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告白⑨

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「さっきから自分のこと、なんで気持ち悪いってなんで言うの?」

「母さんによく言われてたから、女の人は僕みたいな人間を気持ち悪いって思うのは知ってるから」

 彼女が異質なのは感じていました。それは悪い意味ではなくて、アルビノのアマガエルが「可愛い」とか、キメラの孔雀が「神々しい」とか言うのと似ています。たとえようのない美しさを彼女は元々、持ち合わせていたのです。

「気持ち悪いだなんて、一度も思ったことないよ。私が好きになった人のこと、そんな風に言わないで」

 結婚式の日、なんとなく腑に落ちてしまったのは事実です。見た目だけでなく、魂が美しいと感じる何かーー。


「こんなに一緒にいたのに、あの時のあーちゃんは、私の知らない人だったの」
「うん」

「あーちゃんのこと、知らな過ぎた」
「琴里といる僕も、間違いなく僕だよ」

「話を聞かせて欲しいの」

「わかった。熱が大丈夫なら身体を洗ってあげるからシャワー浴びて、お粥をひとくちでも食べてくれたら話そう。結婚式のためにダイエットしたでしょ?」
「だって……、あーちゃんに綺麗だって思われたかったから」

「琴里はそのままでも綺麗だし、可愛いよ」

 お風呂へ連れて行こうとする彼女が、わたくしの薬指の先を遠慮がちに握りました。わたくしと彼女の薬指にはうろ覚えですが、神父様の前で交換した結婚指輪が確かにありました。
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