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後編
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鉱山から見上げた夜空は黒くなんてない。
鉱山で採れたモノを加工して出た成分とやらが上空の大気に滞留しているとハイスクールでは習った。そうすると何故、空がいろんな色に見えるのか、そこのところの理屈はマイムマイスにはキレイサッパリ飲み込めなかったが。
今、見上げる夜空は……
ダズモンドの言っていた縦にキレイに分かれるなんてのは嘘っぱちだったが、多数の色が複雑に入り混じりマイムマイスが息を呑むくらいには美しかった。
これは虹《レインボゥ》じゃないな、極光《オーロラ》ってヤツに似てるのかもしれない。
10分以上光景に見入り、やがて頭に思考する余裕の戻って来たマイムマイスはそんな事を考えてみる。
夜の時間が更けていき、空が徐々に黒くなる。ハイスクールの講師は何と言っていたかな。空に滞留している物質に街の明かりが反射して複雑な色に見えるのです。記憶を無理やり引っ張り出すとそんな内容の事を言っていたような気もする。
街の明かりが徐々に消されてる。だから反射光も少なくなっているんだな。
マイムマイスは自分自身の科学的思考に感心する。
おいらって割と頭良いよな。ハイスクールの講師なんて職業の選択もあるかもしれない。
するとオーロラのようだった空に今度は星が瞬きだす。
空の色で見えなかった星たちがその薄い色のカーテンの先に一斉に煌めきだすのだ。
これなら少女が隣にいたとして、その肩を抱き寄せても怒られないだろうと思えるくらいには見ものだった。ダズモンドの台詞はだいたい合っていた事になる。
ぼうっと見上げていたマイムマイスはやがて気が付く。
星が全く見えない場所がある。煌めく星たちの合間に四角い昏い空間。
それは動いていた。四角と言うよりひし形なのかもしれなかった。先端が少し丸みを帯び、真下が細長くその先から長い紐のような物も見えている。
星の海に形作られる影。そいつが動めき、たまに横長の線になったりまたひし形に戻ったりする。
なんだか影が星の海を泳いでいる様だ。
なんて言うのはロマンティックに過ぎるかな、とマイムマイスは胸の中で一人言葉にする。
とりあえず肉眼で必死に見る。目に焼き付けておこう。
そう言えばエイドルードにも頼まれていたんだっけ。
稼いだ金は山分け。
だんだんとマイムマイスにも分かって来る。
真下の紐みたいな部分はおそらくあの影の尻尾だ。影が上へ泳ぐのに合わせてたなびき、影が上方で1回転するとそれにくっついてクルリと回る。
マイムマイスは影のパントマイムを夢中になって見守る。
どの位時間が経ったのだろう。
「おい、そこの若いの。
もう今夜は鉱山は閉めたぞ。
この辺はこの時間立ち入り禁止だ」
いきなりそんな声をかけられてマイムマイスは跳び上がる。
見回りの鉱山夫らしき人物がそこに立っていた。
「あ、ああ……ゴメンよ。
オジサン、あれ見てくれないか。
あれを見てたら時間が経っちまったんだ」
そう言ってマイムマイスは夜空を振り返るけど、そこに星があるだけで他には何も見えなかった。
「……どれだって?
あの大きい星の事か。
まあ確かにキレイだがな……」
「悪い悪い。
もうこんな時間だったなんて。
おいらとっとと帰るよ。
明日は寝不足だな、こりゃ」
そう言ってマイムマイスは麓へと駆けだしていた。
さて物語のオチだけど、賢明な貴方にはもう分かっているだろう。
マイムマイスが見た泳ぐ影は宇宙エイの姿だった。こいつを肉眼で見た情報をエイドルードは感覚機で取り出し自分の領域に貼りつけた。
するってぇと、こいつはバズった。バズりにバズった。
エイドルードに言わせると
「バズバズバズったよ。いや、バズバズバズバズバズりくらいしたかもな」
って事になる。
そこから山分けした金でマイムマイスは祖父の店のカウンターを新調した。壁紙を新しくしてもオツリが来るくらいの金額だった。
そのオツリで宇宙エイの模型を買って店の天井に飾った。そのアイデアを出したのはエイドルードだった。
ハイスクールを卒業したマイムマイスはその店のマスターになった。バーのマスターにはすぐ嫁が出来た。
その嫁に来た女の子にマイムマイスは今日も言う。
「おーい、たまには接客も手伝ってくれよ」
「バイトくらい雇いなよ。
お客が今日も来てるのは僕が『情報の電界』に宣伝を流してるからなんだぜ」
『レイのクズ鉄』は今日も客が入っている。
「レイってのはアンタの名前かい?」とマイムマイスに尋ねる人はいない。宇宙エイの情報を聞いてやってくる人の方が多いからだ。二人くらいの夫婦が食べて、ついでにバイトを雇うくらいの収入はあるのだ。
