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四章

三話・拉致

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「えー!!サーラが攫われた?」

「サーラの魔力の痕跡がここで途絶えてる。間違いないよ」

ルビィの言葉にシンは目を白黒させるだけだ。
ナナセがその場で目を閉じる。

「微かだけど攫った奴の匂いが残ってる」

「ソイツ、魔力ガナイのか?」

ハンマーの言葉にナナセは頷いた。シンがどうゆうことかとナナセを見つめる。

「普通、僕たちみたいな神々や精霊には魔力が宿っている。あと一部の人間、そう、サーラ姫みたいな特別な人。僕たちは痕跡を探す時、大抵魔力を探る。ただ今回は魔力のないやつが相手だったから匂いを探ったってこと」

「じゃあ相手は…」

シンの言葉にナナセは頷いた。

「魔力を持たない人間の可能性が高い。そしてタイムトラベルできる科学力を持っている」

「え、じゃあルビィたちが見たあの怖い人?だってさっきは間違えたって」

「まだ推測の域は出ないけど、サーラ姫の魔力がここで途切れてるのが答えだと思う。ただ未来に行ったのか、過去に行ったのか…」

うーん、と皆が頭を捻った。

「まあしらみつぶしに探してもいいんだけどね。僕たち神々は概念だ。時間を逆行したりも先に向かったりも出来る」

「でもそれじゃあ…」

シンの言葉にナナセが大きくため息を吐いた。

「そう、探る範囲が広すぎるんだよ」

「僕、サーラの場所、分かるよ?」

皆がじりっと後ずさった。そこにいたのは他でもないナオである。

「わ、分かるって、ナオくんは普通の人間じゃないか」

「あー、えーと、ナナセ?ナオはニンゲンだけど規格外なんだよ?」

ふふん、とナオが誇らしそうに笑う。ナナセはルビィをそばに引き寄せる。そして小声で言った。

「ルビィ、あの子はどうなってるんだ?普通の子供だろう?」

「んーん。違う。ルビィにもよく分からない」

ルビィは考えることを止めましたという表情でナナセに答えた。ナナセはそれに諦める他ない。

「ぐ…改めて君はナオくん、といったね?」

「うん、サーラを助けに行くんでしょ。僕今、めっちゃ調子いい。サクッと行こ」

ナオからこれでもかと殺気がほとばしっている。サーラを攫われてバーサーカーモードに突入してしまっているようだ。

「ナオ、気配消さないとさすがにバレると思うけど」

「あ、そうだね」

ルビィの指摘にすん、とナオが気配を消す。

「君は本当に優秀なようだね」

「伊達にサーラの弟やってないよ」

テヘペロとナオは舌を出して笑ったのだった。
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