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クロスオーバー
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宮野真生は自身の教育理念に迷いが生じた時、いつもここを訪れていた――。
初心を思い起こさせる場所。助けられなかった友が眠る、橘美緒の墓。
真生は今、修学旅行で勝手な行動を採った生徒の処分について悩んでいた。その中の一人が美緒に似ていたからだ。誰にも心を開かず、一人で闇を抱えている少年――。
(慎重に適切な対応をしなければ、歪んだ大人になってしまうかもしれない……。彼の優れた知性は健やかな精神の基で育って欲しい……)
真生は美緒の墓石の前で思い悩みながら、ふと桜子叔母さんのことを思い出した。
「宮野さん……?」
その時、突然後ろから声を掛けられて、真生は振り返った。
「名嘉さん……? あっ、えっと今は……」
「朝倉です。……この子は娘の美緒。美緒、ご挨拶は?」
「こんにちわ。あさくらみおです」
「こんにちは」
私たちが知る美緒のイメージとは違うけれど、この小さな美緒は溢れんばかりの笑顔の花を咲かせている――。
「宮野さんも美緒ちゃんに会いに来てくれたのね……。ありがとう……」
千鶴は慣れた手つきで供花を換え、線香をあげると手を合わせた。小さな美緒も見様見真似で千鶴に倣う。
(美緒ちゃん……。見ての通り私は幸せよ……。あなたがいない世界でも、ちゃんと自分の人生を生きてるわ……。けど、あなたと生きる人生だって、きっと私は幸せだった……。あなたは認めないだろうけど……)
美緒の自殺は、少なからずそれぞれの人生に影響を与えた――。
神崎葵は再びバレーボールに打ち込み、現在は実業団チームに所属し、代表選手にも選出された。だがそのバレーボールだけに人生を捧げたストイックな姿勢は、彼女にとっての償いだった……。
真生にとっても、だからこそ今、中学校教諭として奮闘している。
(思春期特有の危うさを秘めたこの時期は、世界の中心にいるようで、何だって出来るような根拠のない自信に溢れている……。けれど己の無力さに打ちのめされた時、自身の弱さときちんと向き合い、自分という人間を、例えそれが承認されなくても、あるがままに受け容れる強さを持たなければ、脆く自滅してしまうだろう……)
「――」
敬虔に祈る親子の姿は、斜陽を受け、朱く染まっていた――。
初心を思い起こさせる場所。助けられなかった友が眠る、橘美緒の墓。
真生は今、修学旅行で勝手な行動を採った生徒の処分について悩んでいた。その中の一人が美緒に似ていたからだ。誰にも心を開かず、一人で闇を抱えている少年――。
(慎重に適切な対応をしなければ、歪んだ大人になってしまうかもしれない……。彼の優れた知性は健やかな精神の基で育って欲しい……)
真生は美緒の墓石の前で思い悩みながら、ふと桜子叔母さんのことを思い出した。
「宮野さん……?」
その時、突然後ろから声を掛けられて、真生は振り返った。
「名嘉さん……? あっ、えっと今は……」
「朝倉です。……この子は娘の美緒。美緒、ご挨拶は?」
「こんにちわ。あさくらみおです」
「こんにちは」
私たちが知る美緒のイメージとは違うけれど、この小さな美緒は溢れんばかりの笑顔の花を咲かせている――。
「宮野さんも美緒ちゃんに会いに来てくれたのね……。ありがとう……」
千鶴は慣れた手つきで供花を換え、線香をあげると手を合わせた。小さな美緒も見様見真似で千鶴に倣う。
(美緒ちゃん……。見ての通り私は幸せよ……。あなたがいない世界でも、ちゃんと自分の人生を生きてるわ……。けど、あなたと生きる人生だって、きっと私は幸せだった……。あなたは認めないだろうけど……)
美緒の自殺は、少なからずそれぞれの人生に影響を与えた――。
神崎葵は再びバレーボールに打ち込み、現在は実業団チームに所属し、代表選手にも選出された。だがそのバレーボールだけに人生を捧げたストイックな姿勢は、彼女にとっての償いだった……。
真生にとっても、だからこそ今、中学校教諭として奮闘している。
(思春期特有の危うさを秘めたこの時期は、世界の中心にいるようで、何だって出来るような根拠のない自信に溢れている……。けれど己の無力さに打ちのめされた時、自身の弱さときちんと向き合い、自分という人間を、例えそれが承認されなくても、あるがままに受け容れる強さを持たなければ、脆く自滅してしまうだろう……)
「――」
敬虔に祈る親子の姿は、斜陽を受け、朱く染まっていた――。
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