その嫁ってのは勿論エイドルードで、要するに現在話してるこの僕だ。
貴方がこのお店に行きたくなったなら、僕の宣伝が上手いコト行ったってそう言う事だね。
鉱山で採れたモノを加工して出た成分とやらが上空の大気に滞留しているとハイスクールでは習った。そうすると何故、空がいろんな色に見えるのか、そこのところの理屈はマイムマイスにはキレイサッパリ飲み込めなかったが。
今、見上げる夜空は……
ダズモンドの言っていた縦にキレイに分かれるなんてのは嘘っぱちだったが、多数の色が複雑に入り混じりマイムマイスが息を呑むくらいには美しかった。
これは虹《レインボゥ》じゃないな、極光《オーロラ》ってヤツに似てるのかもしれない。
10分以上光景に見入り、やがて頭に思考する余裕の戻って来たマイムマイスはそんな事を考えてみる。
夜の時間が更けていき、空が徐々に黒くなる。ハイスクールの講師は何と言っていたかな。空に滞留している物質に街の明かりが反射して複雑な色に見えるのです。記憶を無理やり引っ張り出すとそんな内容の事を言っていたような気もする。
街の明かりが徐々に消されてる。だから反射光も少なくなっているんだな。
マイムマイスは自分自身の科学的思考に感心する。
おいらって割と頭良いよな。ハイスクールの講師なんて職業の選択もあるかもしれない。
するとオーロラのようだった空に今度は星が瞬きだす。
空の色で見えなかった星たちがその薄い色のカーテンの先に一斉に煌めきだすのだ。
これなら少女が隣にいたとして、その肩を抱き寄せても怒られないだろうと思えるくらいには見ものだった。ダズモンドの台詞はだいたい合っていた事になる。
ぼうっと見上げていたマイムマイスはやがて気が付く。
星が全く見えない場所がある。煌めく星たちの合間に四角い昏い空間。
それは動いていた。四角と言うよりひし形なのかもしれなかった。先端が少し丸みを帯び、真下が細長くその先から長い紐のような物も見えている。
星の海に形作られる影。そいつが動めき、たまに横長の線になったりまたひし形に戻ったりする。
なんだか影が星の海を泳いでいる様だ。
なんて言うのはロマンティックに過ぎるかな、とマイムマイスは胸の中で一人言葉にする。
とりあえず肉眼で必死に見る。目に焼き付けておこう。
そう言えばエイドルードにも頼まれていたんだっけ。
稼いだ金は山分け。
だんだんとマイムマイスにも分かって来る。
真下の紐みたいな部分はおそらくあの影の尻尾だ。影が上へ泳ぐのに合わせてたなびき、影が上方で1回転するとそれにくっついてクルリと回る。
マイムマイスは影のパントマイムを夢中になって見守る。
どの位時間が経ったのだろう。
「おい、そこの若いの。
もう今夜は鉱山は閉めたぞ。
この辺はこの時間立ち入り禁止だ」
いきなりそんな声をかけられてマイムマイスは跳び上がる。
見回りの鉱山夫らしき人物がそこに立っていた。
「あ、ああ……ゴメンよ。
オジサン、あれ見てくれないか。
あれを見てたら時間が経っちまったんだ」
そう言ってマイムマイスは夜空を振り返るけど、そこに星があるだけで他には何も見えなかった。
「……どれだって?
あの大きい星の事か。
まあ確かにキレイだがな……」
「悪い悪い。
もうこんな時間だったなんて。
おいらとっとと帰るよ。
明日は寝不足だな、こりゃ」
そう言ってマイムマイスは麓へと駆けだしていた。
さて物語のオチだけど、賢明な貴方にはもう分かっているだろう。
マイムマイスが見た泳ぐ影は宇宙エイの姿だった。こいつを肉眼で見た情報をエイドルードは感覚機で取り出し自分の領域に貼りつけた。
するってぇと、こいつはバズった。バズりにバズった。
エイドルードに言わせると
「バズバズバズったよ。いや、バズバズバズバズバズりくらいしたかもな」
って事になる。
そこから山分けした金でマイムマイスは祖父の店のカウンターを新調した。壁紙を新しくしてもオツリが来るくらいの金額だった。
そのオツリで宇宙エイの模型を買って店の天井に飾った。そのアイデアを出したのはエイドルードだった。
ハイスクールを卒業したマイムマイスはその店のマスターになった。バーのマスターにはすぐ嫁が出来た。
その嫁に来た女の子にマイムマイスは今日も言う。
「おーい、たまには接客も手伝ってくれよ」
「バイトくらい雇いなよ。
お客が今日も来てるのは僕が『情報の電界』に宣伝を流してるからなんだぜ」
『レイのクズ鉄』は今日も客が入っている。
「レイってのはアンタの名前かい?」とマイムマイスに尋ねる人はいない。宇宙エイの情報を聞いてやってくる人の方が多いからだ。二人くらいの夫婦が食べて、ついでにバイトを雇うくらいの収入はあるのだ。
その嫁ってのは勿論エイドルードで、要するに現在話してるこの僕だ。
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