和泉と六郎の甘々な日々 ～実は和泉さんが一方的に六郎さんに甘えてるだけと言う説も有るけど和泉さんはそんな説にはそっぽを向いている～

『夏はビールとアイスクリーム？』の章

第17話

次の朝だ。
綱乃ちゃんと餅子ちゃんは和泉さんの家から帰る。

結局二人とも泊めて貰っちゃったのだ。
綱乃ちゃんを残して餅子ちゃんだけ帰る手も有ったのだけど。
雨もまだ降り止んでいなかった。

今朝は晴れてる、やったね。

なのに、二人とも疲れてる。
グッタリした顔で家を出て駅へと向かう。
まだ昨日のお酒が抜けてない。

それ以上に。
見てしまったのだ。

和泉さんの起き抜け。
ぼうっとした彼女。
目が開かない和泉さんの肩に六郎さんが手を置く。
あの優しい手つき。
和泉さんはぼうっとしたまま六郎さんの言いなり。
フラフラと歩いてく。
寝ぼけてるはずなのに何の支障もなく顔を洗う。
六郎さんは付きっ切り。
ひな鳥の面倒を見る親鳥か。
六郎さんがスプーンを渡す。
和泉さんがご飯を食べだす。
あの不安なんて一つも持ってない態度。

手慣れてるという事は毎朝こうなのか。
こうなんだろう。
そんなの見れば分かる。

「美味しい～～」

和泉さんの幸せな声。
顔中が笑ってる。
それを見つめる六郎さんの幸せな顔。
目元が笑ってる。

二人だけの空間。
いや、ホントウはワキで綱乃ちゃんも餅子ちゃんも見てるのだけど。
和泉さんと六郎さんには綱乃ちゃんも餅子ちゃんも見えて無い。

あの二人。
あんな二人に自分達がどうこう言おうなんて。
なんて愚かだったのか。

「こういう時なんて言うんだっけ。
　『くたばれバカップル』か」
「綱乃さん、古すぎます。
　『リア充爆発しろ』かな、それも古いですね。
　『陽キャは死ね』かな」

「陽キャじゃねーだろ」
「じゃやっぱり、
　アレしか無いですかね」
「それだな」

『もうお前ら結婚しちゃえよ』

そう呟く二人である。


だけど。

「簡単には結婚しそうにないな」
「分かんないですよ」

「餅子、なんか考えあんのか」
「ホラ、ドラマも恋愛マンガもパターンじゃないですか。
　恋人未満の意識しあう二人が一気に進展するセオリー」

「ああ、恋敵か」
「そうです、恋のライバルです」

そう言えばそんなのに心当たりが有る二人なのだ。

「アイツな」
「アイツです」

本庄猪丸。
金津新平。

お互い別の男を指してるのだけど。
気付いてない綱乃ちゃんと餅子ちゃん。

なんとなく二人して通じ合ってるように笑う。
ヘヘヘっ。
にひひっ。
そりゃ、そうだ。
人の恋路なんて面白がるしかない。

それに。
最終的にイヤな結果にならない。
多分ならない。
絶対ならないのだ。
ハッピーエンドが分かってる安心な楽しみ。
そんなの滅多に見られない。
楽しむしか無いでしょう。


































どーも。
ここまで読んで戴いた皆様。
ありがとうございます。

夏の章はここでおしまい。
明日からこぼれ話を3話だけお届けします。

よろしくお願いします。