オレの番になって──異世界に行って愛猫の番にされる話

まめ

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不穏の足音

12 この世界の獣人

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あれから、ぼくはたくさんの本を読んだ。
獣人についても、だいぶわかってきた。

この世界には、人族のほかに”亜人”と呼ばれる種族がいるらしい。
人間とよく似た姿をしているけれど、どこかが決定的に違う存在――今この世界にいる亜人のほとんどは”獣人”と呼ばれる種族らしい。
耳や尻尾がついているだけじゃなくて、それぞれの種族に合わせた特別な能力を持っている。その力を、人間たちはまるで便利な道具のように使って繁栄してきたと書かれている。

本の中には、獣人たちが自分たちだけで暮らしている国や、人も亜人も関係なく平等に扱われる場所がある、とも書かれていた。
でも――
この家から見える国、ノーラ共和国では、亜人は奴隷のように扱われているらしい。
あのうさぎの女の子もそうだった……悲しそうな赤い目を思い出す。
彼女はこの家が見えているようだったし、あのとき、目が合ったような気がしたんだ――

獣人には、人の姿に耳や尻尾が付いたタイプや、全身が毛や鱗に覆われているタイプ、爬虫類系にはトカゲが二足歩行しているようなタイプもいるらしい。奥深いな獣人。
ぼくも昔の世界では、アニメやラノベで獣人のことはそれなりに見てきたので、あまり違和感はない。むしろ獣人が好き。ヘキです。
ネロが獣人だったらどうだろう。ピンと立った黒い耳に、ふさふさのしっぽ。顔はわかんないけど、体は筋肉質でしゅっとしてだね、背はきっと高いぞ。
ぼくは紙にネロが獣人になった姿を想像して描いてみる。わは!とてもかっこいい!ちょっと盛り上がってしまった。
外から帰ってきたネロが、ぼくの手元をのぞき込んで不思議そうにしている。

「ああ、今、この世界の獣人の勉強していたの。で、ネロが獣人になったらどうなるか描いてみたの。ほら見てよ、かっこいいね!」

「……がうぅ?」

「いや、ネロはそのままで十分かっこいいから。単なる落書きだし、気にしないで!」


人間不信で友だちもいなかったぼくが、唯一好きだったのがラノベのケモ耳ヒーローだった。あれはフィクションだから楽しかったんだと思う。この世界の獣人たちは、そんなふうに毎日笑ってなんかいられないだろうから。
その夜は、いつものようにネロの胸に抱かれながら、獣人になったネロの夢を見てしまった。
夢の中のネロは、人間の体に、猫の黒い耳としっぽをなびかせて、風の中を走っていた。とてもかっこよくて、どこか色っぽかった。
朝、目を覚ますとなぜか服がはだけていて、恥ずかしくて顔が熱くなった。

「わぁ、なんで脱いでるの、ぼくー!ネロ、なんかした?」

「がう?」(ちらり)

「ぎゃー!そんな目で見ないでっ!恥ずかしいっ!」

***

昨日読んだ本に岩塩の話が載っていて、この高台付近に採取できる場所があることがわかった。塩さえあれば、卵焼きもトマトソースも、もっともっと美味しくなるはず。
ぼくはネロに岩塩の話をした。通じてるかわかんないけど。
そして、岩塩探しの旅(日帰り)に出ることにした。とことん歩いて、太陽が頂点に登った時点で引き返せは、夜までには家にたどり着けるだろう。


 
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