上 下
12 / 102
その1 入団試験

第12話 少女の試練

しおりを挟む
エステルちゃんはアルミラージの突進を横に躱した。
でかいウサギから狂暴に伸びた角の直撃を盾で受けて。
図体ごとの突進を避けて躱す。
お見事!にゃの。
躱された一本角ウサギはエステルちゃんの方に背中を見せてるわ。
チャンスにゃのね。

『ピナーカ』

もう一発!
エステルちゃんの風の魔法が炸裂。
今度こそダェーヴァの頭を切り裂いた。
ダェーヴァはもんどり打って倒れてる。

うん、これで角を取って持って行けば試験合格ね。

「あ……」

だけどエステルちゃんは動かにゃい。
少し先のダェーヴァの屍体を見つめてる。
後頭部から首が鋭利な刃物で切ったみたいに切り裂かれてる。
そこから赤い液体がドクドクと地面に流れていく。

「……!」

エステルちゃんは血が流れ出すのを見て、動きが止まってる。

そっか、エステルちゃん……
優しい娘にゃのよね。

「お嬢ちゃん。
 相手はバケモノ、ダェーヴァなのよ。
 仕方ないの。
 護衛団に入るのでしょう。
 ならこんな事、日常になるのよ」

老婦人がしわがれた声で言う。
キツイ事言わにゃいであげて。
そう思うけど事実にゃんでしょうね。

「お嬢ちゃん、ダェーヴァよ」

お婆ちゃんはエステルちゃんの頭を軽く抱き寄せる。

わたしもまだ良く分かってにゃいんだけど。
ダェーヴァは正確に言うと普通の動物じゃにゃいらしいわ。
ハイエナとかヒョウ、普通の動物でも人間を襲う生物はいる。
獰猛にゃだけの猛獣。
魔物ダェーヴァは別物。
恨みや悪の気が集中して出来たバケモノ。
呪われた存在。

エステルちゃんが殺さなかったら。
どこかで別の人間や動物に被害を与える魔物。
だから殺した事をくよくよしちゃダメ。
多分、お婆ちゃんはそういう事を伝えたいんだわ。

「……はい」
「なら試験よ。
 アルミラージの角を切り落とすのよ。
 それで貴方は合格」

エステルちゃんは一瞬つらそうにゃ顔をしたけど。
決心したのかアルミラージの屍体に近付いていく。

うわー、出来る事にゃら代わってあげたいわ。
でも。
護衛団の入団試験にゃのよね。
エステルちゃんは自分で受けると決めたの。
にゃら邪魔は出来にゃいわ。
わたしに出来るのは見守る事だけね。

「槍じゃ角を切りにくいでしょ。
 私の小刀使う?」
「ありがとうございます」

エステルちゃんがお婆ちゃんに小型の剣を借りてる。
ステュティラちゃんが使ってた弧を描く曲刀じゃにゃいわ。
真っすぐな直刀。
柄の部分は布が巻き付けられて滑らない様ににゃってる。
あまり飾り気のにゃい物。
この近くで出来た物じゃにゃいのかしら。
近くの国ペルーニャ帝国で作られた剣は華美な物が多いの。
金色に塗られたり、宝石があしらって有ったり。
今お婆ちゃんが差し出したのはもっと実用的にゃ雰囲気ね。

エステルちゃんがウサギの頭部を持ち上げて、角の生えた場所に剣を刺す。
そこからも血が流れていくわ。

「……!」

エステルちゃん。
12歳の少女は唇を嚙みしめてる。
少し腕が震えてる。

だけど、目は逸らさにゃい。
ダェーヴァの頭から角を切り取るの。

「終わりました……」

エステルちゃんが試験官のお婆ちゃんに言う。

「良くやりましたね」

お婆ちゃんが優しく答えてる。
頼りにはにゃらにゃいけど、にゃかにゃか良い試験官じゃにゃい。

これで終わり。
と思った、にゃのに。
わたしの耳に聞こえて来るわ。
イヤにゃ予感。

エステルちゃんに近付いてる飛行する物体。

「お嬢ちゃん、危ない!
 ヴァウーザカよ!」
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

おとなのための保育所

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:16

婚約破棄からはじまる戦う母となる女剣士と時代に遅れた国王の物語

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

追憶のquiet

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

この度、結婚していました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:26

才能なしのアート 町の落し物は僕のもの?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:622

人参の冒険:ウサギの姿、人間の心

O.K
ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

幽霊祓い

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

処理中です...