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566話 夏輝・倒れる
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火曜日の朝礼で、月曜日に休ませてもらったお礼をスタッフに伝えた。
「お陰様でゆっくり過ごすことが出来ました。ありがとうございました。皆さんには心ばかりのお礼に、軽井沢のお土産で、人気洋菓子店の焼き菓子があります。皆さんで召し上がってください。看護師長、隣の三輪さんと友井さんにもあげてくださいね。いつもおいしいお弁当を作ってもらっているのでね」
すると看護師長から、「はい、わかりました。では皆を代表しまして、今回の奥様のグランプリ受賞おめでとうございます!」
皆も一斉におめでとうございます!と声を揃えて言ってくれた。
「はい、どうもありがとうございます。俺は何もしていないんだけどね。ふふふ」
でも皆でパチパチと笑顔で拍手をくれた。
「さあ、今日も頑張りましょう」
「今日の患者さんは何人くらいかな?」
師長「先生、外は見ないでください」
「またそれ?それ言われちゃうと、絶対見たくなっちゃうんだよね」
玄関からは毎度の事、患者さんたちが覗いていたけど、
外を覗くと・・・「あれなあに?」
師長「だから見ないでくださいって言ったじゃないですか」
「先生、あれはどう見ても50人はいますよ」と本居君が言った。
「ああ、やっぱり見なきゃよかったよ。師長、後は任せるので13時30分から上に上がります。よろしく!」
「宮本君、今日もめいっぱい頑張ってお願いしますね。ご飯は13時から行ってください。よろしくね」
結局、この日は今までの最高患者数を記録した。午前が緊急も入れて142人。午後は130人。
午前が午後に持ち越したことは言うまでもない。
ああ~ここに夏がいてくれたらなあ・・・。泣きが入るよ。
夏に会いたい。ずっとすれ違いだから寂しい。
その日の19時過ぎにようやく診療が終わった。
皆でふう・・と息をついた。
上に上がって、莉子と桃香も一緒にお弁当を食べた。いつもおいしいねえ。
今日は特に野菜とローストビーフのわさび和えがぴりっとしていて、すごく美味しかった。
お弁当を食べるようになって、心の余裕ができた気がする。
これを全部自分で作るとなると、今だったら地獄だろ。
もう昔とは違う。疲れ切っているから無理だ。もう過去には戻れない。
「夏はまだ帰って来ていないの?」
「えっ? 夏なら自分の部屋にいるよ。帰ってきたらすぐ寝るって言ってた。疲れているみたいだったよ」
そのまま4階の夏の部屋に急いだ。
ノックして「夏、起きてるか?」・・・返事がなかった。
そっとドアを開けると夏が疲れ切った表情で眠っていた。顔色が凄く悪い。
診療カバンを持ってきた。熱を測ると38度3分だ。聴診した。
胸は弱いものの異常はないが、おなかの音が凄く悪かった。嫌な金属音がする。
触診すると妙に硬く張っていた。なんだろう?お腹を押さえると呻いた。
「夏、どうしたんだ?具合が悪いんじゃないのか?」
「お腹が痛い・・」どうしよう・・・すぐレントゲンを撮りたいし、エコーで調べないといけない。
1階まで連れてまた4階に上がるのか?夏は動けそうにない。血液検査もすぐするべきだ。
身体のどこかに炎症を起こしているかもしれない。CTも必要だ。
しょうがない。大学病院の救急センターに電話した。
幸いにも世話になったことがある内科医が出た。
事情を話すとすぐ救急車で迎えに来てくれるそうだ。良かった!
