医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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707話 莉子の七不思議

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 病院から帰宅した莉子は少しふらついていた。かなり疲れているようだ。

「先に夕飯を食べよう。明日の元気の為に夕飯は大事だよ」

桃香が帰宅していたので呼び、一緒に少し早めの夕飯をとった。

食事を終えた後、莉子に歯磨きをさせ、そのまま寝かせることにした。

今日の痛い注射で、相当疲れたのだろう。

あのファッションショーのときは、あんなに張り切っていたのに......。

楽しいことがあれば、また違うのかな?

他の仕事が片付いていれば、ファッションショーをやってもいいけれど......。

そういえば、アメリカで注文された絵はどこまで進んでいるのだろう?

夏に聞いてみよう。


夜になって、夏が帰ってきた。

「お疲れさま。ありがとうね」

「お兄さん、莉子はどうだった?」夏は心配そうに尋ねた。

実は、昨夜夏に莉子のことを話したのだ。

海辺で莉子が号泣したことを伝えると、夏も悲しみ涙を流した。

耳が半分しか聞こえないらしいと聞き、信じられないと驚いていた。

さらに、難聴の事例をネットで探していたところ、夏も一緒になって調べてくれた。

「それがね、耳鼻科では耳に特に問題はないって言われたんだ。CT検査も異常なし。だからホルモン不足で自律神経が乱れたんだろうってことで、ホルモン注射とホルモンパッチをもらってきたよ」

そう話すと、夏は顔をしかめた。「あの痛いやつ?」

「うん」とニヤッとしながらうなずく。

「夏にも試してみる?」

「俺を殺す気?」二人でくすくすと笑った。


「莉子は疲れていたみたいで、夕飯を食べたらすぐ寝ちゃったんだ」

夏が心配そうに言う。「相当なストレスだったんじゃないですか?」

「多分ね。ずっと我慢していたんだと思う。ところで、莉子がアメリカで受けた注文ってどうなってるの?何も言ってなかったけど、まだたくさん残ってるの?」

夏は驚いたように目を丸くする。「え?聞いてないんですか?あれ、全部終わってますよ」

「えっ、いつの間に描いたの?」

「ええっと…多分、隣でビルを建てている間ですよ。防音室を莉子に貸したでしょう?あの時、集中して描いていたみたいです」

「信じられない。ホルモン補給もしていなかったのに、描けたの?」

「そうなんですよね。だから俺も不思議で、莉子はいつも淡々と仕事をするから、気がついたら終わってるんですよ」

「そんなことがあるの?まるで奇跡みたいじゃない」

夏は肩をすくめて笑う。「莉子の七不思議ですよ。あのイレウスで入院していたときも、唸りながらゲームのストーリーを考えてましたよね?」

「あっ、そうだった!夏が音声メモを取ってたよね?」

確かにあれには驚愕したのを覚えている。

とすると、創作のエネルギーはずっと続いているんだな。

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