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その6 危険な瞳

第83話 涙

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誰?
誰かがわたしの身体を揺さぶる。

チラリと見えるのは猫の姿。
源五郎丸?
そんにゃハズはにゃい。
あの子は黒くて白ブチ、少し太めの猫。
黒い額に三日月のような白い毛。
あの人はそれが気に入ってた。

わたしの視界に入るのは灰色で背の高い猫。

「アネさん!
 じゃなくて……天使サマ!
 でもなくて……みゃー様!」

【危機感知】
【精神攻撃】
【危機感知】
【精神攻撃】

そんにゃ文字がわたしの視界をにゃがれて去って行く。

「みゃー様!
 大丈夫ですかい。
 大変なんでみゃすよー!」

わたしの身体を揺さぶってるのは『逃げ足のグレイ』さんだった。

わたし、どうしてたのかしら。
わたしの周りに倒れている男の人たち。

そうだ、一番隊の戦士たち。


その先を巨大なヴィルーパークシャが歩いて行く。
全身、瞳だらけのキモチワルイ魔物ダェーヴァ

「みゃー様! みゃー様!
 ありゃ一体何ですみゃ?!
 どでかいバケモノですみゃ!」

『逃げ足のグレイ』さんが騒ぎ立てる。


そうだ。
わたし魔物ダェーヴァの大きにゃ目を見た途端、吸い込まれたようににゃったんだ。
アレは幻覚。
魔物ダェーヴァの精神に攻撃してくる技。

にゃんて。
にゃんてヒドイ攻撃にゃのー!!

周りの戦士たちが呻きにゃがら倒れてるのもトーゼン。
わたしだってグレイさんが揺さぶってくれにゃかったら。
地面につっぷしてずっと泣いているトコロよ。

わたしとヴィルーパークシャの間にはエラティ隊長もいる。
苦し気な表情を浮かべた美少年。

スゴイわ。
彼もあの目を見たハズにゃのに、まだ抵抗している。

「あ、あああああ!
 僕は…………俺は!
 俺はあの人を……彼女を守るって約束したのに!」

地面を拳で打ちつけて叫ぶ美少年。
エラティ隊長はそのまま地面に額を擦り付けて動かない。

可哀そう。
イヤな記憶を思い出しているのね。
にゃにが有ったかは分からにゃいけど。

わたしがあの魔物ダェーヴァの攻撃に抵抗できたのは多分、猫侍の力のおかげ。
それを猫耳幼女神バステト様が操れるようにしてくれたおかげ。

普通の人間ならすぐ耐えられにゃくにゃってしまう精神攻撃。
エラティ隊長はここまで耐えた。
だけどさすがに限界が来たみたい。

地面に頭を付けた少年からは嗚咽の声が聞こえる。

うっううううう……うっ。

わたしは彼の側に近寄って身体を寄せる。
わたしが源五郎丸を抱いているだけで癒されたように。
わたしも彼を癒せるかしら。
わたしの柔らかい身体、温かい毛はこういう時の為にあるのかもしれにゃい。

嗚咽を上げ、震えながら泣いていたエラティさん。
その震えが止まる。

わたしはその顔の近くに行って。
浅黒い頬を流れる水分を舌でにゃめとる。

猫の舌は温かいけど、少しザラっとしている。
エラティさんはビクっとした。

「だ、誰だ?
 オマエ? あの人?
 ……いやそんなハズ無い……
 えっ?!
 みゃーちゃん?!」
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