転生したら現代地球のダンジョンだった!「ダンジョンから出られないので最下層を目指します。」

魔人

文字の大きさ
3 / 16

ダンジョンの奥へ

しおりを挟む
卵の殻をひとつ残らず平らげたあと、俺はしばらくその場に横たわっていた。
体の奥がほんのり温かい。初めての食事が、少しだけ力を与えてくれた気がする。
……いや、そもそも蛇って卵の殻なんて食べるのか? いまだに自信はない。
でも他に食べられるものは見当たらないし、誰も文句は言わないだろう。

そろそろ動かなきゃ。
俺は身体をゆっくりとひねり、腹側の鱗を地面に押しつけるようにして前へと滑らせた。
するり、と岩肌を這う感覚が新鮮だ。筋肉の動きが波のように体を伝って、思ったよりスムーズに進める。
「おお……これが蛇の推進力ってやつか」
思わず感嘆の声を漏らした。
声といっても、口から出たのはかすかな hiss 音。自分の発声に自分で驚き、ちょっと笑ってしまった。

目の前には、暗くて広い洞窟が広がっている。
岩壁には苔のようなものが点々と光を放ち、天井からは水滴がぽつり、ぽつりと落ちていた。
水たまりの表面に小さな輪が広がっては消える。
空気はほんのり湿って、生ぬるい。
その湿気の奥に、かすかに土と石の匂いが混じっている――いや、匂い“みたいなもの”が、頭の奥で形を持って伝わってくる感覚だ。
これが、蛇特有の嗅覚なのかもしれない。

俺は少しだけ体を伸ばし、周囲を慎重に見回した。
卵の殻を食べただけで、腹はまだ満たされていない。
でも、今はそれよりもここがどんな場所なのかを把握する方が先だろう。
足音ひとつしない静けさが、逆に緊張を誘う。
「……俺はどこに来てしまったんだ?」
独り言をつぶやいても、返事はなく、湿った空気がふわりと舌の先をなでるだけだった。

そのとき、洞窟の奥から小さな音がした。
カサッ……と、何かが岩をこするような音。
反射的に体を丸め、舌をちろりと伸ばす。
すると、暗がりの中に二つの微かな光が浮かんでいるのが見えた。
目、だ。何かの目がこちらをじっと見つめている。
心臓に当たる部分がズクンと強く脈打つ。
敵か、それとも同じように迷い込んだ何かか――どちらにせよ、これが“蛇として最初の試練”なのは間違いない。

「やるしか……ない、のか?」
自分に言い聞かせるように小さく hiss 音を漏らし、俺は慎重に体を岩陰へ滑り込ませた。
視線をぎらりと返しながら、闇の中の光の正体を見極めようと舌を再び伸ばした――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

処理中です...