「莉子! 来てくれ!」大声で階段から叫んだ。
夏の着替えと寝間着にスリッパ、タオルの大と小、コップに歯磨きセットを慌ててカバンに詰めた。
あとは保険証と診察券だな。
そこへ莉子がびっくりして来た。
「莉子、夏の具合が悪いから、救急車を呼んだ。俺は付き添って大学病院に行くからね」
「もうそろそろ来るから、下に行って救急車の人を4階に誘導してくれない?」
俺も自分のカバンに携帯と財布にお金を多めに詰め込んで上着も持った。あと車のキーだな。
そこへ救命スタッフが来てくれた。事情を話して俺が車で追いかけることを伝えた。
エレベーターにはストレッチャーが乗らないので、車椅子を上にあげていた。
車椅子に夏を座らせてもらった。やはり夏はぐったりしていて、自力で動くことが出来なかった。
あとは救命スタッフに頼み、俺は荷物を車に乗せて出発した。
「お陰様でゆっくり過ごすことが出来ました。ありがとうございました。皆さんには心ばかりのお礼に、軽井沢のお土産で、人気洋菓子店の焼き菓子があります。皆さんで召し上がってください。看護師長、隣の三輪さんと友井さんにもあげてくださいね。いつもおいしいお弁当を作ってもらっているのでね」
すると看護師長から、「はい、わかりました。では皆を代表しまして、今回の奥様のグランプリ受賞おめでとうございます!」
皆も一斉におめでとうございます!と声を揃えて言ってくれた。
「はい、どうもありがとうございます。俺は何もしていないんだけどね。ふふふ」
でも皆でパチパチと笑顔で拍手をくれた。
「さあ、今日も頑張りましょう」
「今日の患者さんは何人くらいかな?」
師長「先生、外は見ないでください」
「またそれ?それ言われちゃうと、絶対見たくなっちゃうんだよね」
玄関からは毎度の事、患者さんたちが覗いていたけど、
外を覗くと・・・「あれなあに?」
師長「だから見ないでくださいって言ったじゃないですか」
「先生、あれはどう見ても50人はいますよ」と本居君が言った。
「ああ、やっぱり見なきゃよかったよ。師長、後は任せるので13時30分から上に上がります。よろしく!」
「宮本君、今日もめいっぱい頑張ってお願いしますね。ご飯は13時から行ってください。よろしくね」
結局、この日は今までの最高患者数を記録した。午前が緊急も入れて142人。午後は130人。
午前が午後に持ち越したことは言うまでもない。
ああ~ここに夏がいてくれたらなあ・・・。泣きが入るよ。
夏に会いたい。ずっとすれ違いだから寂しい。
その日の19時過ぎにようやく診療が終わった。
皆でふう・・と息をついた。
上に上がって、莉子と桃香も一緒にお弁当を食べた。いつもおいしいねえ。
今日は特に野菜とローストビーフのわさび和えがぴりっとしていて、すごく美味しかった。
お弁当を食べるようになって、心の余裕ができた気がする。
これを全部自分で作るとなると、今だったら地獄だろ。
もう昔とは違う。疲れ切っているから無理だ。もう過去には戻れない。
「夏はまだ帰って来ていないの?」
「えっ? 夏なら自分の部屋にいるよ。帰ってきたらすぐ寝るって言ってた。疲れているみたいだったよ」
そのまま4階の夏の部屋に急いだ。
ノックして「夏、起きてるか?」・・・返事がなかった。
そっとドアを開けると夏が疲れ切った表情で眠っていた。顔色が凄く悪い。
診療カバンを持ってきた。熱を測ると38度3分だ。聴診した。
胸は弱いものの異常はないが、おなかの音が凄く悪かった。嫌な金属音がする。
触診すると妙に硬く張っていた。なんだろう?お腹を押さえると呻いた。
「夏、どうしたんだ?具合が悪いんじゃないのか?」
「お腹が痛い・・」どうしよう・・・すぐレントゲンを撮りたいし、エコーで調べないといけない。
1階まで連れてまた4階に上がるのか?夏は動けそうにない。血液検査もすぐするべきだ。
身体のどこかに炎症を起こしているかもしれない。CTも必要だ。
しょうがない。大学病院の救急センターに電話した。
幸いにも世話になったことがある内科医が出た。
事情を話すとすぐ救急車で迎えに来てくれるそうだ。良かった!
「莉子! 来てくれ!」大声で階段から叫んだ。
夏の着替えと寝間着にスリッパ、タオルの大と小、コップに歯磨きセットを慌ててカバンに詰めた。
あとは保険証と診察券だな。
そこへ莉子がびっくりして来た。
「莉子、夏の具合が悪いから、救急車を呼んだ。俺は付き添って大学病院に行くからね」
「もうそろそろ来るから、下に行って救急車の人を4階に誘導してくれない?」
俺も自分のカバンに携帯と財布にお金を多めに詰め込んで上着も持った。あと車のキーだな。
そこへ救命スタッフが来てくれた。事情を話して俺が車で追いかけることを伝えた。
エレベーターにはストレッチャーが乗らないので、車椅子を上にあげていた。
車椅子に夏を座らせてもらった。やはり夏はぐったりしていて、自力で動くことが出来なかった。
あとは救命スタッフに頼み、俺は荷物を車に乗せて出発した。
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