この世を恨んで焼身自殺した俺が転生、ダークフォースで八つ当たり無双!

最果ての気球

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魔物撃退し終わったら、次のイベントが発生した

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「おらおら! かかってこい、化け物ども!!」
 景気づけと化け物の注意がこちらに向かうように、俺は敢えて大声で叫んだ。
 その狙いはどうやら上手く行ったようで、姿を現したジャガー達は一斉に俺の方を向いた。
「来たよ、ソーマ! 気をつけて!」
「ああ、下がってろ、ミリ。アイツらは俺が片付ける!」

 叫び、迫りくるビースト達に駆け寄る俺。
 その内の一体が、大きく跳躍して俺目掛けて鋭い爪を振り下ろす。
 それを、俺は体を沈めてかわし、顎先にカウンターのアッパーカットを叩き込む。
 顎を殴りつけられたビーストは、俺の拳の先から放たれた黒い光に包まれて先ほどと同じく塵に変わる。
 よし。とりあえず一匹目。

 俺はすぐさま次に控えていたビーストへと飛び掛かる。ビーストは先ほどの仲間が跡形も消し飛んだ事に恐れをなしたか、まったく動きを止めていた。俺はそこへ全力で跳躍し、相手の鼻先目掛けて拳を叩きつけ、ジャガーを消し飛ばした。
 俺は綺麗に着地すると、すぐに視線を巡らせ、次の相手を探す。
 ジャガー達は相変わらず動きを止めていたが、不意に何かを思い出したように動き出し、俺を迎え撃つべく身構えた。最も手近なモノは俺目掛けて一直線に跳躍、その巨大な顎を大きく開きかみつこうと試みる。

「甘いんだよ!」
 その攻撃を、俺は大きく横っ飛びする事でかわす。そして、着地した瞬間、通り過ぎていくその巨体に強烈な蹴りをお見舞いした。
 すると、ビーストの巨体が蹴ったところから真っ二つにへし折れ、そこから溢れた光が二つに分かれたジャガーの体を焼き尽くす。

「三匹目!」
 喝采と挑発を兼ねて叫ぶ俺。
 そこへ今度は数体のジャガー達が駆け寄ってくる。彼らは飛び掛かってくるかと思いきや、俺の間近で足を止め、大きく頭を振りかぶる。
 なんだ?と思った瞬間、ビーストの巨大な口から一斉に炎が噴き出した。それは、火炎放射器のように一直線に俺目掛けて飛んでくる。

 げッ! こいつら、こんな事も出来たのかよ。物理攻撃ならともかく、炎なんて防ぐ方法ないぞ!
 そう思い、何とかかわそうと試みるが、間に合わない。炎は俺目掛けて降り注ぎ、その体を焼こうとする。
 思わず腕で顔を庇う。しかし、そんな事をしても無駄だといわんばかりに炎が俺に降り注ぐ。
 しかし、炎が俺の体に触れたかに思えたが、熱は感じても俺の体に火がついたような感覚はなかった。
 恐る恐る目を開くと、炎は俺の体には届いていなかった。更に目を凝らしてみれば、なんと炎は俺の纏う光に阻まれ、俺の体には一切届いて来なかった。

 ……マジか。この光、物体を破壊するだけじゃなくて、炎とかにも有効なのかよ。
 やれやれ。出鱈目にも程だな。こいつがチートだとか言われる理由なのかもな。
 そうと分かればとばかりに、俺は防御を解き、必死で炎を吐くビーストにニヤリと歯を見せて笑う。
「へッ。ビビったぜ。でもどうやらお前らの攻撃は俺には効かないみたいだな!!」
 ビシっと指を指し、ビースト達を挑発する。そうしていると、炎を吐く事が出来なくなったジャガー達がうろたえたように体を震わす。
「遂に万策尽きたな! 大人しくぶっ飛ばされちまえよ~!!」
 妙な高揚感に浸され、俺は全力で跳躍すると数体のジャガーを立て続けに殴り、蹴飛ばし、残らず消し飛ばした。

「よし! これで……もう何匹倒したかわからねぇ!! とにかくこれで大分数減ったはずだ!」
 綺麗に着地し、すぐさま周囲を見回す。自分の現在位置から見えるビーストは残り五体。
 このままの調子で倒してしまおうって、俺は全力で駆けだし、すれ違い様にその場にいたジャガーを一体、二体と殴り倒していく。
「よし、これで終わりだ~~!!」
 そして最後の一体に、俺は全力で跳躍し、その勢いを乗せた拳を叩きつけた。
 最後の一体も、俺の拳から放たれた漆黒の光に包まれ、跡形もなく消し飛ばした。

