は涙が止まりませんでした。莉子も同じです。だから、翌日から自分の着替えや勉強道具を運んで、お兄さんが帰ってくるまで莉子を助けて守ろうと思ったんです。
それがお兄さんの希望だからです。今は、いつお兄さんが帰って来ても大丈夫なように、計画表を作って、莉子と一緒に料理をしたり、勉強したりしています。莉子の身体を守ることが一番大事だからです」
すると一斉に「へえーっ!」と言った。(笑)
「はあ~、それはそれは。北原はそこまで完璧なんだなあ。凄いなあ全く・・・・」と岩城先生が感心したように言った。
「その封筒にはマンションのカードキーと100万が入っていました」と俺がいうと、またみんなでへえ~っ!と声を揃えた。
「お父さんから聞いた話だと学費はお父さんが払っていて、マンションの経費はお兄さんの引き落としになっているから、生活費や病院代にそれを使ってくれと言われたんです。もし不足するようならお父さんに連絡してほしいともいわれました。
それとオンライン診療は危機管理として、お父さんの名前も出していて、情報を共有しているそうなんです。その話は俺も前にお兄さんから聞いています。だからしばらく休みにするからと、お父さんが話していました」
さらに、「今度莉子の具合が悪くなるようなら、急病でない限りはお父さんの病院に連れて行こうと思っています」と言った・・・なんだか皆さん、しーんとしたままで誰も話さない。あれ?
岩城先生と中村さんは頭を抱えて下を向いていた。洋子さんはぼーっとした感じで上を向いていた。
岩城先生が「いや~もう涙なしでは聞けないよ」と泣いていた。
そして「そこまでして守ろうとするなんてねえ・・自分そっちのけだよね。あいつは意識不明でも関係ないのかもね。そこまでの下地を予想して作っていたんだもんなあ~。ただ驚くばかりだよ」と感嘆した。
中村さんが「莉子ちゃん。幸せだねえ~こんなに愛されるなんてねえ。誰にでもできることじゃないよ」と莉子に言うと、莉子も涙をぽろぽろと流して、うっうっと声を出して泣いた。
俺はハンカチを出して莉子に渡した。そして莉子の手を握った。
俺も涙が出て来た。結局みんなで泣いていたんだな。
集中治療室は10分間の面会時間だ。
16時半までに集中治療室を出ないといけないんだ。すごく短い。
面会人も制限されていて、莉子は妻だからいいんだけど、俺は他人だから、岩城先生の許可をもらって保護者として面会させてもらっているんだ。本当にありがたいよ。
お兄さんは相変わらず沢山の管に繋がれたままだ。
まだ意識も回復していない。ただ眠ったままなんだ。随分痩せた気がする。
莉子はずっとお兄さんの手を握っている。
髪を撫でたり頬を触ったりだ。
唇にリップクリームを付けてあげたりしているよ。
俺は触りたくても、もう一方の手は機械に繋がれているので、耳元でいっぱい話しかける。
身体は動かなくても、聴覚は生きているという話を聞いたことがある。
だから莉子の毎日を報告するんだよ、今日の莉子がどんな料理を作ったか?とかね。
きっと聞いて喜んでくれていると思っているよ。
莉子はお兄さんに頬ずりをしているよ。
酸素マスクをしているからキスは出来ないけどね。
本当に莉子もお兄さんもかわいそうだ。
帰りは二人とも落ち込んでいるよ。
でも帰りの買い物で現実に引き戻されて、なんとか気持ちを保てる気がしている。
カフェでパンでも買って行く?と莉子に聞くと、行きたいという。
うん、じゃあちょっとだけ寄ってみようね。
カフェには中村さんがいるから、ちょっとご挨拶をした方が良いよね。
カフェ付設のパン屋は相変わらずにぎわっていた。
莉子に好きなものを選んでといったら、喜んでいろんなものをトレーに乗せていた。
ああ~買い過ぎだと思うけどねえ・・・。
