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【3】氷の修道院
【3】氷の修道院……➃
しおりを挟む「ミア。オシリが白桃みたいで、とっても可愛い!食べてしまいたい」
「はい?」
ミアは首を傾げながら、ショートパンツの尻を触ってみた。
「ど、ど、どうして、尻に穴が開いているのですか!」
「そうだ、マントを忘れてた。ここは、首都に比べて寒いでしょ」
何のためにか、ミアが穿いているショートパンツの尻にまん丸な穴が空いている。獣人であれば尻尾を出すために必要になる穴だが、この服を子供の頃に着ていたと言うシャノンは完全なる人型だ。
戸惑っているミアを気にすることなく、シャノンは真っ白な毛を織り込んだ雪のようなマントを肩にかけてくれた。
「これは、パライバトルマリン。電気石って言うんだ。ミアの左目と同じ色だから、良く似合うはずだよ」
初めて聞く鉱物の名前だった。掌ほどのアイスブルーの宝石を惜しげもなくあしらったブローチをマントの胸元へシャノンが付けている。
「高価な物なのでは」
「何年か前に見つかった石で、ミアのために作ったんだ。だから、ミアが付けてくれないと意味がない」
まるで、ミアのことをずっと前から知っていたような口ぶりだった。
東方の民族衣装であった色鮮やかなキモノをさらりと羽織り、窓を開けたシャノンはテラスへと出て行く。
見覚えのあるアーチ形の窓。
ミアが連れてこられた壁画のあった建物と同じ窓だ。と、なると、やはりミアはそこへ連れ戻されたと言う事なのだろう。
――好きにしていいぞ。
(あの声の主か……ッ)
聞き覚えがあると思ったシャノンの声。それは、ここへ連れて来られた日、さんざん待たされた部屋の奥から聞こえた低くて甘い声だった。
「ミア、おいで」
広いテラスで、シャノンが微笑みながら手招きしている。
「シャノン様」
そもそも、あんな声を聞かされ続けなければ、ここを逃げ出すこともなかった。
(銃も失くしたじゃないか……っ!)
ミアは毛足の長い絨毯に足を取られ、転びそうだった。
改めて部屋を見渡せば、良い香りがする檜の天蓋には細かな彫刻が施されている。そこから垂れ下がるカーテンにはドレープがたくさんできるほど、ふんだんに生地が使われていた。そして、部屋のいたるところにリボンのかかった箱がたくさんある、贅沢で可愛らしい部屋ーー。
趣味は様々だと思うが、シャノンが過ごす部屋にしては少し子供じみているようにも見える。
(彼は二十代後半くらいだろうか……)
地下でも人間はアバヤを着用しているため、あまり人を見る目が養われていない。そもそも、いろんな顔をした人間がいて個性があると知ったのだって、地上派遣の研修に入ってからだ。
「シャノン様、お聞きしたいことがあります。人間が首都以外で生活することは禁止されていますが、なぜシャノン様は首都から離れたこの土地にいらっしゃるのですか。しかも、子供の頃からここへいたような事を」
「答えは簡単じゃないか。僕は人間じゃないからだよ」
テラスへ出たミアは、外の冷たい風に思わず首をすくめた。
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