「ふぅ~。何とか終わったな」
 最後の相手が塵と消え切ったのを確認し、俺は一息ついた。
 同時に、全身を覆っていた黒い光も収まる。
 どうやら、俺が思った通り、一定量消費すると光は消えるらしい。もっとうまく制御できるようになれば、出し入れも自由自在なのかもしれないが、その扱い方はおいおい使いながら覚えていく事にしよう。
 俺は一応生き残りがいないかと油断なく周囲を警戒していたが、どうやらマッドネスジャガ―はすべて、倒されたようだ。能力が切れる前に倒しきれて本当によかったと胸をなでおろす。

「いぇ~~い、お疲れソーマ」
 と、俺が一先ず安堵していると、ミリがやってきてハイタッチを求めてくる。
 俺もそれに応じ、ぎこちなくも彼女と手をパチンと合わせた。
「これでたぶん、村を襲ったビーストたちは全部やっつけたよ」
「ああ。何とかなって良かったよ。アイツら、急に炎とか吐いて焦ったけど」
「ソーマ、あいつらが吐く炎とか全然効いてなかったじゃん。全部一発で倒しちゃったし、ほんと凄いよ」
「いやいや、あれは偶然上手く行っただけだよ。俺なんてまだまだだ」

 そう言って、俺は居住まいを正し、まだ慣れないがミリの目を何とか見て尋ねる。
「それでミリ。ちょっと聞きたいんだけど、ここはミリみたいな獣人達の村なのか?」
「うん。ソーマはビースト達に集中してたけど、みんなとすれ違ってる筈だよ」
「あ、そうなのか。あのバカデカい奴らの事ばっかり見てたから、全然気付かなかったよ」
 たはは、と笑い、周囲を見る。すると、後ろの方から誰かが走ってくる足音が聞こえた。

「おぉ~~い。ミリ~~~」
 振り返ると、数名の獣人達が走ってくる。彼らは犬耳だったり、猫耳だったり、恐らく狼耳だったり、多種多様様々だ。彼らも手足が獣で、一様に肉球が柔らかそうだ。ただし、大概はおっさんとかおばさん、最前列には白く長い髭を伸ばした老人のような獣人もいる。
「あ、じっちゃん。みんな~」
 その獣人達に、ミリは手を振る。彼らはそのまま俺達が待つ村の中心までやってきて、立ち止まる。

「無事じゃったか。ジャガーが暴れてるって聞いて、飛び出していっちまったから、慌てたぞい」
「うん。ここにいるソーマに助けてもらって、あっという間にジャガーを倒せたよ」
 そう言って、やけに誇らしげに俺を手で示すミリ。すると、獣人達の視線が一斉にこちらを向く。
「こちらの方は?」
「ソーマだよ」
「ああ、それはさっき聞いたんじゃが……」
 天真爛漫に同じ事を言い続けるミリに、じっちゃんと呼ばれた老獣人はやや困ったように俺を見てくる。
「あ、ああ。俺は眞殿蒼馬。通りがかりの旅人みたいなもんだ。なんか空を見てたら黒い煙が見えたから、慌ててきたら化け物に襲われてたからさ。助太刀に入ったんだ。俺の能力があいつらに効いたから案外早く片付いたんだよ」
「おお、そうでしたか。ありがとうございます」
「いや、気にしなくていいよ。アレを見つけて放置はできなかったってだけだから。それはともかく、アンタはこの村の村長さん?」
「ええ、そうですとも。わしは長老のガルクですじゃ。旅の方、本当にありがとうございました。あれだけいた魔獣どもがあっという間に片付けて下さるとは貴方は神の使いに違いありますまい。これも天の思し召し。我ら獣人の神に感謝せねば」

 そう言って、長老たちは手を合わせてお祈りを始めた。
 なんだ、この異様な雰囲気。
「そんな事よりじっちゃん! 何で、急にジャガー達が溢れてきたの?」
 そう、祈りをささげる長老達に手足をぶんぶん震わせて尋ねるミリ。その仕草が子供のようでなんか微笑ましい。
「そうじゃった~~! 奴ら、急に山の上から溢れて来おったんじゃ!!」
 ミリの言葉に気付いて、老獣人がぱっと顔を上げて大声で叫ぶ。急に叫ぶものだから、俺はビクっと驚き身構えてしまう。

