医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘～い愛の物語

572話 恋しい日々

　夏が大分回復してきた。入院して今日で10日目だ。

ようやく絶飲食が解除されて、今日から重湯が始まる。

食べている夏を見るのが好きだ。恐る恐るかみしめるように飲み込んでいる。

久しぶりだもんな。口で食べると言うことを忘れちゃうよね。

留置カテーテルも取れて、ゆっくりなら室内のトイレに歩いて行けるようになった。

目つきも大分しっかりしてきたから本当に良かった。

一時はどうなることかと思った。あんなに弱っている夏を見るなんて悪夢だ。

莉子や桃香だって専攻科が始まってから、ずっと顔を合わせなかったから寂しかったと思うよ。

でもまだまだ入院していて欲しい。本当に治るまでは安静にしてほしいんだよ。

やっぱり家だと俺が診療している間は、目が行き届かないからそれが嫌だ。

病院にいてくれた方が良い。それと夏のご両親が頻繁に様子を見に来るからね。

やっぱりかわいい息子は早く治って欲しいんだよ。

それを邪魔したくないよ。お父さんも今回は思い切った政治力を発揮してくれた。

まさに医学界の革命だったよ。感謝でいっぱいだ。

ご両親には本当に心からお礼を言ったよ。

そして、夏は正式に大学病院で専攻医として研修を受けることが許可された。

夏に言ったらすごく喜んでいたよ。最初から大学病院が希望だったもんな。通勤も楽だ。

今まで研修を受けてきた分もカウントされるから無駄にならない。

それと今までやって来たプログラムも尊重されることになったんだ。

やりかけのままで来た専攻医もいるし、それを無にすることはないよね。

夏は内科から消化器内科へ進むんだけど、専門医になった暁には、外科に行って勉強させてもらえって言ったんだけど、実は俺の気が変わった。怒られるな。

クリニックの内視鏡が遊んでいて勿体ないから、専門医の試験にパスしたら、あと1年大学病院で内視鏡を勉強した方が良いと思うんだ。内視鏡の為のコースが１年間なんだけどあるんだ。

まあ、外科もやった方が良いんだけど、それは宮本君がいるからね。すぐにやらなくても大丈夫だ。

本人はもう嫌だとか言うかなあ？　だってここまでで11年かかるからね。

更にあと1年やれと言うのもかわいそうな気がするけど、やった方が良いと俺は思っている。

消化器内科をやるなら当然内視鏡も付随するものだからだ。

まあ、専門医の試験にパスしてから言っても良いけどね。

さて、そろそろ、風呂はどうかなあ。一応男女とも大浴場あるんだよね。それほど大きくはないけどさ。

やっぱり湯に浸かりたいよねえ。でもまだ重湯じゃ駄目だな。

俺でも許可しないな。せめて普通食を食べ始めて二日くらい経たないと駄目だよね。

ああ～連れて帰りたい。家の風呂に入れてやりたい。

こういうのはなんというんだろう？

恋しがっているというのかなあ。もう俺は限界だよ。