この世を恨んで焼身自殺した俺が転生、ダークフォースで八つ当たり無双!

最果ての気球

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世を儚んだ俺は両親の残した家と共にこの世を去る事にした。

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 拝啓 この世の皆様

 不詳、私、眞殿蒼馬は、この世を自ら立ち去る事に致しました。
 理由は単純。この世の中には、自分に用意された幸福は存在しないようだからです。

 自分は生まれてこの方、多くの苦難を耐え忍んできました。
 ただ耐えて、耐えて、耐えました。

 それでも、何も変わる事無く、次から次へと襲い掛かる理不尽に、私は耐える事以外術はありませんでした。

 三十年以上生きて、幸せだと感じた事は片手で数えて足りる程度かもしれません。逆に不幸だなと感じた事は、それこそ三十数年の三百六十五日かもしれません。

 家族以外で自分に向けられた善意はほとんどなく、悪意だけが私を襲い続けました。
 それでも耐えて。耐えて。耐え忍んで、いつの日か救われる日、報われる日が来ると信じて、努力し続けて。

 ですが、もう限界です。

 血のつながりのない、世の全ての人間が、私に悪意だけを叩きつけ続けたのだから当たり前でしょう。彼らは悪意以外を持ち合わせてはいないか、私以外の全てに善意を使い果たし、残った悪意を全て私に注いだかのように思える程で、そんな世界に私の幸せなど、用意されている筈がない。

 私はもう幸せを望む事が出来ない事を悟り、生きる事に疲れました。

 だから先祖伝来のやせ細った狭い土地のおんぼろな我が家と共に炎で天へ昇ります。

 では、さよなら、現世。
 
 全員、地獄に落ちろ!!! 滅べ、世界!!!

   *

 全文正しく書かれている事を確認し、俺は最後にボタンを押した。
 
そして、さっきまで家中に撒いたガソリンに火を投げ入れる。
 
瞬間、俺の目の前は真っ黒に染まり、瞬く間に火の手が周囲一帯に広がる。
 恐らく、俺の狭い一軒家など、とうの昔に火の手に包まれた事だろう。

燃え盛る古びた家具やボロボロの畳、そのすべてが炎に包まれていくのをぼんやりと眺める。
すると、部屋の隅に置かれた鏡に、自分の姿が見えた。

げっそりやせ細った顔と体、鋭く人相が悪いと言われた釣り目の下には深い隈が刻まれ、眉間には濃い皺が刻まれている。
頭に髪の毛はなく、油分も無く乾いた頭皮がひび割れてもいる。
その身に纏うのは、ところどころ敗れたぼろきれみたいなTシャツとジーンズ。その上、僅かだけ焼けた肌が煤けて見え、みすぼらしさに拍車をかけている。

見た目、地獄の亡者か、果ては滅んだ世紀末の世界で悶える哀れな死骸のような見た目の男。
それが自分だと、無理やり再確認させられた気分だ。

もういい。もうどうでもいい。
俺は何のためらいもなく、大きく息を吸って、目の前に立ち上る黒い煙を肺いっぱいに吸い込んだ。
 途端、のどや頭に強烈な痛みが走り、すぐに激しくせき込む。

 同時に、耳鳴りやめまいや吐き気が襲われ、手足の先から痺れが来て、意識が朦朧として、呼吸する事さえも危うくなる。
 
これが一酸化炭素中毒か。
 大量の一酸化炭素を一気に吸い込んだ事で俺の全身は急速に機能不全を起こす。
ああ、これから俺は死ぬんだな。
 
そう感じ、いつの間にか畳の上で倒れる自分の事を自覚する。
 霞む目線の前には燃えていく見慣れた我が家。子供のころから今の今まで、三十年以上も暮らしてきた山奥の古い家の情景が映る。
 
これで終わりだ。何もかも。
 何故かよく回る頭で考え、徐々に闇の中へと沈んでいく。
 そうだ。俺の人生も、俺の思い出が詰まったこの家も全部消えてなくなる。
 するとロクでもない人生のすべてが走馬灯のように流れては消えていく。
 
最悪の人生。良かった事はせいぜいあの両親の子供だった事と仲良くしてくれた友達が少しだけいた事くらい。
 それ以外、誰もかれも、俺の事なんて路傍の石ぐらいにしか考えて無い。雑に扱って、壊れるまでもてあそんでいいとしか思ってなかったんだろう。
そんなくそったれな世界に、何で生まれてしまったのだろうかと嘆かずにはいられない。
 
神様。こんなけったくそな世界を創造した神様よ~。
幸せにもなれないのに、社会の為に働かされ、消費されるだけの生活なんてよこしやがって!
 アンタを俺は絶対許さない。アンタも、アンタの作った世界も、全部全部呪ってやる!
 
呪って、呪って、滅ぶまで呪い続けて、全部全部ぶっ壊してやる!
覚悟しとけよ、神様!!!!!
 
そう考えた直後、俺の意識は闇の中へ完全に飲まれ、何も感じなくなった。

   ※

 突然、意識が戻った。俺は何もない闇の中を漂っていた。本当に何も見えない闇。でも確かに目は開いている事が分かる。

 ここは、どこだ?
 俺は、確かに焼け死んだ筈だが、何でこんなところにいる?

