576 / 996
579話 徹夜
しおりを挟む
やはり予想通り、夏は腹痛で悶絶していた。唸っておなかを痛がって涙を流していた。
知らんぞ。まったく、その度にトイレに連れて行くのは無理だった。
腹痛がひどすぎて動けないのだ。莉子と全く一緒だ。もう双子か!
お陰で夜中に何回も夏のおむつを替えることになった。
一袋ごとあって良かったよ。1枚や2枚じゃ全然足りない。
下痢は身体の正常な反応だから止めてはいけない。
全部出し切ってしまうまでは、待たないといけないのだ。
医者でも打つ手はない。せいぜい、電解質を補給してやるくらいしかない。
そんなことは夏だって十分に勉強して知っている。
でも知っているのと経験するのとでは違うんだ。
今回は過信から自分で痛い目に遭ったことは、良い経験になったと思う。
何事も自分が患者になって初めて分かることは多い。
夏も少しはわかったんだから、これで良かったんだよ。
それにしてもだ、俺はほとんど寝ることが出来なかったんだぞ。
しかも翌日は俺が運転して帰らないといけなかった。
このツケは払ってもらうつもりだ。夏は甘く見ているんだよ。
だから人の言うことを聞かない。今回は徹底して教えてやるつもりだ。
ここで甘くしたら夏の為にならないからな。
翌日、夏が下痢を出し切って、やや落ち着いた頃に帰ることにした。
この時点で12時だ。レイトチェックもいいところだ。
全く‥‥‥高かったんだぞ! 請求してやる。
フロントでお世話になりましたと挨拶した。
夏には「お加減はいかがですか?」とスタッフの人に聞かれてギクっとした表情で固まっていた。
ざまーみろ。俺がどれだけ恥をかいたか分かるか!
そこでお礼がてら、お土産を多めに買った。
自宅に戻ると、莉子が明るく「どうだった?」と夏に聞いていた。
「うん、ありがとう・・」と暗い顔で返事をしたら4階に上がってベッドに入ったようだ。
莉子が「春ちゃん、夏はどうしたの?なんか変だよ。喧嘩でもしたの?」
「いや喧嘩じゃないよ。俺が叱ったんだよ。だから莉子も甘い顔をしないで知らん顔をしてよ」
「うん、わかったよ。なんだあ~楽しんで帰って来るのかと思ってたのにさあ」
「うん、悪いね。でも夏の為だから察してね。お土産は買って来たよ」
「あとさ、重湯を作るからそれを夏に飲ませてやってくれる?また身体を壊したからさ」
「うん、わかったよ。難しいんだね」
退院して以来、なんとか常食を食べられていたのが全部無駄になった。
過信から胃や腸を悪くして、これ以降は全く常食が受け付けられなくなってしまった。
これがどれだけ大変なことなのか、身を持って知れ。
一度壊した胃や腸は完全に治るまでは半年かかるんだぞ。いい勉強だ。
「莉子、悪いけど、俺は昨日あまり寝てないからさ、今から少し寝るよ。夕飯も食べるかどうかわからないから冷蔵庫に入れておいてくれる?悪いね」
そう言い残して俺はベッドに入った。今は何も考えたくない。ただ眠りたい。
知らんぞ。まったく、その度にトイレに連れて行くのは無理だった。
腹痛がひどすぎて動けないのだ。莉子と全く一緒だ。もう双子か!
お陰で夜中に何回も夏のおむつを替えることになった。
一袋ごとあって良かったよ。1枚や2枚じゃ全然足りない。
下痢は身体の正常な反応だから止めてはいけない。
全部出し切ってしまうまでは、待たないといけないのだ。
医者でも打つ手はない。せいぜい、電解質を補給してやるくらいしかない。
そんなことは夏だって十分に勉強して知っている。
でも知っているのと経験するのとでは違うんだ。
今回は過信から自分で痛い目に遭ったことは、良い経験になったと思う。
何事も自分が患者になって初めて分かることは多い。
夏も少しはわかったんだから、これで良かったんだよ。
それにしてもだ、俺はほとんど寝ることが出来なかったんだぞ。
しかも翌日は俺が運転して帰らないといけなかった。
このツケは払ってもらうつもりだ。夏は甘く見ているんだよ。
だから人の言うことを聞かない。今回は徹底して教えてやるつもりだ。
ここで甘くしたら夏の為にならないからな。
翌日、夏が下痢を出し切って、やや落ち着いた頃に帰ることにした。
この時点で12時だ。レイトチェックもいいところだ。
全く‥‥‥高かったんだぞ! 請求してやる。
フロントでお世話になりましたと挨拶した。
夏には「お加減はいかがですか?」とスタッフの人に聞かれてギクっとした表情で固まっていた。
ざまーみろ。俺がどれだけ恥をかいたか分かるか!
そこでお礼がてら、お土産を多めに買った。
自宅に戻ると、莉子が明るく「どうだった?」と夏に聞いていた。
「うん、ありがとう・・」と暗い顔で返事をしたら4階に上がってベッドに入ったようだ。
莉子が「春ちゃん、夏はどうしたの?なんか変だよ。喧嘩でもしたの?」
「いや喧嘩じゃないよ。俺が叱ったんだよ。だから莉子も甘い顔をしないで知らん顔をしてよ」
「うん、わかったよ。なんだあ~楽しんで帰って来るのかと思ってたのにさあ」
「うん、悪いね。でも夏の為だから察してね。お土産は買って来たよ」
「あとさ、重湯を作るからそれを夏に飲ませてやってくれる?また身体を壊したからさ」
「うん、わかったよ。難しいんだね」
退院して以来、なんとか常食を食べられていたのが全部無駄になった。
過信から胃や腸を悪くして、これ以降は全く常食が受け付けられなくなってしまった。
これがどれだけ大変なことなのか、身を持って知れ。
一度壊した胃や腸は完全に治るまでは半年かかるんだぞ。いい勉強だ。
「莉子、悪いけど、俺は昨日あまり寝てないからさ、今から少し寝るよ。夕飯も食べるかどうかわからないから冷蔵庫に入れておいてくれる?悪いね」
そう言い残して俺はベッドに入った。今は何も考えたくない。ただ眠りたい。
5
あなたにおすすめの小説
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる