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加那太の欲しいもの?
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夏休みのためか、電車内は少し混んでいた。
座席に座るのは無理そうである。
まだ冷房が効いているのがありがたい。
「加那、喉乾かないか?冷たいお茶あるぞ」
「飲みたい」
千尋はショルダーバッグから持ってきた水筒を取り出した。
朝から麦茶をやかんで煮出しておいたのだ。
「はい、加那」
コップに麦茶を注いで渡すと加那太は喜んで飲み始めた。
「美味しい、冷たいねえ」
「よかった。ショッピングモールはここから10個先の駅だぞ。
加那は数を数えられるか?」
「うーん…」
どうやらあまり自信がないようだ。
そんな様子も可愛らしい。
「じゃあ今日は10まで覚えられるように練習しような」
「はーい」
二人は電車が駅に到着する度に数を数えていった。
「次の駅で降りるからな」
「はーい!」
「「じゅーう」」
二人で数を数えて笑い合う。
電車から降りて、通路を抜ける。
ショッピングモールは駅から繋がっているのだ。
加那太と手を繋ぎながら、千尋は店内を歩いた。
「お店いっぱいあるね」
「まずお前の下着を買うか」
加那太からのメッセージを思い出す。
すぐに元に戻ると。だが、具体的な日数は分からない。
千尋としては念の為、二枚ずつくらいは用意しておきたかった。
「あー、キャンディあるー」
加那太がルーレットで出た数だけキャンディを貰えるゲームに気を惹かれている。
「加那、キャンディは後な。
えーと、衣料はと」
千尋は加那太をひょい、と抱き上げた。
まだ体重が軽いので出来る事である。
店内の案内図を見る。
「二階か」
「もう下りるー!」
加那太がジタバタし始めたので仕方なく下ろす。
「加那、ちゃんとついてこいよ。迷子になったら困るんだからな」
「はーい」
加那太がぎゅっと、千尋の手を強く握り締めてきた。迷子になるのが怖くなったのだろう。
「お、ここか」
衣料品売り場はすぐ分かった。
千尋は昨日、加那太の身長を測っておいた。
子供服の大体は身長が目安である。
「加那の身長は85センチ位。
ってことはこれか」
千尋がようやく加那太のサイズの下着を手に取る。気が付くと加那太が床に座り込んでいる。
千尋はそっと彼を抱き上げた。
「加那、疲れたか?」
「んーん、へーき」
加那太はウトウトしているようだ。
どうやら疲れて眠たくなってしまったようだ。
「加那、おぶってやる。おいで」
加那太が背中におぶさった。
千尋はそのまま会計を済ませて、近くのベンチに座った。
加那太はよく眠っている。
「俺もお茶飲もうかな」
しばらくして加那太が目を開ける。
「お兄ちゃん、ごめんね。寝ちゃった」
「ご飯食べられそうか?」
「うん!お腹空いた!」
(加那らしいな)
加那太が食いしん坊なのは幼い時から変わらないらしい。
二人は階下にあるファミリーレストランに入った。加那太はメニューを悩みながら選んだ。
そんなところも可愛らしい。
千尋の頬は緩みっぱなしだ。
「加那、この後キャンディ行くか?」
「うん!」
加那太が目をキラキラさせている。
(そういや加那が欲しいゲームがあるとか言ってたな。一応チェックしてみるか)
加那太が頼んだのはエビドリアだった。
お子様ランチと散々迷ってこちらにしたのだ。
加那太は他の子供と比べて、沢山食べる。足りないよりはいいだろう。
「熱いから気を付けろよ」
千尋は天ざるを頼んだ。
今は特に冷たいそばが美味い季節だ。
「これ、美味しい!」
エビドリアをもぐもぐしながら加那太が笑う。
「よかったな」
千尋も色々な種類の天ぷらを楽しんだ。
そばも美味い。
「ねえ、お兄ちゃん。キャンディのゲームやったら帰るの?」
「あー、えーと、その後ゲームソフト見に行ってもいいか?」
「わー、僕ゲーム大好きだよ!」
「そうか」
流石にそれを知ってるとは言えない。
加那太は三歳以降の記憶を全て失ってしまっている。
下手にそれを変えてはいけない。
千尋はそう思っていた。
「お兄ちゃんはお嫁さんにゲームを買うつもりなの?」
加那太は鋭い。まだ三歳だが侮れない。
「あぁ。欲しいゲームがあるんだってさ」
「わあ、きっと難しいんだろうね」
加那太がニコニコしながら言う。
(加那太が欲しがるゲームは大体難易度高めだもんな)
食事を終えた二人はゲームソフトの売り場に来ている。キャンディは最大数の8本を入手していた。
「わー、いっぱいゲームあるー」
「どれだったかなぁ」
加那太が欲しがっているゲームのタイトルが分からない。
「加那、お前だったらどれ選ぶ?」
「えー、これ」
加那太が手に取ったのは大自然の中を探索できるサバイバルゲームだった。
三歳のチョイスではない。
加那太はやっぱり加那太なのだ。
「じゃあこれ買ってみるか」
「お嫁さん喜ぶかな?」
「分かんないけど大丈夫だろ」