 そう思った瞬間、突如目を覆いたくなるほど強烈な光が現れた。
 俺は咄嗟に腕で目を庇うが、それでも強過ぎる光は俺の目を眩ませる。
 なんだよ、一体。

『蒼馬、眞殿蒼馬よ』

 と、光の方から突然、やたらと荘厳な声が響く。

「な、誰だ? 光が強くて何も見えねぇんだが」
『我は、……そうだな。ソナタら、人間の言うところの神、世界を創造せし者だ』
「世界を創造……バカな事言うな。そんなのがいきなり出てくるわけないだろ。ってか、ここは何処だよ? 俺は自宅で炎に包まれてたはずだぞ。なんでこんなところにいるんだよ?」
『ここは我の領域だ。ソナタは我が創造した世界にて死んだ。そして魂だけがこの場所に導かれたのだ』

 自称神は語る。何をバカな事を……とも思ったのだが、奴の言っている事は何故かすんなり受け入れられた。

 それが何故かはわからなかったが、確かに地面に足がついている感覚も無いし、水があるわけでもないのによく分からない浮遊感がある。その上、まったくわけのわからない強烈な光が輝き続けている。
 でも、本当に神の居場所なんかに人間が来られるものなのか?

『その疑問は最もだ。ソナタの思う通り、ここには普段、我以外は存在しない。だが、人は死を迎えた時、ここに来る。ソナタの父も母も、この場所にやってきた。あらゆる魂が死を迎えた後、この場に回帰するのだ。だから、ソナタもここにやってきたのだよ』
「な! 何で? 俺、何も言ってないのに俺の考えが分かるんだよ?」
『我は大地、すべての生命を作りし者。だからその程度は容易に分かる。生きとし生ける人の子が何を考え生きているかも、絶えずこの場で見てきたのだ』

 そう驚く俺に、神は告げた。その言葉は、俺に少なからぬ激震が走った。

 ……人が何を考えているか、常に見てきただって?

「おい! なら、俺がどうして死んだかも、お前は知ってるだな!? そうなんだな!」
「そうだ。そなたが何を思い、どうして自ら死を選んだか、我は知っている」

 何のてらいもなく、抑揚も少なく神は言った。そして、ほんの少しだけ躊躇うように続ける。

『この度は、ソナタを追い詰め、自ら死を選ぶような事をさせてしまった事、謝罪する。いかなる苦難にも耐え忍び生き続けてきたソナタが耐えきれなくなるとは我にも思い至らなかった』
「耐えきれなくなると思わなかっただ!? ふざけんんじゃねぇ! 俺や俺の家族をひでぇめにばっかり合わせやがって! お前が俺達を何ともせずにいたから、俺はずっと不幸なままだった。それでもいつかは幸福になれる日が来るって信じてずっと頑張ってきたのに! 体も壊れて、心まで壊れて動けなくなるまで、必死で耐えて生きてきたのに! 最後の最期までロクでもない事ばっかり押し付けやがって!!! 許さねぇ!! 絶対に許さねぇ!! お前も、お前の作った世界も、ずっと呪い続けてやる!!!」
『そなたらが不幸だったのは我のせいというわけでもない。が、人の悪意がそちらに向かい過ぎていたのも事実。それらを罰しもせずにいた事は深く詫びねばならぬ。耐え忍んでくれたというのに、何の加護も与えてやれなかった事は本当に申し訳なかった』

 神は朗々と告げる。その言葉に嘘が無い事もまた何故か理解できた。声音だけでは理解できないが、俺の心が神の謝罪が本物だという事を訴えてくる。
『この場にソナタを呼んだのはその詫びの為だ。ソナタの両親は極楽浄土、いわゆる天国へと導いた。ソナタにも、苦難に耐えてきてくれた礼をせねばならぬ』
「な! 俺も天国に行けるってのか? また父さんと母さんに会えるのか?」

 俺はいつしか身を乗り出していた。死に別れた両親に会える。それは俺にとって何よりもうれしい事だった。碌な孝行もできず終いだったが、二人だけは俺をずっと愛してくれた、俺にとっての救いだから。

『いや。それは出来ない』
「な、なんでだよ!」
『ソナタは呪いが強すぎる。それほどの呪いを孕んだままでは、そなたを天国へと導く事は出来ぬのだ。だから、代わりにソナタに新たなる生を与える。その為にここへ招いた。でなくば、そなたは怨霊として我が世界を呪い殺しかねんからな』
「新たなる生? おい、生まれ変わるって事か?」
『違う。ソナタはソナタのまま、今まで生きた世界とは異なる世界へ転生する。そこで同じように徳を積めば、今度こそそなたを天国へと導こう。その時はそなたの両親に引き合わせる事も約束する』
「転生だと? おい、このまま何も知らない世界に送られて、どうしろってんだ!」
『案ずるなかれ。その世界はそなたの力、現世に留まるに足るだけの強力な怒りと恨み、孕んでいる呪いを力へと変える事のできる世界だ。ソナタがそれらを手放さぬ限り、必ずやそなたはその世界を幸福に生き抜く事が出来る。それはそちらの世界を管理する神にも確認済みだ』
「怒りが力に? おい、それどういう意味だよ?」
『言葉通りだ。さぁ、それでは行くが良い。見事に生き抜くのだ、眞殿蒼馬よ』

 その言葉を皮切りに、猛烈な風が吹き始める。俺は風に流され、どんどん眩しすぎる光から遠ざかっていく。
「おい! どういう事だよ! もっとちゃんと説明してくれ!」
『新たなる生が、そなたに多くの幸を齎さんことを。死後、また会おう。眞殿蒼馬よ』

「バカ野郎! 勝手な事ばっかりすんじゃねぇ~~~~~!!!! この腐れ創造主~~~!!!」
 俺は懸命に叫び手を伸ばす。が、遂に光は完全に見えなくなり、俺はいよいよ風に飲まれて彼方の闇の中へと飛ばされ、意識はそこで完全に途切れた。
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