この世を恨んで焼身自殺した俺が転生、ダークフォースで八つ当たり無双!

最果ての気球

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トラブル解決の為、俺は過去のトラウマを掘り起こす

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 煙を目指して、走りだした俺は自分の体が思いのほか動く事に驚いた。
 体は軽やかに動く。最近では病気の症状もあり、思うように体が動かず体力的には絶望的な状態だったのだが、体が若返った事で失った体力は完全に取り戻せたようだ。むしろ、動きがよくなったまであるかもしれない。
 足を出せば自然と腕が振れて、腕が振れると次の足が前に出る。軽やかなストライドで飛ぶように進んでいく感覚は心地よく、調子に乗って俺はどんどんとペースを上げて煙の登っている元を目指す。

 気分は箱根のランナーか、オリンピックのマラソンランナーか。
 そんなわけで、異世界に来て以来の高揚感の中、俺はただひたすら前へ前へと駆けていった。そうして、暫く走ると、木々が不意に途切れて、不思議な広場のような場所に出くわした。
 そこは、世界遺産のストーンサークルのようなに縦長の巨大な岩が柱のように円形に囲んだ、自然の劇場のようだった。その柱の中には、巨大な岩と前に平らな石が舞台のように設置され、その舞台の前には座席のように小さな岩がいくつも並んでいる。

 なんだ、ここは。
 俺は足を止め、周囲を見回す。そして、息を荒げた俺の視線は吸い寄せられるようにある一点で固まった。
 広場の中央、最も大きな岩の前の舞台の上で、一人の少女が舞っていた。
 それは、踊り子のような装束を纏った世にも美しい少女だった。
 まず目を引くのは、細工師が入念に束ねたかのような、しなやかな銀色の長髪だ。
 その長く艶やかな銀髪は、光を纏って、空を駆け巡るかのような印象があった。

 それから、よくできた彫刻のように美しい鼻筋と長い睫毛を称えた淡い青の瞳に瑞々しく潤んだ唇と白く輝くはりの良い肌。同じくしなやかに伸びる女鹿のような細長い手足と、バランスの取れた大きすぎず小さすぎない胸元と、そこから尻のラインまで緩やかな曲線を描く見事なプロポーション。
 どれをとっても最上級の美少女。頭にしたベールとティアラ、それに身に纏う踊り子装束らしき、これまたうっすら輝く衣装も相俟って、この世のモノとは思えない美しさだと、俺には感じられた。

 彼女は岩の前で、一人舞っていた。その舞は優雅で、とても見応えのある舞だった。
 動きは優美さを持ちつつ、決めるところではピタリと止まって微動だにせず、かつ動作一つ一つによどみが一切なく、緩急のある動作。それらは厳しい訓練の賜物か、見る者の心をひきつけてやまない。
 その手の事に疎い俺ですら、彼女の舞いに自然と引き込まれてしまう程の美しい舞。彼女が手足を動かす度に、身に纏う装束の袖や裾、長い腰布などが意思を持ったかのようにひらひらと舞っていく。

 ……綺麗だ。
 そんな感想が自然と浮かぶほどの舞。俺はいつしか息を吸う事さえ忘れて彼女の舞に見入ってしまう。
 どこか憂いのようなものを帯びた瞳が見つめるのは、いずこか。長く伸びた袖がひらりと舞う度、長い腰布が翻る度に、俺は感嘆の吐息を漏れる。
 勇壮な舞。でもどこか悲しげで儚げな、美しくも切なさを讃えた舞に俺はいつしか完全に心を奪われてしまった。
 やがて、彼女は緩やかに動きを止める。どうやら舞はこれで終わりのようだ。彼女はゆっくりと顔を上げる。肩を微かに震わせながら荒くなった呼吸を整えて、彼女は眩し気に天を仰ぐ。
 それから、彼女は不意に何かに気付いたように反応し、視線を動かす。そうして、広場の端で彼女を眺めていた俺と目が合った。

 ………
 ……
 …
 一瞬、時が止まる。
 が、すぐに少女は驚いたように目を見開き、即座に踵を返してその場を走り去ってしまう。
「あ! 待った!!! ちょっと……」
 それを慌てて呼び止めようとした俺の静止も聞かず、彼女は森の中へとあっという間に消えていってしまった。
 後に残った俺は空しく伸びた手を下ろし、ため息をつく。

