真実のひとつ

はやしかわともえ

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土曜日

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(緊張する!!)

時計をそわそわしながら見つめる。まだ10時まで20分もある。

(もう一回鏡チェックしよ)

あたしは何度確認したかわからないくらい鏡をチェックした。
髪の毛はいつものようにヘアクリップでまとめてある。
一津さんのことだから今日も可愛いんだろう。

(一津さんて肌も白いし、綺麗だよね。化粧品のこと、もっと聞いておかないと)

そんな決意をしていると、インターフォンが鳴る。
お母さんが出てくれたようで、名前を呼ばれる。

あたしは慌ててカバンを掴んで玄関に向かった。

「アカリちゃん!お久しぶりです」

「っ??!」

あたしは驚いた。
今日の一津さんが、特別可愛かったからだ。
今日は水色のギンガムチェックの膝下までのワンピースを着ている。足元は白いタイツに水色の靴。いわゆる甘ロリというやつだろうか。
頭には大きな水色のリボン。
そして水色のポシェットからはクマのぬいぐるみが飛び出している。

「一津さん、可愛い!」

思わず叫んでしまうと一津さんは照れたようにはにかんだ。
うん、それ反則だよね?

(可愛すぎるでしょ、この人)

あたしは今日一日、この人とお出かけするわけで。
なんだか彼氏のような気分になった感じがする。男の人って大変だ。

「アカリちゃんもとっても可愛いです」

にこ、と一津さんが笑ってくれる。あたしの今日の格好はカーキのガウチョに白のトップス、そして白のロングカーディガンだった。
無難にいくのがあたしの最近のモットーだったりする。

「さぁ、アカリちゃん、行きましょうか」

大阪の時と同じように、一津さんは手を差し出してくる。
あたしは今度は躊躇せずその手を握れた。

(それにしてもお買い物ってどこにいくのかな?)

肝心なことを聞き忘れていたことに、あたしは今更気が付いた。

「あの、一津さん?
今日はどこへ?」

あたしの言葉に一津さんは微笑む。

「アカリちゃんがついこの前、お誕生日だったって新に聞いたから」

「あ、そうだけど」

それがどう繋がるのかわからない。一津さんは綺麗にウインクしてみせた。

「今日はアカリちゃんの欲しいものを買いに行きます」

(えぇー?!)

あたしは驚きで声を出すこともできなかった。一津さんは、それを了承と受け取ったらしい。
ぐい、とあたしの手を引っ張って歩きだしてしまう。

(一津さんってやっぱりマイペースー!!)

心の中であたしは叫んでいた。

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