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十九話

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ホリデー最終日。アタシ達は再びルトさんに車で送ってもらって学校にいる。またこれから忙しい学生生活が始まるのかー。でも家にただいるよりはいいかもしれない。いや、絶対にいい。お母様にこれ以上耐えられる気がしないし。

「アイシュさまー!」

この声は、セイラちゃん?
アタシが振り返るとぎゅっと抱き着かれる。相変わらずお胸が豊満過ぎて困る。

「わー、ラセルカもお姉にぎゅってする!」

ラセルカちゃんにも抱き着かれた。何この状況。両手に花束にも程がある。なんだか照れるな。

「セイラ、ラセルカちゃん、一度落ち着きましょう。ね?
そうだ、お部屋に行きましょう、お茶を淹れるから」

「アイシュさまにお茶を淹れて頂けるなんて」

「お姉、紅茶淹れるの上手なの。美味しいお菓子もあるんだよ」

「まぁそうなのですね!」

ラセルカちゃんとセイラちゃんが仲良く話している。この二人、元々コミュニケーション能力が高いもんね。アタシは黙っていた方がいいのかな?こうゆう時、コミュ障は。

「私、アイシュさまにお土産がありますの」

「ラセルカもお姉にお土産あるよ?」

え、だから何この状況?ラセルカちゃんとセイラちゃんの眼光が鋭い。うっかりすると二人の視線からバチバチと音がしそうだ。嬉しいけど、どうしたらいいか分からない。

「お姉!/アイシュさま!」

二人が同時にアタシにお土産を差し出してくる。アタシはどうしたものか迷って、二人からの贈り物を一緒に受け取った。

「あ、ありがとう。二人共」

二人が笑顔になる。

「アイシュさまに受け取って頂けましたわ!」

「お姉、使ってみてね!」

部屋に三人(セイラちゃんの護衛の人は滅多に姿を現さない、怖い)で戻って、アタシは紅茶を淹れた。
ラセルカちゃんのお母様が焼いてくれたクッキーも出す。

「このクッキー、本当に美味しいですわ!」

「ラセルカのお母さんが作ったの。そうだ、セイラも谷に来る?」

「谷…ですか?」

セイラちゃんが首を傾げている。普通そうなるよね。アタシはざっくりと妖精の谷に行くことになった旨をセイラちゃんに説明した。

「まぁ月泉のことでしたら、お祖母様から聞いたことがあります。なんでも、万病薬なんだとか」

そんなにすごい薬草なんだ。しかも結構有名だったりする?

「セイラ、あなたはどうするの?一緒に来てくれる?」

令嬢モードで聞いたら、セイラちゃんが笑う。

「もちろん、ご一緒しますわ!愛しのアイシュさまと旅行…ふふふ」

ちょっと悪寒がした。この子には気を付けよう。

「セイラ、妖精の谷は冷えるから暖かくだって」

「了解いたしました」

セイラちゃんが仲間に加わってくれて嬉しい。一人でも探す人が増えたほうがいいものね。
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