挨拶しようとカフェに行ったら、ちょうど岩城先生と洋子さんも来ていて、中村さんと話をしていた。
俺と莉子が行くと、みんな席を立っておいでおいでをしている。
ふっ、莉子はそれを見たら嬉しそうにしていたから、行くことにした。
「どうしたの?元気だった?」と洋子さんが聞いた。
「はい、パンを買いに来ました。ご無沙汰しています」と莉子が皆さんに挨拶をした。
俺も「お久しぶりです。お兄さんがいつもお世話になっています」とご挨拶をした。
「岩城先生には僕も面会できるようにしていただいてありがたかったです。ありがとうございました」とお礼も伝えた。
中村さんが、「今岩城から北原の病状をちょうど聞いていたところなんだよ。相変わらずだそうだけど、大変だねえ」とねぎらってくれた。
岩城先生が、莉子ちゃんに「その後、家にいてどうしているんだい?」と聞いた。
すると、「ご心配をおかけしてすみません。春ちゃんが残してくれた手紙のおかげで、夏君が助けに来てくれています。」
すると、へえ~っと一斉に声を揃えた。
「手紙ってなあに?どんな手紙だったか聞いてもいいのかな?」と岩城先生が言った。
俺は、お兄さんからの手紙をお父さん経由でもらったことを伝えて、手紙は持ち歩いていないんだけど、写真に撮って時々読んでいるんです。
その手紙の画像を皆さんに見てもらった。
ええーっ!と皆さんがびっくりして読んでいた。
「何で??こんなことがあるのか?」と岩城先生は驚いていた。
俺が「そうなんですよ。これをお父さんからもらった時は涙が止まりませんでした。莉子も同じです。だから、翌日から自分の着替えや勉強道具を運んで、お兄さんが帰ってくるまで莉子を助けて守ろうと思ったんです。
それがお兄さんの希望だからです。今は、いつお兄さんが帰って来ても大丈夫なように、計画表を作って、莉子と一緒に料理をしたり、勉強したりしています。莉子の身体を守ることが一番大事だからです」
すると一斉に「へえーっ!」と言った。(笑)
「はあ~、それはそれは。北原はそこまで完璧なんだなあ。凄いなあ全く・・・・」と岩城先生が感心したように言った。
「その封筒にはマンションのカードキーと100万が入っていました」と俺がいうと、またみんなでへえ~っ!と声を揃えた。
「お父さんから聞いた話だと学費はお父さんが払っていて、マンションの経費はお兄さんの引き落としになっているから、生活費や病院代にそれを使ってくれと言われたんです。もし不足するようならお父さんに連絡してほしいともいわれました。
それとオンライン診療は危機管理として、お父さんの名前も出していて、情報を共有しているそうなんです。その話は俺も前にお兄さんから聞いています。だからしばらく休みにするからと、お父さんが話していました」
さらに、「今度莉子の具合が悪くなるようなら、急病でない限りはお父さんの病院に連れて行こうと思っています」と言った・・・なんだか皆さん、しーんとしたままで誰も話さない。あれ?
岩城先生と中村さんは頭を抱えて下を向いていた。洋子さんはぼーっとした感じで上を向いていた。
岩城先生が「いや~もう涙なしでは聞けないよ」と泣いていた。
そして「そこまでして守ろうとするなんてねえ・・自分そっちのけだよね。あいつは意識不明でも関係ないのかもね。そこまでの下地を予想して作っていたんだもんなあ~。ただ驚くばかりだよ」と感嘆した。
中村さんが「莉子ちゃん。幸せだねえ~こんなに愛されるなんてねえ。誰にでもできることじゃないよ」と莉子に言うと、莉子も涙をぽろぽろと流して、うっうっと声を出して泣いた。
俺はハンカチを出して莉子に渡した。そして莉子の手を握った。
俺も涙が出て来た。結局みんなで泣いていたんだな。
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