 どうでもいいが、今つば飛んだぞ、じっちゃんよ~。
「山から? 山にマッドネスビーストなんて生息してない筈だよ~。せいぜいただのジャガーとかだよ」
「そうじゃ、だからわしらも慌ててしまったんじゃ。危うく村中全滅するところじゃったわ」
「そうだよ。あんなの、あたし見た事無かったモノ。じっちゃんが教えてくれたから知ってただけで」
「そうじゃ。だからこれから原因を調べねばならんのだが~、何分さっきの襲撃でけが人が大勢出てしもうて、そちらに人は割けんのじゃ」

 腕を組み、呻くように呟く長老。本当に困っていそうだ。
 それを見て、俺の中のお人よしが疼いた。通りがかって化け物退治したけど、どうやら今回はそれで終わりってわけじゃなさそうだ。
 そういえば、神にここに送られる時、徳を積めとか言われたなと今更思い出す。だったら、ここは手助けしておいて損はないだろう。徳を積むために人助け、とか考えるのは、徳を積む事になるのかは分からないが。

 そうとなれば善は急げだ。
「なぁ、それ。俺が行こうか」
 ためらいなく申し出ると、長老は慌てて顔を上げる。
「な! そんな事、旅の方には頼めませんのじゃ。村の者で対応せねば」
「いや、良いって。俺、実は武者修行中でさ。通りがかったのも何かの縁だし、化け物どもの巣窟なら修行にはもってこいだろ?」
 そう言って、何とか長老を言いくるめようとする。長老はそれでも躊躇っているようだったが、そこで不意にミリが勢いよく手を上げる。

「はいはい! ソーマが行くなら、村代表でアタシも行くよ」
「なッ!!?」
 その言葉に、長老はあからさまに狼狽し、手を上げるミリにがばっと詰め寄る。
「それはいかん!」
「なんで?」
「お前はまだ未熟だからじゃ! まだ子供のお前にそんな危険は冒させられん!」
「え~! あたしだって、もう十五で成人だし、立派な大人だよ~。それに獣人拳法の免許皆伝もらったし~。お師匠にだって勝ってるし、けがしてるみんなよりあたしが行く方がよっぽど安全だと思うな~」
「ダメなものはダメじゃ! お前にもしもの事があったら、わしは……」

 必死で止めようとする長老と、頑として譲らないミリの言い合い。さっきよりもはるかに切実そうだな。まぁ、こんな女の子を化け物がいるかもしれない場所なんかに送りたくない気持ちは分からなくもない。
「ともかくダメなんじゃ。お前を危険に晒すわけにはいか~~ん」
「も~う、じっちゃんの意地悪! いいもん、止められたって勝手に行くから」
「なッ! ったく、お前は~頑固なんじゃから!! こればっかりは譲らんぞ!」
 と、典型的なわがまま孫娘と祖父みたいなやり取りは拗れだした。このままだと話進まなそうだな。
「あ~、そのさ。俺はミリが着いてきてもかまわないぜ」
 見かねて俺は助け舟を出す。さっさと出かけたくもあったし、このまま押し問答してる間にまたあいつらが山から下りてきたら困るから。
「俺、この辺の地理には疎くてさ。山道を知ってる人がいてくれた方が都合がいいと思うんだ。それに勝手について来られると危険な可能性も高い。なら、最初から一緒にいた方が何かあっても対処しやすいしな」

「で、ですが……」
 俺の申し出に、長老は困ったように言い淀む。まぁ、こうは言っても流石に孫の事を心配する気持ちの方が勝るという事なのだろう。
「大丈夫だ。アイツらには俺の能力が有効みたいだし、ミリを危険な目には遭わせないって約束するよ。どの道、ミリ以外には誰も動けないみたいだしさ。ダメかな?」
 その背中を押す為に、俺は更に告げる。まぁ、さっきの能力で出てきた化け物を片端から倒せば危険はない筈。彼女に危険が迫らないよう、細心の注意を払っていれば何とかなるんじゃなかろうか。
「……」
 しかし、そう告げても、長老は困ったに押し黙る。ミリはその姿を固唾を飲んで、見つめていた。
「わかりました。旅の方とミリに頼むとしましょう」
 最後に、言いにくそうにしながらもなんとか長老は了承の言葉を口にした。
「ああ。任せてくれ」
 その言葉に、俺は大きく頷いた。
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