「ああ、いかん。無言で見とれてないでさっさと声かければよかった。せっかく人に会えたのに」
 失敗への後悔を口にしつつ、俺は頭を掻いた。
 そりゃ、突然誰かがやってきたら誰だって驚くよな。たぶん、俺がここに来るまで彼女は一人だったに違いない。
 そんな中でいきなり人がいたなんてなったら、逃げだしたくもなるか。
 どうせなら、彼女にここの世界について教えてもらいたかったが、今更追いかけても更に逃げられるだけな気がした。逃げられてしまったものは仕方ないのだ。

 俺は気を取り直すと、再び上空を確認する。
 すると、黒煙は未だ立ち上り、勢いが途切れる事はなかった。
「まぁ、あそこに行けば何かわかる気がするし、さっさと行くか」
 気を取り直し、俺は再び黒煙の出所を確認すべく走り出す。
 少し立ち止まって休んだからか、疲れは無くなっていた。その勢いのまま、黒煙の上がる先へと急ぎ走る。
 そうして、ようやく森を完全に抜け出した辺りで、木の柵に囲まれた人工的な建物群が見え始めた。
 それはいわゆる木造のログハウス風の家屋であり、最初にやってきた時の印象通り、アルプスっぽい雰囲気を醸している。
 どうやら人が住む小村のようだ。今のところ、まだ遠めに人は見つけられていないが、恐らく誰かいる筈だ。
 燃えているのは、どうやら村の建物の一つのようだ。

「よし、急ぐか!」
 俺は更にペースを上げ、柵を越えて、村の敷地へと入った。
 途端、目の前には巨大な獣が何者かと戦っている姿が見えた。
 その獣は、見上げる程の巨体を持つ四足歩行の猛禽だ。ライオンや虎のようなネコ科の肉食動物のように、鋭い牙と爪を持ち、背中に鬣が天を衝くように逆立っている。筋肉質な肉体は危険な気配をこれでもかっていうくらいに漂わせ、近づくのも憚られる雰囲気だ。 
「えいや~~~~!!」
 その獣と、誰かが果敢に戦っている。肩ぐらいまでの髪を風に棚引かせ、獣の爪牙を交わしながら、獣の体に打撃を与えている人型。恐らくこの村の住人だろう。
 だが、その攻撃を獣は全く意にも介さず、攻撃の手はまるで緩まない。
 このままいくと、あの人は獣にやられてしまうだろう。こうして目撃した以上、手助けせねば。

「おし、さっきの能力、試してみるか」
 そう思い、俺は過去に虐められていた事を思い出す。
 クラスメイトの不良が、宿題をやってこなかっただかで、教師に手酷く叱られ不機嫌になっていた。
 授業後の休み時間、俺が一人本を読んでいた時、トイレに行こうと席を立つと、その不良の前を通りがかった。
「おい!」
 急に声をかけられ、そちらを見ると、突然拳が飛んできて、俺は避けられずに顔面を殴られた末に壁に激突した。
「ムカつくんだよ、てめぇの面! 俺の前を通るんじゃねぇ、カスが!!」
 殴られた頬を抑え、俺が体を起こすと襟首をつかまれた。それから何発も殴られた。
「死ね、カスが!!」
 結局、その理不尽な出来事はクラスメイトが教師を呼んできて止まったが、ただし、それは俺を心配したわけじゃなく、クラスで騒ぎが起こるのを嫌っただけだった。
「あいつも悪いがお前も気をつけろ。息をしてるだけで腹を立てる人間だっているんだから」
 そうして、何故かその一件、俺は何も悪くないのに教師に怒られた。
「……ッざけんなよ、クソが!」
 瞬間、俺の頭に急速に血が昇っていった。その血は、沸騰したようにぐつぐつと煮え滾り、全身の体温を急速に上がっていく。