二人はショッピングモールを後にしたのだった。
座席に座るのは無理そうである。
まだ冷房が効いているのがありがたい。
「加那、喉乾かないか?冷たいお茶あるぞ」
「飲みたい」
千尋はショルダーバッグから持ってきた水筒を取り出した。
朝から麦茶をやかんで煮出しておいたのだ。
「はい、加那」
コップに麦茶を注いで渡すと加那太は喜んで飲み始めた。
「美味しい、冷たいねえ」
「よかった。ショッピングモールはここから10個先の駅だぞ。
加那は数を数えられるか?」
「うーん…」
どうやらあまり自信がないようだ。
そんな様子も可愛らしい。
「じゃあ今日は10まで覚えられるように練習しような」
「はーい」
二人は電車が駅に到着する度に数を数えていった。
「次の駅で降りるからな」
「はーい!」
「「じゅーう」」
二人で数を数えて笑い合う。
電車から降りて、通路を抜ける。
ショッピングモールは駅から繋がっているのだ。
加那太と手を繋ぎながら、千尋は店内を歩いた。
「お店いっぱいあるね」
「まずお前の下着を買うか」
加那太からのメッセージを思い出す。
すぐに元に戻ると。だが、具体的な日数は分からない。
千尋としては念の為、二枚ずつくらいは用意しておきたかった。
「あー、キャンディあるー」
加那太がルーレットで出た数だけキャンディを貰えるゲームに気を惹かれている。
「加那、キャンディは後な。
えーと、衣料はと」
千尋は加那太をひょい、と抱き上げた。
まだ体重が軽いので出来る事である。
店内の案内図を見る。
「二階か」
「もう下りるー!」
加那太がジタバタし始めたので仕方なく下ろす。
「加那、ちゃんとついてこいよ。迷子になったら困るんだからな」
「はーい」
加那太がぎゅっと、千尋の手を強く握り締めてきた。迷子になるのが怖くなったのだろう。
「お、ここか」
衣料品売り場はすぐ分かった。
千尋は昨日、加那太の身長を測っておいた。
子供服の大体は身長が目安である。
「加那の身長は85センチ位。
ってことはこれか」
千尋がようやく加那太のサイズの下着を手に取る。気が付くと加那太が床に座り込んでいる。
千尋はそっと彼を抱き上げた。
「加那、疲れたか?」
「んーん、へーき」
加那太はウトウトしているようだ。
どうやら疲れて眠たくなってしまったようだ。
「加那、おぶってやる。おいで」
加那太が背中におぶさった。
千尋はそのまま会計を済ませて、近くのベンチに座った。
加那太はよく眠っている。
「俺もお茶飲もうかな」
しばらくして加那太が目を開ける。
「お兄ちゃん、ごめんね。寝ちゃった」
「ご飯食べられそうか?」
「うん!お腹空いた!」
(加那らしいな)
加那太が食いしん坊なのは幼い時から変わらないらしい。
二人は階下にあるファミリーレストランに入った。加那太はメニューを悩みながら選んだ。
そんなところも可愛らしい。
千尋の頬は緩みっぱなしだ。
「加那、この後キャンディ行くか?」
「うん!」
加那太が目をキラキラさせている。
(そういや加那が欲しいゲームがあるとか言ってたな。一応チェックしてみるか)
加那太が頼んだのはエビドリアだった。
お子様ランチと散々迷ってこちらにしたのだ。
加那太は他の子供と比べて、沢山食べる。足りないよりはいいだろう。
「熱いから気を付けろよ」
千尋は天ざるを頼んだ。
今は特に冷たいそばが美味い季節だ。
「これ、美味しい!」
エビドリアをもぐもぐしながら加那太が笑う。
「よかったな」
千尋も色々な種類の天ぷらを楽しんだ。
そばも美味い。
「ねえ、お兄ちゃん。キャンディのゲームやったら帰るの?」
「あー、えーと、その後ゲームソフト見に行ってもいいか?」
「わー、僕ゲーム大好きだよ!」
「そうか」
流石にそれを知ってるとは言えない。
加那太は三歳以降の記憶を全て失ってしまっている。
下手にそれを変えてはいけない。
千尋はそう思っていた。
「お兄ちゃんはお嫁さんにゲームを買うつもりなの?」
加那太は鋭い。まだ三歳だが侮れない。
「あぁ。欲しいゲームがあるんだってさ」
「わあ、きっと難しいんだろうね」
加那太がニコニコしながら言う。
(加那太が欲しがるゲームは大体難易度高めだもんな)
食事を終えた二人はゲームソフトの売り場に来ている。キャンディは最大数の8本を入手していた。
「わー、いっぱいゲームあるー」
「どれだったかなぁ」
加那太が欲しがっているゲームのタイトルが分からない。
「加那、お前だったらどれ選ぶ?」
「えー、これ」
加那太が手に取ったのは大自然の中を探索できるサバイバルゲームだった。
三歳のチョイスではない。
加那太はやっぱり加那太なのだ。
「じゃあこれ買ってみるか」
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二人はショッピングモールを後にしたのだった。
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