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ケース2:神崎 葵
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神崎葵は突然のメールに我が目を疑った。
『名嘉千鶴をハブる。全員参加』
美緒からの一括送信メール。本来なら理由を問い質すべきなのだろうが、葵はこれを好機と捉えた。
(千鶴さえいなければ、私が美緒の一番になれる……)
葵のよこしまな心が芽吹いた瞬間だった……。
葵が美緒を初めて見たのは中等部の入学式。新入生代表挨拶を述べる壇上だった。
「……」
同じ中学生とは思えない静謐な眼差しに滔々と語る涼やかな声。彼女は「ザ・青藍女子」を体現していた。
内部生からは既に「ヲトタチバナ」、「橘女史」などの愛称で憧れの対象となっており、教員からも一目置かれていた。
一方、神崎葵は幼馴染みの倉科佑香と共に中学受験を経て入学した外部生だった。
良家の息女も多く通う青藍女子に於いても、スクール・カーストと呼ばれる階級社会が存在しており、周囲からの羨望のバロメーターによっては、外部生でも上位グループに所属することができた。
神崎葵は二年にしてバレーボール部のエースアタッカーで、外部出身ながらスクール・カーストの上位に所属していた。
橘美緒は言わずもがなスクール・カーストのトップに君臨し、女王様の理不尽な命令にも誰一人として異議を唱える者はなかった。
こうしてかつて美緒の親友という立ち位置で上位グループに所属していた名嘉千鶴は、美緒からの絶縁状によりその地位を奪われた……。
葵が美緒と言葉を交わすようになったのは、二年のクラス替えで同じクラスになったのが切っ掛けだった。
ヲトタチバナを知らない者はいない学園の中で、葵は当初自分が美緒と関わりを持つとは微塵にも思っていなかった。自分とは違う世界の人間、そう一方的な見解を盾にして距離を保った。
だが、傍で見る等身大のヲトタチバナは、屈託なくよく笑う年相応の少女だった。ただし、その愛らしい笑顔は千鶴にしか向けられないのだが、それは葵が抱いていた橘女史のイメージとは違うものだった。
葵は気付けば美緒を見つめていた。心が締め付けられるような感覚に戸惑った。そんな心の葛藤を知ってか知らずか、美緒の方から気まぐれに話し掛けてきた。
初めは緊張してぎこちなかった受け答えも、一緒に過ごす時間と共に砕けた会話へと変わっていった。そしていつしか美緒、千鶴、葵、佑香の四人グループでつるむことが多くなった。
一緒に過ごせるようになって、葵はなぜ美緒が千鶴を特別視するのか、却って謎は深まるばかりだった。葵の目には、千鶴は取り立てて取り柄もなく、目立たない平凡な女の子にしか映らなかった。
(つまらない娘……。ヲトタチバナとは月とスッポン、提灯に釣鐘。どう見たって釣り合わない。美緒はこの娘のどこがいいの……?)
心の奥底に沈めていた千鶴に対する嫉妬心が、美緒からのメールで表面化した……。
次の段階で、千鶴の席を移動させたのは葵の意思だった。葵の狙いは、一目瞭然の行為に出ることによって、千鶴の絶望に止めを刺すことだった。
しかし、その事が却って二人の絆を取り戻す切っ掛けとなってしまい、これにより再びスクール・カーストに変動が起きた。千鶴と共に宮野真生も上位に引き上げられ、この大躍進は学園に激震をもたらした。
一方、もう少しで美緒の一番近くにいられる権利を奪えると期待していただけに、自身の行動が裏目に出てしまい葵の闇は狂気に歪み始めた……。
(千鶴……。どこまで私の邪魔をするの……?)
『名嘉千鶴をハブる。全員参加』
美緒からの一括送信メール。本来なら理由を問い質すべきなのだろうが、葵はこれを好機と捉えた。
(千鶴さえいなければ、私が美緒の一番になれる……)
葵のよこしまな心が芽吹いた瞬間だった……。
葵が美緒を初めて見たのは中等部の入学式。新入生代表挨拶を述べる壇上だった。
「……」
同じ中学生とは思えない静謐な眼差しに滔々と語る涼やかな声。彼女は「ザ・青藍女子」を体現していた。
内部生からは既に「ヲトタチバナ」、「橘女史」などの愛称で憧れの対象となっており、教員からも一目置かれていた。
一方、神崎葵は幼馴染みの倉科佑香と共に中学受験を経て入学した外部生だった。
良家の息女も多く通う青藍女子に於いても、スクール・カーストと呼ばれる階級社会が存在しており、周囲からの羨望のバロメーターによっては、外部生でも上位グループに所属することができた。
神崎葵は二年にしてバレーボール部のエースアタッカーで、外部出身ながらスクール・カーストの上位に所属していた。
橘美緒は言わずもがなスクール・カーストのトップに君臨し、女王様の理不尽な命令にも誰一人として異議を唱える者はなかった。
こうしてかつて美緒の親友という立ち位置で上位グループに所属していた名嘉千鶴は、美緒からの絶縁状によりその地位を奪われた……。
葵が美緒と言葉を交わすようになったのは、二年のクラス替えで同じクラスになったのが切っ掛けだった。
ヲトタチバナを知らない者はいない学園の中で、葵は当初自分が美緒と関わりを持つとは微塵にも思っていなかった。自分とは違う世界の人間、そう一方的な見解を盾にして距離を保った。
だが、傍で見る等身大のヲトタチバナは、屈託なくよく笑う年相応の少女だった。ただし、その愛らしい笑顔は千鶴にしか向けられないのだが、それは葵が抱いていた橘女史のイメージとは違うものだった。
葵は気付けば美緒を見つめていた。心が締め付けられるような感覚に戸惑った。そんな心の葛藤を知ってか知らずか、美緒の方から気まぐれに話し掛けてきた。
初めは緊張してぎこちなかった受け答えも、一緒に過ごす時間と共に砕けた会話へと変わっていった。そしていつしか美緒、千鶴、葵、佑香の四人グループでつるむことが多くなった。
一緒に過ごせるようになって、葵はなぜ美緒が千鶴を特別視するのか、却って謎は深まるばかりだった。葵の目には、千鶴は取り立てて取り柄もなく、目立たない平凡な女の子にしか映らなかった。
(つまらない娘……。ヲトタチバナとは月とスッポン、提灯に釣鐘。どう見たって釣り合わない。美緒はこの娘のどこがいいの……?)
心の奥底に沈めていた千鶴に対する嫉妬心が、美緒からのメールで表面化した……。
次の段階で、千鶴の席を移動させたのは葵の意思だった。葵の狙いは、一目瞭然の行為に出ることによって、千鶴の絶望に止めを刺すことだった。
しかし、その事が却って二人の絆を取り戻す切っ掛けとなってしまい、これにより再びスクール・カーストに変動が起きた。千鶴と共に宮野真生も上位に引き上げられ、この大躍進は学園に激震をもたらした。
一方、もう少しで美緒の一番近くにいられる権利を奪えると期待していただけに、自身の行動が裏目に出てしまい葵の闇は狂気に歪み始めた……。
(千鶴……。どこまで私の邪魔をするの……?)
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