「てめぇがムカつくかどうかなんぞ知るか!! 自分で課題やってこなくて怒られた八つ当たりを人にしてんじゃねぇ!! ついでにクソ教師! てめぇもガキが勝手に起こした問題の原因を俺に押し付けてんじゃねぇ!! てめぇがカスだ! どいつもこいつも死ね、クソがぁぁ!!!」
 そうして、怒りが大爆発。瞬間、叫びと共に俺の全身から突然、例の黒い光が天を衝くが如く激しく立ち上る。
 それに気付き、俺の口元がにやりと持ち上がる。
 よし! 実験成功!
 心の中で喝采を上げ、俺は腰を落とすと一気に獣目掛けて飛び出した。そして、一足飛びに獣の懐へと飛び込む。
「え?」
「おらぁ、喰らえ!!」
 そうして、光を纏ったままの拳を獣目掛けて叩きつけた。
 突如現れた俺に気付き、獣は俺の攻撃をかわそうとする。だが、もう遅い。一直線に伸ばした拳は、獣の体に触れた瞬間、その先端から激しい光の奔流を放って獣の全身を包む。

――GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO

 光を浴びた獣はけたたましい叫びをあげ、光の消滅と共に塵になって消えうせた。
 よっしゃ。どうやらこの攻撃はこの化け物相手にも通用するようだな。
 小さくガッツポーズをする俺。この力があれば、化け物に襲われようが何とかなりそうだと証明された。
「ふぅえぇぇぇぇ~~。すっごーーい」
 と、不意に甲高い声が響いた。振り向くと、そこには例によってとんでもない美少女がいた。
 肩口まで伸びたセミロングの髪に、ジュニアアイドルのように整った美少女だ。
 体型は華奢で小柄だが、しなやかに伸びる四肢、一応出るところは出てる女性的な体の、とても小柄な少女だ。
 ただし、その頭にはデッカイ猫みたいな耳がついていて、手足も人間と同じような肌の先に猫みたいな猫の手と猫足がついている。仮装?と一瞬思ったりもしたが、どうやらそれは装飾じゃなくて体から直接生えているようだ。
 つまり、この子は……

「……獣人?」
「うん。アタシはミリ。獣人だよ」
 天真爛漫という言葉が服を着て声を発したような元気な声で、猫耳獣人少女は言った。
「君、凄いね。一発でマッドネスビーストを倒しちゃうなんて。しかも死体も残ってない。とんでもない強さだよ」
「マッドネスビースト? ああ、さっきのデッカイ獣か。まぁ、ちょっとばかし腕に自信があってな。なんか襲われてたから助けに入らないとって思って手を出したんだよ」
 頬を掻きつつ、言いよどむ。思い出したが、仕事以外で異性と話した記憶なんてない。こんな美少女(ただし猫耳)にいきなり出くわすとは思わなかったので、うまく話せないし目もちゃんとは合わせられない。

「そうなんだ。ありがとね。アタシもいきなり襲われてどうしようかと思ってたんだ。君、名前は?」
「名前? あ、ああ。俺は眞殿蒼馬だ。宜しく、……ミリだったっけ?」
「うん。マドノソーマ? 変わった名前だね」
「ああ。眞殿は苗字で、名前は蒼馬の方だよ。蒼馬でもソーマでも、好きに呼んでくれたらいい」
 首を傾げる獣人少女のミリに、俺は慌ててまくしたてる。

「苗字? う~ん、よくわかんないや。とりあえず、ソーマで良いんだね。分かったよ」
 元気に答えるミリ。子供のように無邪気で、リアクションも一一大きく微笑ましい。
 ってか、何だろう。やたらと可愛いんだが?
「それでミリ。何があったんだ? 急に黒い煙が見えたから、慌てて来てみたんだけど」
「うん。あたしにもよくわかんないんだけど、昼の準備を皆でしてたら急にマッドネスビーストの大群が襲ってきたんだよ」

 首を傾げるミリ。それに俺は慌てて聞き返す。
「いきなりあの化け物が襲ってきた? ってか、今、大群って言わなかった?」
「うん。そうだよ」
 あっけらかんとミリが答えると、木造の家屋の脇から、何体かの化け物、マッドネスビーストが姿を現した。
「げッ! やっぱりまだいたのか」
「あちゃ~。とりあえず、あいつらやっつけちゃわないとね」
「だな! 俺に任せろ!」
 そう言って、俺達は二人連れ立って現れたマッドネスビーストへと駆けだした。
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