感情の凍り付いたイケメン氷結王子がなぜかイジメられっ子の私にだけは溺愛を注いでくる件

朱之ユク

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イジメって辛いよね

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「こんばんわ、スカーレット。さっさとご帰宅されたらどうですか?」

 アンジェリカは私に向かって皮肉を言う。
 私はそれに気づかないふりをしてやり過ごそうとしていた。
 この男が来るまでは。

「おい、スカーレット嬢にいったい何をしているんだ? アンジェリカ嬢?」

 男の名前はスカイ王子。この国の第一王子でみんなからは氷結王子と呼ばれている感情を表に出さないことで有名な王子だった。
 そんな人が今怒気を発しながらアンジェリカに詰め寄ろうとしている。
 そんな状況を信じられなかったのだろう。
 アンジェリカは何が起こったのか理解できていない様子だった。

「は、はあ? どうしてスカイ王子がスカーレットの肩を持つわけ?」

 そうだ。
 スカイ王子がいきなり私とアンジェリカの間に割って入ってきた。今は幸い誰もいないからスカーレット嬢がスカイ王子に助けられているなんて状況を誰も見ることは無い。
 よかった。
 こんなイケメンの王子に助けられたら嫉妬で余計イジメられかねない。

「それは僕がスカーレット嬢のことをす……」
「あああああ! ちょっと待った、スカイくん。そこでストップ」
 
 スカイ王子の耳を引っ張り、こそこそ話をする。

「ちょっと何を言おうとしているのよ」
「俺が君のことを好きだと言おうとしただけだ。なにか問題があるのか?」
「あるに決まっているでしょう? いつも好きとか嫌いとかを一切表に出していない貴方みたいな凍り付いた人間が好きって言ったらどれだけ問題が起きるか知らないの?」
「知らないな」

 コミニケーションというものを学んだことは無いのだろうか。
 私は呆れながら、スカイと距離を置く。

「いいですか? 二人きりならまだしも、学校という不特定多数が見ている場所で変なことはしないでください。分かりましたね?」
「はい」

 ようやく理解してくれたようでうれしい。
 このまま行ったらきっとスカイ王子は私のことを風潮して回るだろう。感情を表に出さないからと言って、彼はこの国の王子なのだ。
 絶対に話しかけてきたり、すり寄ってくる人間はいる。
 そう言う人間にスカーレットのことを話されると困る。
 なぜならばスカーレットはイジメられっ子の令嬢というイメージがついていて、そんな令嬢をスカイが好きだと言えば大問題になることは間違いない。
 確実にイジメが酷くなる。
 アンジェリカなんて絶対に嫉妬で暴力を振るってくるようになるだろう。
 そんな結末だけは避けたかった。

「ちょっと、アンタたち何こそこそしているよ。怒るわよ」
「あ、ごめんなさい」

 そう言った後に私はスカイに耳打ちして「先に行ってて」といった。

「失礼、人違いだった。すまないな、アンジェリカ嬢」
「……まあ、そうならいいのよ」
「ではこれで」

 スカイは何事もなかったかのようにその場を離れた。

「さて、さっきの話の続きよ」

 とりあえずはこの嫌がらせを乗り切ろう。
 こういう時は関係ないことを考えていると良いらしい。
 今日はそもそもどうしてスカイが私に溺愛を注ぐようになったのか。その理由を思い返そうじゃないか。
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