704 / 996
707話 莉子の七不思議
しおりを挟む
病院から帰宅した莉子は少しふらついていた。かなり疲れているようだ。
「先に夕飯を食べよう。明日の元気の為に夕飯は大事だよ」
桃香が帰宅していたので呼び、一緒に少し早めの夕飯をとった。
食事を終えた後、莉子に歯磨きをさせ、そのまま寝かせることにした。
今日の痛い注射で、相当疲れたのだろう。
あのファッションショーのときは、あんなに張り切っていたのに......。
楽しいことがあれば、また違うのかな?
他の仕事が片付いていれば、ファッションショーをやってもいいけれど......。
そういえば、アメリカで注文された絵はどこまで進んでいるのだろう?
夏に聞いてみよう。
夜になって、夏が帰ってきた。
「お疲れさま。ありがとうね」
「お兄さん、莉子はどうだった?」夏は心配そうに尋ねた。
実は、昨夜夏に莉子のことを話したのだ。
海辺で莉子が号泣したことを伝えると、夏も悲しみ涙を流した。
耳が半分しか聞こえないらしいと聞き、信じられないと驚いていた。
さらに、難聴の事例をネットで探していたところ、夏も一緒になって調べてくれた。
「それがね、耳鼻科では耳に特に問題はないって言われたんだ。CT検査も異常なし。だからホルモン不足で自律神経が乱れたんだろうってことで、ホルモン注射とホルモンパッチをもらってきたよ」
そう話すと、夏は顔をしかめた。「あの痛いやつ?」
「うん」とニヤッとしながらうなずく。
「夏にも試してみる?」
「俺を殺す気?」二人でくすくすと笑った。
「莉子は疲れていたみたいで、夕飯を食べたらすぐ寝ちゃったんだ」
夏が心配そうに言う。「相当なストレスだったんじゃないですか?」
「多分ね。ずっと我慢していたんだと思う。ところで、莉子がアメリカで受けた注文ってどうなってるの?何も言ってなかったけど、まだたくさん残ってるの?」
夏は驚いたように目を丸くする。「え?聞いてないんですか?あれ、全部終わってますよ」
「えっ、いつの間に描いたの?」
「ええっと…多分、隣でビルを建てている間ですよ。防音室を莉子に貸したでしょう?あの時、集中して描いていたみたいです」
「信じられない。ホルモン補給もしていなかったのに、描けたの?」
「そうなんですよね。だから俺も不思議で、莉子はいつも淡々と仕事をするから、気がついたら終わってるんですよ」
「そんなことがあるの?まるで奇跡みたいじゃない」
夏は肩をすくめて笑う。「莉子の七不思議ですよ。あのイレウスで入院していたときも、唸りながらゲームのストーリーを考えてましたよね?」
「あっ、そうだった!夏が音声メモを取ってたよね?」
確かにあれには驚愕したのを覚えている。
とすると、創作のエネルギーはずっと続いているんだな。
「先に夕飯を食べよう。明日の元気の為に夕飯は大事だよ」
桃香が帰宅していたので呼び、一緒に少し早めの夕飯をとった。
食事を終えた後、莉子に歯磨きをさせ、そのまま寝かせることにした。
今日の痛い注射で、相当疲れたのだろう。
あのファッションショーのときは、あんなに張り切っていたのに......。
楽しいことがあれば、また違うのかな?
他の仕事が片付いていれば、ファッションショーをやってもいいけれど......。
そういえば、アメリカで注文された絵はどこまで進んでいるのだろう?
夏に聞いてみよう。
夜になって、夏が帰ってきた。
「お疲れさま。ありがとうね」
「お兄さん、莉子はどうだった?」夏は心配そうに尋ねた。
実は、昨夜夏に莉子のことを話したのだ。
海辺で莉子が号泣したことを伝えると、夏も悲しみ涙を流した。
耳が半分しか聞こえないらしいと聞き、信じられないと驚いていた。
さらに、難聴の事例をネットで探していたところ、夏も一緒になって調べてくれた。
「それがね、耳鼻科では耳に特に問題はないって言われたんだ。CT検査も異常なし。だからホルモン不足で自律神経が乱れたんだろうってことで、ホルモン注射とホルモンパッチをもらってきたよ」
そう話すと、夏は顔をしかめた。「あの痛いやつ?」
「うん」とニヤッとしながらうなずく。
「夏にも試してみる?」
「俺を殺す気?」二人でくすくすと笑った。
「莉子は疲れていたみたいで、夕飯を食べたらすぐ寝ちゃったんだ」
夏が心配そうに言う。「相当なストレスだったんじゃないですか?」
「多分ね。ずっと我慢していたんだと思う。ところで、莉子がアメリカで受けた注文ってどうなってるの?何も言ってなかったけど、まだたくさん残ってるの?」
夏は驚いたように目を丸くする。「え?聞いてないんですか?あれ、全部終わってますよ」
「えっ、いつの間に描いたの?」
「ええっと…多分、隣でビルを建てている間ですよ。防音室を莉子に貸したでしょう?あの時、集中して描いていたみたいです」
「信じられない。ホルモン補給もしていなかったのに、描けたの?」
「そうなんですよね。だから俺も不思議で、莉子はいつも淡々と仕事をするから、気がついたら終わってるんですよ」
「そんなことがあるの?まるで奇跡みたいじゃない」
夏は肩をすくめて笑う。「莉子の七不思議ですよ。あのイレウスで入院していたときも、唸りながらゲームのストーリーを考えてましたよね?」
「あっ、そうだった!夏が音声メモを取ってたよね?」
確かにあれには驚愕したのを覚えている。
とすると、創作のエネルギーはずっと続いているんだな。
6
あなたにおすすめの小説
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる