ゾンビと魔法少女と外宇宙邪神と変身ヒーローと弩級ハッカー、あと俺。

Scene.EX04 女社長七鮎川円花と俺のいない世界

第182話

「オマエのコスプレイヤー兼、謎の高校生女社長には負けるけどよ」

そんな事を逆が言う。
わたしは顔出しなんてしてないのに。

魔法少女の動画。
速見佐緒里があの雪の日撮影していた。
ようつべに上げていいかしら。
わたしは彼女のその願いにOKを出した。
もちろん名前は出さない様に言った。
以前出ていた、由羅ちゃんや佐緒里ちゃんも本名は消させた。

何か記念の様に感じたのかもしれない。
魔法少女の装備。
勇者の神器はあの日消えてしまった。
わたしの“水流のブレスレット”。
由羅の“炎のネックレス”。
逆の“大地のイヤリング”。
ゾンビ達が動かなくなった直後、スッとわたしのブレスレットは消えた。
わたしはいつの間にか魔法少女姿ではなく、真っ赤なサンタ服を着ていた。
見ると逆や由羅ちゃんも一緒。
サンタ姿の逆、小学校の制服を着た由羅ちゃん。

「ゾンビが居なくなったからかしら。
　インスマスの連中も居なくなったし。　
　役目を終えたって事なのかも」

佐緒里ちゃんはそんな事を言ってたけれど。
わたしはむしろ真悟さんに関係していると思っている。
あの日真悟さんは帰ってこなかった。
そのまま行方不明。
わたしは取り乱した。
逆や由羅ちゃん、佐緒里ちゃんはわたしを慰めてくれた。
みんな感じていた筈だ。
『Glaaki』このゾンビ騒動を引き起こした外宇宙邪神を真悟さんが何とかした。
してくれた。
その替わりに真悟さんは帰らぬ人となった。
勇者と一緒に勇者の神器も消えた。

わたしは真悟さんを探しに行きたかったけれど。
ゾンビが居なくなった後の社会インフラ整備は急務だった。
特に病院、医療関係者は途方も無い事になっていた。
道端に、建物に溢れかえるゾンビから人間に戻った重傷者。
次々重症患者は運び込まれるけれど。
医療関係者だって無傷じゃないわ。

わたしは七鮎川の力を使って、徹底的に力を貸した。
七鮎川の関係企業には医療関係も有れば、製薬会社も有る。
その人間達を使っても手が足りない。
医療関係者を関東以外から呼び寄せた。
緊急病院も幾つも作った。
他の六家の人間は米軍に拘束されていた。
即座に指示を出せる立場だったのはわたし位だったの。

拘束から解放された親族には。
何を勝手にとブツブツ言うモノも居たが。
表立ってわたしが批判される事は無かった。

有事の際に協力した企業として新聞マスコミが褒め称えたのだ。
ウチや関係企業の株はウナギ登り。
感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いじゃない。

わたしの元に一通の電子メールが届いたのはそんな頃。
差出人は書いて無いけれど。
わたしには分かる。
コレはウツの。
高天原宇宙【たかまがはらうつ】
親戚にも明かしていない、逆と由羅にしか教えてない筈のアドレスを利用出来る部外者なんて他にいるもんですか。

その内容は。
緊急で立てた病院に入院している患者に『草薙慎吾』と言う名前の者が居る。

わたしは仕事の全てを放り出して、すぐさま電話した。

「草薙先輩！
　どうして連絡してくれなかったんです。
　こんなに心配していたのに」
「……あの。
　貴方はどなたですか？」

『草薙真悟』は電話口でそう言った。